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作者が実際に医者だからこそ書ける、イメージが膨らむ書き方に惹かれました。
あらすじは省略しますが、とにかくマチ先生の独自の哲学の深さと、医者の仕事が単に病の完治だけではないことに起因する苦しみや葛藤が手にとるように感じられます。
私は医療に造詣があるわけではないですが、医者を見る目がいい意味で変わった、とてもおすすめできる作品です。
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妹を亡くし、妹の息子と住む消化器内科医の雄町哲郎。
大病院で難解な手術もこなせる雄町先生が、町の病院で、京都の町中の訪問診療に勤しみながら、看取りも行う。いろんな患者さんのどう生き抜くかを、訪問診療しながら支える。
日々の医療で、
「何が正しいことなのか」を問い続ける。
山崎孝明さん(臨床心理士)の「何が『いい』かはわからない」を思い出した。(「精神分析の歩き方」より)
本当にその通り。その繰り返しだ。
病気を診るというより、人間をみる。
社会的な称賛や評価はなかなか得られないけれど、何が「いい」かはわからないなかで、その人を見ること。
子育てもそんな感じだなと思う。
メンタル落ち込んだ人のケアをする時もそんな感じ。
がんばれとも、諦めるなとも言えない。
「ただ急ぐな」か。それは思いつかなかったなー。
雄町先生の語りは、「心の傷を癒すということ」の著者であり、精神科医の安克昌さんを思い出した。
最後はとてもぐっと来た。
魅力的な和菓子がところどころ出てきて、雄町先生と南先生の今後も気になる。
映像化とか、続編とか、見てみたいなあ。
良い本でした。
スピノザは「責任の生成」の本でたくさん出てきた記憶があるので、スピノザ好きの人は「責任の生成」もおすすめかもしれない。
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京都の美しい風景と、美味しいお菓子を織り込みながら、医療の本質についても考えさせられる素晴らしい内容でした。
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読んで良かったです。
マチ先生を含め全ての登場人物が魅力的に描かれてます。原田医院みたいな病院がうちの近所にあれば心強いのになあw
京都の街並みの風景の描写が丁寧で綺麗ですね。京都に行きたくなりました。
スピノザの診察室というタイトルもいい。最後まで読むと納得します。
患者の辻さんは最後にマチ先生に出会えて診てもらえたのは、大きな救いになったのかなと思います。最後の逝き方を色々と考えたりしますが、こういう先生に出会えて看取られて逝ければ幸せですね。
読後感は非常によく、じんわりと暖かな気持ちになれました。これは続編を期待したい!
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医療は人間中心である。『病気を診るのではない。人間を診るのだ』医学部教育で繰り返し提示されるスローガン。これは当然でありながら、医学の進歩は人間中心とは逆の道を切り開いてきた。数字やグラフ、ウイルスやがん細胞と死にものぐるいで向き合う。そうやって切り開いた結果こそが現代の医学である。
主人公の雄町哲朗は大学病院の腕利き外科医であった。妹の死と一人残された甥っ子を引き取るのをきっかけに医局を離れて街の診療所に身を振った。末期がん患者や自暴自棄気味の患者の言葉に軽妙に言葉を繋いで緊張を解くのが雄町の診察の特徴だ。
雄町の元上司の花垣准教授は雄町を次のように語る。
「医者は心の中に2種類の人格を宿している。それは科学者と哲学者だ。大体の医者はその両方を行ったり来たりしている。科学に振り切った俺はアメリカに行って内視鏡を振り回していた。哲学者に振り切った医者は現場で役に立たない。お祈りするか、ひっそりと小説でも書いてる。雄町は科学としても哲学者としても非凡だ。だから誰もがアイツを必要とする。」
人間の意志は何も変えられない。だけど、人間が出来る事をやれば不条理な世界に明かりを灯す位は出来る。それが人間としての優しさであり、幸せなのだと思う。
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大学病院で数々の難手術を成功させ将来を嘱望されながら、訳あって京都の町中の地域病院で働く内科医が主人公の物語。
医療現場を舞台にした小説は数あれど、スーパードクターが華麗な活躍を見せるのでも、院内政治のあれこれを見せられるのでも、ましてや不審死の謎を解明するミステリでもない。
雄町哲郎という消化器内科専門の医師が、医師という仕事の本質に向き合い、人の幸せとは何かと問い続け、自らの道を進んでいく、強く、静かな足取り。人の幸せとはどこにあるのかを考えて考え続ける哲学者のような佇まいの医師の姿に心が癒される。
ーー「お疲れ様でした」
それが、旅立った者に送る唯一の言葉であるーー
過日大切な存在を喪い、あれで良かったのかと後悔ばかりだった私の心に、この言葉は本当に沁みました。美しい装丁と相まって、お気に入りの作品になりました。
雄町先生、またお会いしたいです。
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医学と哲学、対極にあると思える領域を対比させながら融合させる、流石と感じる一冊。
科学からアプローチする先輩の大学准教授と人間からアプローチする中小病院に勤める主人公が、時に協力しながら、誰も踏み込んでいない未知の領域をそれぞれが切り開いていく姿の描き方も見事です。
余談ですが、京都が舞台のこの作品、街の描写もさる事ながら、甘党としては3大餅にも大いに惹かれました。
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雄町先生はとても良い先生です。
考えにも共感できるし、よく分かります。
でもやっぱり、私は栗原先生に会いたい!
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地位も名誉も金銭も、それが単独で人間を幸福にしてくれるわけじゃない。人間はね、一人で幸福になれる生き物ではないんだよ。
人間葉どうしようもなく儚い生き物でら世界はどこまでも無慈悲で冷酷だ。だからといってら無力感にとらわれてもいけない。世界にはどうにもならないことが山のようにあふれているけれどらそれでもできることはあるんだってね。人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇の中につかの間、小さな明かりがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれるりそんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は幸せと呼ぶんじゃないだろうか。
暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ。
面白かった!やっぱ夏川さんの本とか言葉とか考え方とか、考えさせられるところがあるなー。
辻さんとか、鳥居さんみたいな患者のキャラが良いわ。辻さんの最後と思想、かっこええというか、信念があるな。おおきに、先生。ええ言葉や。
あと、秋鹿とのバーのシーンめっちゃ良かった!こういう野戦病院的と言うかそういうバー欲しいな。これはバーテンダーさんがカッコ良すぎるが。そして京都は広いと言うより深い、とても深いってのはいい得て妙やな。
幸せというか、自分にとっても今後どう生きるか、どこで何をして、何を大事にするのか、ほんま考えなあかんな。
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今回もやはり最高だった。
#始まりの木 の古屋指導教官にしても、
#神様のカルテ の栗原先生にしても、
今回の哲郎先生にしても私好みのユーモアがあって最高。
京都の市中にある地域病院を舞台に、
登場人物とのことのやり取りがほほえましい。
今回の哲郎先生は大の甘党ということで、京都のお菓子がいくつも出てくる。
「世の中には死ぬまでに絶対食べておくべきうまいものが三つあるんだ」というぐらい。
食べたくなる~
またなんと40近くの独身の哲郎先生が、
研修に来ている南先生に淡い恋心を持ち始めているような・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
逝くと言っても、気軽にはいけませんよ~~~
旅立った者に送る言葉「お疲れ様でした」
あの辻さんからの「おおきに 先生」は涙が出た。
哲学的なことも哲郎先生が言うと、わかりやすい。
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町医者なのにスーパーDrとまあ良くある話ですが、題の通り哲学が混ざっているので、割と楽しく読みました。
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Amazonの紹介より
雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。
現役の医師ならではの医療や患者に対する考え方や葛藤が、多くの医者のキャラを通じて、散りばめられていました。ズブの素人にとってみれば、どうすることもできませんが、自分にとって何がベストな生き方なのか考えさせられました。
静かな佇まいだけれども芯のある主人公を含め、色々な医者達が描かれていましたが、医学や命の向き合い方が心に響きました。携わっている医者の方々に感謝しないといけないなと思いました。
基本的には、病院を舞台にしていますが、そんなに切迫した雰囲気はなく、24時間稼働していながらも、のほほんと穏やかな時間が流れている雰囲気がありました。
といっても、患者が高齢な人ばかりなので、天に召されるといった辛いシーンは多く登場するのですが、患者さんにとっては良い時間を過ごしたのではと思うくらい、読者としてはそんなに辛い気持ちはなく、淡々と読めました。
後半では、緊迫の手術シーンもあり、前半とは違った空気感があって、世界観にのめり込んでいました。
救える命、救えない命。医者として最大限に発揮しても、思うようにいかない葛藤が、医者達には多く存在します。葛藤がありながらも、目の前の「命」を救おうとする姿に感謝するばかりでした。
ちなみに題名の「スピノザ」ですが、哲学者の名前です。その思想を理解することはなかなか難しいのですが、哲学を好む主人公が、色んな哲学者を通じて、どう医療と向き合っていくのか。
熱血というよりは穏やかだけれども、的確に行動している主人公を見て、人として見習う点は数多くあったなと思いました。そりゃ誰からも愛されていた敏腕医師だなと思うばかりでした。
医師は決して「神」ではありませんが、患者と寄り添う医者達を見ていると、安心感があって、とても頼りになるなと思いました。
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僕の語彙力では思ってることを表せないですが
蝉の声しか聞こえない夏の日のような
雪が深々と降ってる冬の日のような
静かで温かい、人と命と向き合ってる
小説だなと思いました。
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病気を診ても顔は見ないような大きな病院と地域密着型の往診までする病院。どちらが良いということではなくどちらも必要なのだな…と、しみじみ思う。
余命がいくらもない人を励ますのでもなく上手い言葉で気力を上らせる。そんな優しい医療をしてくれる医師に出会えたらそれだけでも不幸中の幸いかもしれない。
延命治療を施して患者が望まないのに繋ぎ止めておく治療が正しいことなのか?ずっと問われ続けている気がする。
結論は出ないことだらけだけどせめて本の中の先生達だけは人の命に慣れないで欲しい。
…最後は泣けました。
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実は現在叔母が末期がんで入院中。叔父が付き添って看病している。それだけにこの話は泣ける。終末期医療にとって、治らない病気にどう向き合うかという医師の気持ちが患者からしたらありがたい。
人生短くても幸せって感じる時間があればいい。これは妹さんから学んだのだろう。私達の日常にある当たり前の生活を精一杯努力して楽しんでみようと思う。