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紙の本
パリのデカダン、六本木の夜
2003/06/29 04:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:今野裕一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あんなにたくさんあったお金ももうほとんど使い切って、コランは働きに出なければならなかった。したくないけど、仕事をしてお金を稼がなくては。肺に睡蓮の花が咲く奇病にとり憑かれたクロエを花で埋めるため。治療費を稼ぐため。最後の仕事は、人に不幸を告げに行く必殺不幸告知人。
パイナップル入り歯磨き粉で、水道の蛇口からウナギを誘って料理を作る、不可思議料理人・ニコラも雇っておけなくなった。おまえなんか嫌いだ出ていけよ。本心でなくそう言うコラン。うたかたの日々が崩れていく。哀しい恋愛譚を通底するのは、デカダンのパリ。
1940年代ドイツ占領下のパリ、サン=ジェルマン・デプレには、ビアン、サルトル、ラディゲ、ツァラ、クノー、プレベール……。綺羅星のごとく才能が遊び歩いていた。
うたかたの日々は、日本の80年代にもあったの。アサダやサカモトが遊び歩いていた六本木。岡崎京子はその空気を描き続けた。だからヴィアンの「うたかたの日々」は彼女にぴったりだ。
コランが、不幸を告げるリストに、クロエの名前を見つけた。明日、クロエは死ぬんだ。アメリカン・ロードムービーのように、やんちゃしていてもいつかエンドマークはやってくる。終わりが突然くるのがアメリカで、ぐずぐずと崩れていくのがヨーロッパ。
岡崎京子は「うたかたの日々」に哀しく美しく崩れゆくパリのデカダンを描いている。
今野裕一のhpは["http://www.tctv.ne.jp/sparabo/peyotl.html"]です。
紙の本
最愛の人に咲く、死の睡蓮
2003/05/19 00:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:温 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この漫画の原作はポリスヴィアンの『うたかたの日々』。
実は小学生の頃からこの原作を読みたいと思っているのだが、有名なわりには田舎の書店には滅多に置いていない一冊で、ならばBK1で……!と思いつつ、ずるずる後延ばしにしていたものだ。
——そういうわけで、原作と比較しての感想は書けないのは「仕方ない奴だ」と許して欲しい。
その「仕方ない奴」の視点から言えば、「漫画版を読んだからもう原作は読まなくていいや」ではなかった。
この漫画の原作なら、本当に衝撃的に違いない。例え、結末を知っていたとしても、つい読んでしまうだろう。
絵も台詞も、作中に印象的に散りばめられた原作の文章も、クールで退廃的。
「少女の肺に巣食う睡蓮」という、聞くだけで魅力的な設定を裏切らない切なさ。
一日にたった2匙の水しか飲めずに苦しんで泣くクロエの涙や、なめらかな胸から咲く睡蓮の絵の美しさはもちろん、台詞や本文の逆説的な言葉の並べ方や世界観が、意味深な違和感を見せて素敵じゃないか。
森博嗣が好きなオンナノコあたりが好きそうだなァと思う。
ちなみに、『クロエ』という映画がある。
日本に設定を移し変えた『うたかたの日々』の映画だ。
綺麗な映像が魅力的だが、退廃的な近未来的世界観にハマると、映画のほうは多少物足りないかも。