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大好きな北澤平祐さんの挿画とともに毎日新聞に掲載されていた連載小説。
サイトで連載時のイラストを見ながら読みました。
理佐が短大に行けなくなってしまったところから始まる序盤には胸の詰まったけれど、大人びた律とのやりとりやヨウムのネネという謎すぎる存在、そして北澤さんのやさしいイラストが和らげてくれました。
この土地の人たちが本当にあたたかくて、自分たちの足で立てるようそっと見守ってくれて、しっかりと根ざした10年後の未来では自分もべつの人を見守り、誰かを支えることが恩送りのように伝わっていくのが感動的でした。その中でネネだけは永遠の三歳児なのがまた可笑しくて愛おしい。
誰かに優しさを伝えたくなるステキな作品でした。
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律が、姉はただ事実だけを語っているという
その場面がとても心に残っている
わたしの来し方はどうだったろう
語られること以上に語れない部分に、思うところがたくさんある
しみじみと伝わるもので鼻の奥がツンとして、泣き笑い
水車小屋にネネがいる
それはとても心強い
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感動した。感動した。もうこの小説は40年にわたる現代版大河ドラマのような傑作です。ヨウムの「ネネ」の存在感が最後まで良かった。そして「ネネ」が水車小屋で聞く音楽が私の好きな「キングクリムゾン」や「プロコルハルム」など興味津々でした。映画「グロリア」の話題もドンピシャの世代なので心地良かった。石臼でひく蕎麦は食べてみたくなりました。あなた読んでこの大傑作を感動して下さい。
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八歳の妹律を親の虐待から救い出し、十八歳で妹を養いながら働き出した理佐の仕事は、蕎麦屋+「鳥の世話じゃっかん」。
蕎麦粉を挽く水車小屋の番をしているヨウムのネネと、姉妹を取り巻く人々の温かいつながりを描いた作品。姉妹を心配しながら見守ってくれる蕎麦屋の浪子さんと守さんや、ネネの世話に来る杉子さんや、律の担任の藤沢先生はみんな良い人で、律を守りながらたくましく生活していく理佐はとてもすてきだし、彼女の夫になる聡や、律が勉強を見てあげる研司や、それぞれが家族や環境に課題があって苦労しながらも前向きに生きていく姿にとても勇気をもらえる。自分が苦労したからこそ、誰かのためにできるだけのことをしたい、と考える人ばかりで、良い社会だなと思う。結婚しても子どもには恵まれない理佐夫妻や、女の子が好きな律や、仕事に使命を見出して独身のままの藤沢先生や、研司をはじめ心に傷を抱えた子どもたち、という登場人物それぞれが現代的なのも共感できる。多様性、というと陳腐だけれども。
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10年スパンで物語が進行しており読み応えがありました。主人公が子どもから大人へ成長していく過程を追体験できるのは小説の醍醐味だなと改めて実感できた作品です。この作品や吉田修一著「路」のように長いスパンを描がいた作品が自分は好きなんだと知ることができました。
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感想
誰かに見守られている安心。優しさに満ちている拠点を持っている人は変化に対し積極的になれる。だが変わらないものは大切にする。家族の絆。
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第59回谷崎潤一郎賞、受賞作。
2024年本屋大賞第2位。
第一話は1981年。
山下理佐18歳が母親の恋人に短大の入学金を使い込まれて、その恋人から虐待を受けている8歳の妹の律を連れて家出をするところから始まります。
場所は他県の水車小屋のある蕎麦屋で、鳥の世話じゃっかんの求人票をみつけて、そこで雇ってもらいます。
水車小屋にはヨウムという人間の三歳くらいの知能のある鳥がいます。
ヨウムのネネの仕草とことばが愛おしく読んでいて楽しかったです。
ネネは今、10歳で寿命は50年程。
そこで二人は忘れられない人々に出会います。
蕎麦屋の主人守さんと浪子さん。
律の友人の寛美ちゃんと、お父さんの榊原さん。
絵描きの川村杉子さん。
小学校の先生の藤沢先生。
のちに理佐と結婚する鮫渕聡。
中学生の笹原研司。
最初は理佐と律の母と恋人が追ってきて、サスペンスかと思いきやそうではなく(その時ネネが律の教えた映画のセリフをしゃべって、律を匿ってくれるのが感動的でした)。
一番印象的だったのはネネがしゃべるシーンですが。
藤沢先生が「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」と言ったのが印象的でした。
研司が「山下さんが昔話してくれたいろんな人によくしてもらって、それでお姉さんに勇気があったから自分はこんな人間になったんだっていう話を思い出して」とずっと勉強をみてくれた律に言うのも素敵でした。
誰かよくない人がいても、支えてくれる人っているものなのだなと思いました。律たちは自分たちの手で幸福と安らぎの生活を手に入れました。
ただ、理佐が裁縫が上手だったという設定は誰に習ったのかと思いました。(私、裁縫が苦手なので)よく小説の不幸だけど後に幸せになる女性ってみんな裁縫が得意なことが多いですよね。
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18歳の理佐と8歳の律の姉妹が母親と婚約者に理不尽な扱いをされ、家を出る。
理佐が新たな場所で働く仕事の条件は蕎麦屋の給仕としゃべる鳥〈ネネ〉の世話だった。姉妹の40年を描く長編。
北澤平祐さんの表紙に惹かれて購入し、中にも挿絵があって嬉しい。
すごくすごく良かった。
長編なので読み切れるか心配だったが読みやすくてスルスル読めた。
2人の生活のスタートはおぼつかないが周りの人がとても良い人達で心配して親切にしてくれたおかげでなんとか立ち往かせていく。成長と共に新たな人々の関りもあり、自分の受けた親切を周りにも当たり前のように繋いでいく。その40年にはずっとネネがいて、この物語が終わってしまうのが寂しくて読み終わりたくないと思った。
ネネが可愛くて面白くって大好きになった。
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●なぜ読んだか
「誰かに親切にしなきゃ、 人生は長く退屈なものですよ 」キャッチコピーに心をつかまれた。18歳と8歳の姉妹は40年間、どのような状況をどのような気持ちで過ごしたのだろう
#水車小屋のネネ
#津村記久子
23/3/2出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
https://amzn.to/3ENQ6vQ
●読了感想
とてもよかった!「静かな波乱万丈」という言葉が頭に浮かぶ物語だった。状況は激しく変化してはいくが、その展開は淡々と。「打算なき親切の申し送り」が生み出したものに心を満たしてもらった。
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18歳の姉と8歳の妹が、母とその婚約者との生活をやめて、蕎麦屋の住み込み仕事のため移り住み、その土地で出会う人たちとの暮らし。
蕎麦屋は水車小屋で蕎麦を引いており、その水車小屋に住み蕎麦ひきの見張りをしているのが、ヨウムのネネだ。
親には恵まれなかった登場人物達だけど、行く先で出会う人たちの善意によって生かされ、人格も形成されていくのか。
自分が持っていないものを人に与えてもらい、それを今度は自分が誰かに手渡したいと願う妹の律。
登場人物みんな魅力的で、心があたたかくなった。
ネネがよくしゃべる愉快な鳥で、ヨウムの知能は人間の3歳くらいと言われてるらしい。
ネネの言葉の覚えっぷりは3歳を優に凌ぐものの、ネネの「永遠の子ども」らしさが、物語全体を優しくしてくれてる。
約40年間の物語。
津村さんの小説は短めのものが多いイメージだったけど、あとがきによれば、これは津村さんの一番長い小説だそうです。
出会いと別れがあり、単にすれ違うだけの人もいる。
滅多に会えなくなっても、故郷は待ってくれている。そんな優しいラストだった。
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p.37 なんとなく、これからの自分と律は、ジュースを飲む機会があれば、必ず「いる?」と尋ねるような関係でもなくなるだろう、と言う予感があった。それは要するに、理佐が律を子供としてモテなすのではない、律を甘えかしすぎない、2人で無駄遣いはしないと言う関係になることへとつながってもいるようだった。
p.89 小学3年でも、友達が「いい人」か否かが重要なのはそうだよな、と澤は思う。性格の良い友達を見つけるのは、子供の人間性がまだむき出しなまま混ざり合っている小学校ではとても難しい。
理佐にとって律は、子供と言うよりも、自分が世話をしなければならない背丈が低くて、たまに突拍子もないことを知っているような変な人、と言うようなところがあるのだが、この時ばかりは子供らしいと思った。律が悩むようなことになれば、理佐もきっと悩むだろうし、できるだけ応援しなければ、と理佐は決めた。
p.104 理佐はうずきながら、むしろ選択肢があるのが自分の方であること、律に対して申し訳なく思った。そんな事は絶対にしないけど、自分は律を放り出そうと思えばできるのに対して、立はそういうことになったら、母親と婚約者の元に戻るしかない。難しい漢字が読めて、自分が見た鳥がヨウムであることをわかっても、それでも子供だと言うだけで、立は自由を制限され、保護を必要としている。
p.143 ネネのところに寄って、コーラススカイの録音テープを聞かせると、ネネは翼をくださいをいたく気に入って、早速ものまねを始めた。それを聞きながら、ネネは翼もあるじゃない、と律は指摘して、それから寛実が笑い出して、理佐も笑ってしまった。
p.145 「職場で使っていたものなのですが、ネネさんに必要なものだと、娘と律さんが話していたので」
p.169 「学校の意地悪な男子は、ものすごく貧乏を馬鹿にするからね。だから怖いのはわかる。でも私の読んでいる本に出てくる人は、貧乏な人が多い。私も例外じゃないのかもしれない」そういう連中に馬鹿にされない生活をしているからって、幸せだとは限らないし、馬鹿にする連中が幸せだとも思わない。
p.383 「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて、退屈なものですよ」
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人は一人で生きているわけじゃない。誰もが誰かの手を借りて、誰かの優しさを受け取って生きている。
困っているときに親切に手を差し伸べてくれる人の、その優しさに甘えることのできる人は、幸せである。
だから、自分が受けた親切と優しさを、今度は誰かに差し伸べていく。そうやってつながっていくんだ。
優しさのバトンが繋がるその幸せを堪能しました。
18歳で親から自立して生きていくことは、自分の身だけであればそう難しい事ではない。けれど、そこに8歳の妹が付いてくる、となると並大抵の苦労ではない。自分自身がついこの間まで庇護される側だったのに、小学生の「保護者」としての役割が生まれてくるのだから。
だから、理佐と律が浪子さんと守さんと出会えたことは、この上ない幸運だったと思う。住むところがあり、まかないもあり、そして自分たちをちゃんと見守ってくれる大人がそばにいるということなのだから。
二人が初めて出会った「赤の他人」が彼らでよかった、と心から思う。
「とりの世話じゃっかん」という風変わりな求人。そこから始まる四十年に及ぶ二人の物語。
そば屋で使うそばを挽く石臼の監視をしているヨウムのネネの世話、ってなんじゃそれ、って思う仕事なんだけど、読んでいるうちに、自分もやりたいとすごくすごく思ってしまう。
ネネと一緒にニルヴァーナを聴いたり、墾田永年私財法!と叫んだりしたい。
二人が出会う大人たちが彼女たちに与えてくれる優しさは、いったいどこから生まれてくるのだろうか。
浪子も守も、杉子さんも、そして律の担任の藤沢先生も。
藤沢先生の「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」という言葉は、その一つの答えなのかもしれないけれど、それぞれに、それぞれの思いがあって、なのだろう。
誰かに救われること、誰かを救うこと。その小さなつながりが大きな円になって広がっていく。
8歳だった律に、40年後あなたはとても幸せに微笑んでいるよ、と伝えたい。40年後のあなたの目にはあなたに優しさをくれた人と、あなたが優しさをあげた人と、そしてネネが映っているのだよ、と伝えたい。
読み終わった後もずっと心が幸せなままだ。
温かい優しさにそっと包み込まれた気持ちよさ。
自分も誰かにつなげられるかな、この幸せを誰かに伝えられたらいいな、と思いながらぼんやりネネのことを思っている。
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お母さんの恋人に虐待されて居場所がない…という暗い始まり方をしたけれど、周りの人々の温かさに守られてすくすく真っ直ぐに成長していく心温まるお話しでした。
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「つまらない住宅地~」の時にものすごいものを読んでしまったという感想だったのが、さらに更新された。
ネネや周りの人々と共に、山と川に抱かれて40年を生きている気持ちで、読み終わりたくないけれど、ページをめくる手が止まらない。
この数年、生き方について考えていたことに共感者がいた...というような静かな勇気を与えられた気持ち。
同じように感じた人がきっと多いと思うし、そんな世の中なら嬉しい。
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3ページ毎に泣いちゃうから外で読めなかった。
好きな言葉はたくさんあったけど、藤沢先生の「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」は、人生のモットーにします。