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見事に後味の悪い話しかない短編集。面白いのか面白くないのか、オチはなんなのとか、そんなことはどうでもよろしい。これぞ井上荒野、といった風情の日常の一コマ?が表現されている。お気に入りは比較的オチが落ちている以下4作。『墓』→死んだはずの猫に生き写しの猫が来てくれたけど...『ケータリング』→食に興味がなさそうなのにやたら料理人の俺にケータリングを頼んでくる夫婦。『フリップ猫』→フリップ猫、という存在そのものがなんか今時。昔でいえばなめ猫か。『錠剤F』→楽に死ねる薬をめぐる一悶着。これは深い話かも。切ない。
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井上荒野にハズレなし。「著者史上最もグロテスクで怖い」という帯の言葉通り、ゾクゾクしながら読む短編10。
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Podcastでおすすめされていた本。この本には日常生活にあるような不穏な感じが描かれている。でも、それは実際に私たちの生活の中でもまぁまぁあるようなことで、それを文章化したらこんな感じになるんだなって思った。不穏なことは実際にどうなるのか、ハッキリと分からないって所も、この本のオープンエンドな終わり方に似ている。表題作の錠剤Fが一番分かりやすかったかな
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日常に潜む違和感や嫌な空気感を繊細に描いた短編集10編。どのストーリーも急に不穏な空気に包まれていき、ジワジワと闇に飲み込まれていく感覚。この感覚はどっぷり10編の作品で味わって欲しいし、読後感の手に残るザラザラとした違和感を楽しむのがよいと思う。
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初めて読む作家さん。ちょっと不気味な表紙と帯に書かれていた日常の隙間にひそむ「孤独」を描き出す著者史上最もグロテスクで怖い10の物語という1文に思わず手にとってしまいました。
確かにどの短編も不気味さがあるのだけれど、真相がはっきりわからないまま終わった物もあったので読後感はちょっとモヤモヤ。
そんな中でも『墓』の子猫の話の展開は面白かった。ラストの叫びがすごく印象的。それと『ケータリング』は都内から八ヶ岳の南麓の小さな町に移住して定食屋さんをオープンした夫婦の話。ケータリング依頼の目的にはゾワッとしました。
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共感や共鳴などを全く感じられなかった短編作品。だからこそ、違和感や違う感情や異なる感覚を深く感じとれた内容でした。
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この人ならでは、という短編集。
ちょっとシニカルというか、イミフな所が此処彼処にある、というか…(笑)
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シニカル、という表現がしっくり来る。
短編集でそれぞれの作品は繋がっていないが、世界観は同じなのだろう。
カタルシスも特になく、人々の営みを見せつつ、時折不穏なものを差し込んでくるのは上手い思うが、面白かったかと問われるとよくわからなかった、というのが本音。
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おどろおどろしい表紙のイラストが、「覚悟して読んでください」という感じ。
特別な、あるいは凶悪な事件が起きるわけではないが、日常に潜む、じわじわ来る恐怖が描かれている。
刑事事件と違って、「解決」される事がないのも、終わった感がなくて却って恐ろしい。
人に話しても、へ〜え、とか、よくあるよね、みたいに人ごとにされてしまうかもしれないところが、当事者たちにとっては胸がモヤモヤするのでは?
作品中、はっきり書かれていない事も多く、はっきり書かれていないけれど、読者が察するべき事項と、この先どうなるか本当にはっきりしない事項、そして、本当に起こったのかどうかも曖昧な事項・・・といろいろある。
もしかしたら、読み返した方がいいかもしれない。
隠れている何かが見つかるかも。
個人的には、目の前に立ちはだかって、自分の言いたいことを、強圧的に、あるいは泣き落とし的に、あるいは下心を持って、ずいずいと主張してくる「老夫婦」たちが怖いです。
並んだ老夫婦の、止め絵のまま近づいてくるような覇気のない立ち姿にぼんやりとした恐ろしさを感じます。
『乙事百合子の出身地』
コロナ禍の中ならではの、飛び込み営業の、騙すか騙されるかの緊張よりも・・・
『ぴぴぴーず』
触らずに孕ませる特殊能力?
『あたらしい日よけ』
いやらしい想像して言いがかりつけてる自分たちをむしろ恥じなさいよ!
『みみず』
地味な女の、ぬるぬるした内面
『刺繍の本棚』
夫の隠し事より、個展に乱入してきた女の主張が気になる
『墓』
いなくなったテルにそっくりな茶トラの猫が現れる
『スミエ』
切ないけれど、いい話かもしれない
『ケータリング』
孤立する者は、誰かを取り込もうと必死
『フリップ猫』
可愛い物への愛と、興味本位の悪意が同じ場所にあること
『錠剤F』
これも、誰かを取り込もうとした孤独・・・の話だったのかな