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雄町ドクター
2023/12/13 23:49
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつては大学病院で数々の難手術を成功させ将来を嘱望されていたけれども、今では、京都の地域病院の内科医になっているドクター。そして……という物語。さすが、作者が、現職のドクターだけありますね、説得力ありますね
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これほどまでに医学の事をくわしく書いた小説はないと思う。さすが現役医師である夏川さんであるとつくづくと感じました。医療の現場がこれほどまでに大変で困難であるのかと思いました。作中で印象に残ったセリフは「借金は友とし、空腹は敵とせよ。」と「ここの仕事は、難しい病気を治すことじゃなくて、治らない病気にどうやって付き合っていくかってことだから。」納得です。マチ先生の好物の三代もちは甘党としてとの私も食べて見たいです。ラスト近くの内視鏡の手術のシーンはハラハラドキドキの緊迫感あふれるシーンでした。あなたもぜひ読んで楽しんで下さい。感動して下さい。
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凄腕内視鏡医の哲朗が、妹の字をきっかけに京都の地域病院で働くことに。
高齢の末期癌や認知症などの患者さんがほとんどで、同じ病院と言っても全く違う世界のよう。
治る見込みのない人が不幸なのか、何が何でも治療することがいいのか、様々な問いを投げかけられた。
「世界はどうにもならないことが山のようにあふれているけど、それでもできることはある。」
哲朗の医療との向き合い方から、「幸せ」について考えさせられた。
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【「本物の医師は、科学者でも哲学者でもあるーー」】今は京都で町医者として働く、かつて将来を嘱望された雄町哲郎。誇りと希望を忘れず奮闘する医師が「幸せ」の正体に挑む感動の物語。
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大学病院で最先端の医療に携わっていた医師が、妹の死により残された甥を引き取ることになり、大学病院を辞め決して大きくはない高齢者の多い病院へと移り、最先端の医療とは逆の対人間の医療と向き合う。
読んでいくうちに胸に深く刻まれるようなグッとくる言葉の数々。
号泣する涙ではなく、気がついたら頬をつたう涙が出てしまうような話。
人間の生と死、医療の向き合い方、生きる意味、幸せとは??
言語化するには難しい感情が、ここには書いてあった。
印象的なのは、アルコール性肝硬変の辻さんの言葉。
-生活保護は受けられない。自分のこの病気は自業自得だから。病気を治すためにアルコールをやめたら良いのかもしれないけど、それは相方(奥さん)が死んでしまった今、寂しすぎて止められない。それなら、静かに迎えが来るのを待ちたいのだよ-
治療費がないなら生活保護を受けてどうにか治療を受けてほしいと言った先生に対する答えがこれだったわけだけど、筋が通ってないようで通っていて、なんだか寂しさが伝わってきて、印象的だった。
「先生のところなら安心して逝ける」そんな風に言える先生に出会いたいなとも思った。
「人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇の中に束の間、小さな灯りがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか」
マチ先生の人柄が温かくて、皆が慕う理由がわかる。
心が浄化された話でした。
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理想の医師像。
患者として、このような先生に出会いたい。
その分、医師側からしたら苦悩も多いだろう。
治して生かすだけでなく、どのように看取るか。どこまで治療するか。患者の意思、家族の意思、医療費、看護の負担、そして倫理観。考えれば考えるほどきりがないだろう。
そして、現在の医療の細分化についても、医療の進歩にとっては必要なことかもしれないが、患者の立場としてはどんな病気でも、外来でも入院でも同じ先生に診てもらえたらどんなに安心だろうと思う。
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医療ものといえば夏川草介っていう安定感。
京都が舞台。高齢者中心の地域医療の原田病院の勤務医。でも以前は大学病院のバリバリな内視鏡医という過去もあって設定だけで期待値⤴
甘党な主人公。京都の3大餅菓子に目がない。この本を読んでいる途中でたまたま阿闍梨餅を頂いて食べた。一見餅?だったが確かにもっちりとした外皮で上品な餡が絶妙においしかった。他の2つも食べたい。
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本屋大賞ノミネート作。
これまでは長野を舞台にした作品が多かったが、今作の舞台は京都。
主人公のマチ先生は、大学病院での出世も期待されながらも、若くして亡くなった妹の息子の面倒を見る為に、終末医療の病院に転職する。
舞台は変わっても、描かれるのは終末医療の難しさ。
助けることを第一に考える大学病院と、死ぬまでの時間を精一杯生きる人たちと向かい合う地域医療の対比が上手く描かれている。
夏川作品の登場人物はいつも魅力的だけど、今回の主人公マチ先生も非常に魅力的。
どんなに頑張っても、死が訪れることをしっかり描いているし、決して綺麗事ばかりを並べずに、現代医療の問題点をしっかり伝えていることが、この作家さんのいいところ。
登場人物それぞれの個性もあり、シリーズ化として続くことを期待したい。
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まず装丁に惹かれました。確認すると名久井直子さん。さすがです。
作品も裏切ることなく良かったです。
先日まだ10代の子供を大学病院で看取ったばかりだったので、何度も涙が込み上げてきました。
マチ先生の今までよく頑張ったねと思えたのは葬儀が終わるまででした。
今また悲しさに寂しさに支配されています。
そういう物なのかもしれません。
長五郎餅の画像見ましたが、黄金比すぎる。可愛い。食べてみたいです。
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夏川さんの本が好きです。
医師も1人の人間であり、何かを考えながら、感じながら生きている。
死という誰もが知らない世界。生という誰でもおかれている世界。
この世とあの世という背中合わせの世界は、美しくも残酷だと。だからこそ、努力するのだというメッセージは心にしみました。
読んだ後に、ふわぁっと気持ちが軽くなり、じんわりと温かくなりました。
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夏川草介さんの本は、言葉が美しく、読んでいるうちに澄み切った空気の自然の中を歩いている様な気にさせられます。医師の世界は自分の環境とは大きくかけ離れたものですが、生きるという事、幸せとは何かと考えさせられる事は、常日頃自分にもあり、共感できる作品でした。
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神様のカルテもよかったけれど、今回もよかった。最後の患者からのメッセージは、じんときた。ことばって、素敵なプレゼントになると、改めて思った。続きをぜひ読みたいなと、思う。
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現役医師の夏川草介さん著。
日本のどこでも起こっている小さな病院の日常と、決して聞くことのできない医師の心の声を聴くことができる、大切な一冊。
どう手を尽くしたって寿命はきてしまう、医師には及ばない力だったり、患者への思いだったりが全体から沁みでている。
ーー
タイトルの「スピノザ」は17世紀オランダの哲学者。
『人間は無力の存在、”だからこそ”努力が必要』と説いた人物。
その観念を抱きつつ日々診療にあたる医師 雄町哲郎。
抜きん出た技術があったのに、親を亡くした甥の子育てのために街の病院に勤務している。
哲郎は医師であるのに「病気が治ることが幸せ」とは思わない。なぜなら「治らない病気の人は不幸のままなのか?」と思うからだ。
病気であっても幸せの中にいられる人もいるし、逆に生きていても苦しんでいる人もいる……体が健康であっても虐待や性暴力、長年の介護に疲弊など、救いの手が届かないで絶望している人は……。
患者に向きあい、死について考える。
若くして逝った妹の経験が彼の根底を変えた。
医師といっても様々だ。
最新医療に取り組む者、小さな病院で終末期の患者を診る者、これから一人前になろうとする若者、各々に信念がある。
作品に出てくる医師がとても個性的で魅力的だ。クセはあっても悪者はでてこない。
医療の専門用語や診断も医師たちの会話がリアルで(素人には分からないけども)、緊迫した状況でも冷静な態度に正座して読み進めたくなる!
そして外せないのが、京和菓子の数々!!
これはお取り寄せ案件ですぞ!餅が食べたい、餅!
病院の舞台となる京都の街並みもよいアクセントになっている……が、それより和菓子屋巡りがしたい〜。
患者さんも何人も出てきたが、忘れられない、飲み過ぎのおじいちゃんの辻さん。
良い先生に診てもらえて良かったね……
自分で線引きできるのも幸せなことではないかな?
自分や身内が病気になったとき、すこし距離をおいて見つめたいときにまた読み返したくなる。
ーー
◼︎印象に残った文章
医師は心の中にニ種類の人格を抱えている(中略)科学者と哲学者という二種類だ。
どんな医者でもこの二つの領域を行ったり来たりしながら働いている。
……
医療がどれほど進歩しても、人間が強くなるわけじゃない。技術には、人の哀しみを克服する力は無い。勇気や安心を、薬局で処方できるようになるわけでもない。
暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ。
……
共感と言うのは、心にとってはなかなかの重労働でしてね。とくに悲しみや苦しみに共感するときには、十分に注意が必要です。度が過ぎると、心の容器にヒビが入ることがあります。ヒビだけなら涙がこぼれるのみですが、割れてしまえば簡単には元に戻りません。それを、精神科の世界では発病と定義づけりのです。
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ド鉄板の夏川さんの医療モノ。
京都の街中の地域病院、〈原田病院〉で働く内科医の“マチ先生”こと雄町哲郎。
かつては大学病院で将来を嘱望された、凄腕の医師でしたが、彼の妹が若くして亡くなってしまい、 1人残された甥と暮らすために大学病院を去り、町医者として働く決意をしたという経緯の持ち主です。
そんなマチ先生の元に、大学准教授の花垣先生の弟子の女性医師が研修と称してやってきますが・・。
『神様のカルテ』シリーズが大好きなので、帯に“『神様のカルテ』を凌駕する傑作”とある為、かなりハードルを上げて読みました。
個人的には“凌駕”とまではいかないものの、心の中に温かいものがじんわり染み渡ってくるような読後感の一冊でございました。
技術重視の大学病院時代と違って、外来だけでなく往診など患者一人一人と真摯に向き合うことになる町病院の医師として、マチ先生の飄々としながらも誠実な姿勢がとても素敵なんです。
高齢患者がほとんどなので、“死”に直面することが多く、テーマは重いのですが視点が温かいので考えさせられつつも優しい気持ちになれるのですね。
何といってもマチ先生のキャラが良くて、人柄は勿論ですが、凄腕の手術テクニックの持ち主なので、話の後半で難しいオペをすることになった後輩医師をサポートする為、こそっと大学病院に入り込み、ささっと凄腕テクでサポートして去っていく場面があるのですが、このさり気なさがカッコいいのですよ。
さらにマチ先生は無類の“甘味好き”という設定なので、京都の美味しそうなスイーツが登場するのもお楽しみ。
私も阿闍梨餅は大好きです!(長五郎餅、矢来餅は食べたことないので、今度京都行った時に食べてみたいな~。)
夏川さんは風景描写もお上手なのですが、本書でも京都の趣きある風情が伝わってきて物語の雰囲気とマッチしているのも良かったです。
主体の視点がちょいちょい変わるのが少し気になりましたが、原田病院の先生方のお話をもっと読みたいので、シリーズ化を希望します~。
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京都の美しい背景描写と丁寧な文章。これは本書のテーマである、無慈悲で冷酷な世界で読者の心に光を灯すための作者の心意気ではないだろうか。
医療の力は微々たるもので、人々はいずれ死んでいく運命。安楽死が認められない日本では生きることが苦しみそのものである人たちもたくさんいる。
その人たちの心に寄り添う勇気をもった主人公のマチ先生は、人の幸せに向き合っている。殺伐とした世の中でも周りの人の心に少しの安心を与えること。これが生きることの意味であり人々の本当の幸せに繋がる。長生きすることだけが幸せということではないとこの本は教えてくれている。