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北町奉行所諸色調係同心・澤本神人(じんにん)シリーズ第二作。
前作を10年以上前に読んだので詳細を忘れていたが、問題なく読めた。
『諸色調係』とは『市中に溢れる品物の値が適正かどうか調べ、あるいは無許可の出版物の差し止めなどを行うお役目』とのこと。
よくある切った張ったの類の事件を扱う『定町廻り同心』とは違った地味な役職ではあるが、物語の方はなかなかシリアスだった。
女易者に騙されたと男が暴れたり、南蛮の仕掛け鏡を巡って危険が迫ったり、偽の薬用人参が流通したり、雇われ中間が行方不明になったり、これは澤本の担当なのか?と思うような調べもあるが、そこは役人、上から頼まれれば嫌とは言えない。
今回からは鍋島奉行のところにちょくちょく出入りしている小姓組版頭の跡部という人物がレギュラー入りしている。この跡部からの頼まれごとも多い。
澤本は鍋島奉行から『顔が濃い』という理由で定町廻りから諸色調係へ役替えとなったという経緯の持ち主だが、性格もなかなか。
跡部にやられっぱなしではなくて言い返したりしているし、調べを手伝っている庄太のまぜっかえしには頭を叩いて強気に出ている。
ただ亡き妹が残した娘・多代といい仲になりそうなお勢には柔らかい。
この跡部もアクの濃い人物ではあるが、悪徳役人と言い切れるわけでもないグレーゾーンなところが興味深い。
今後もシリーズが続くとすれば、彼と澤本との関係も気になるところ。
ただ個人的には主人公の澤本よりも庄太の方が魅力的に映った。
日頃は食いしん坊で惚れっぽくてだらしなさそうな男の子だが、計算は得意だし意外と知識が幅広い。
コロコロした体型だがフットワークは良い。ガサツなようできちんと物事を見ているところもある。
彼の存在があるから澤本のキャラでも読めるという感じだった。
シリーズ作品
①「商い同心 先客万来事件帖」レビュー登録なし