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11件
死国
著者 坂東眞砂子
20年ぶりに故郷である高知の矢狗村を訪れた比奈子は、幼馴染みの莎代里が18年前に事故死していたことを知った。その上、莎代里を黄泉の国から呼び戻すべく、母親の照子が禁断の“逆打ち”を行っていたのを知り、愕然とする。四国八十八ヶ所の霊場を死者の歳の数だけ逆に巡ると、死者が甦るというのだ――。そんな中、初恋の人・文也と再会し、恋に落ちる比奈子。だが周囲で不可思議な現象が続発して……。古代伝承を基に、日本人の土俗的感性を喚起する傑作伝記ロマン。
死国
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死国
2005/09/27 00:09
死国
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:金魚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「これって『ホラー』でしょ?怖くて読めない。」とおっしゃる貴方、違います。
これは、『恋愛小説』です!
民俗伝承を基に,恋心と生への執着を叙情・哀切豊かに描いた傑作と、おススメします。決して巷の評価を信じてはいけません・・・ただし、R指定、高校生から読んでね。
とにかく、何でも『ホラー』にしちゃって。映画化すると『リング』にしても『死国』にしても、やたらおどろおどろしくして原作台無しです。でも、栗山千明くんだけは良かった。小説読んだオイラのイメージに近かったです。
それにしても、映画化やテレビドラマ化は怖い。大抵は駄作になってしまいますから。映画を観ただけの方、怖がらずに小説をぜひお読み下さい。
そして原作を読んだあなた、決して映画を観てはいけません!?これがほんとのホラーかも。
死国
2002/02/25 17:55
ミステリアス
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るじゅあ - この投稿者のレビュー一覧を見る
怖いんだけれど切ない。死んでしまったものはもう帰ってこれない。
「リング」の映画でラルクの「finale」が使われていたけれどこっちの作品のほうがあっている気がする。あの曲聴いたらリングじゃなくてこの話を思い出す。
死国
2002/06/24 00:25
死者を呼ぶ逆さうちが、恐怖を呼ぶ
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くろねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
四国八十八ヶ所を、死者の年齢の数だけ逆に巡ることで死者を甦らせる
ことができるとする逆打ち。
死んだ者を思う気持ちの深さが、そんな伝説を生んだのでしょうが、
悲しいですね。
ましてや、親が、死んだ子を思って、ひたすら霊場を反対に巡る姿。
悲しく、そして鬼気迫るものがあります。
そうはいっても、通常、本当に、我が子が黄泉の国から戻ってくると
信じてそうする人間はいないでしょう。
先に逝った我が子をあきらめきれない思いを断ち切るための儀式として、
そういう伝説が存在するのではないでしょうか。
けれど、それが、「本当に」死の国の扉を開いてしまったとしたら…。
幼くしてこの世を去った莎代里。
その母親の妄執が、彼女を、この世に呼び戻したのです。
そして、それは、矢狗村の伝説をもこの世に実現させ…。
20年ぶりに故郷である矢狗村に帰った比奈子は、初恋の人文也との
再会の喜びもつかのま、そんな恐ろしい伝説に巻き込まれるのです。
「親友」であった莎代里の死の知らせだけでもショックだというのに。
この世、この「生者」の世界にあって、「死者」は、異質なものであり、
それゆえに、生者にとっては超常現象と見える力を持ってしまう。
それは、やはり、お互いにとって不幸なことでしょう。
だから、死者は、この世に留まるべきではないのでしょう。
この世から、そこにある己の肉体から魂が離れ、
別の世界に行くことが死であるとするなら、
すでに死を迎えたものが、この世に留まってはいけないのでしょう。
たとえ、それほど、この世にやり残したことや、心残りがあったとしても。
けれど、年齢の故でなく、自らになんの責めもなく、命を断ち切られた者の
口惜しさ、この世への未練を、誰に責めることができるでしょう。
残して行く者、この先に待っていたであろう輝かしい未来。
それをあきらめろなんて、なんて残酷なこと。
でも、だからこそ、その無念さをこの世に受け入れてしまっては、
この世は、負のエネルギーに満ち溢れてしまうではないかという
矛盾した感情。
文也をはさんだ比奈子と莎代里の2つの想い。
莎代里は、もう、新しく恋をすることのない身。
それだけに、文也をこの手にという想いは、哀しくも激しい。
比奈子。
傷心を抱えて戻った故郷で、心安らげる初恋の人との再会。
やっとたどりついた故郷を手放したくなんかない。
どちらが強く心を打つかというと、莎代里なのです。
分かっています。
莎代里は死んでいて、そこにいいてはいけない存在。
でも…、!
あの日、はかなく消えた夢を、今、この手にと思うことが、
どうして許されないのか。
どうか、莎代里が、あるべき世界で幸せになりますようにと
願わずにはいられません。