電子書籍
夏の滴
著者 桐生祐狩
僕は藤山真介。徳田と河合、そして転校していった友達は、本が好きという共通項で集まった仲だったのだ――。町おこしイベントの失敗がもとで転校を余儀なくされる同級生、横行するいじめ、クラス中が熱狂しだした「植物占い」、友人の行方不明……。混沌とする事態のなか、夏休みの親子キャンプで真介たちが目の当たりにした驚愕の事実とは!? 子どもたちの瑞々しい描写と抜群のストーリーテリングで全選考委員をうならせた第八回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
夏の滴
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紙の本夏の滴
2004/09/15 20:33
なぜこの話に「夏」のタイトルが付いたのだろう、正直いってよく解らない。展開は、ちょっと恩田陸風、でもそれは地方の学校が舞台かもしれない
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《中学二年生の藤山真介は、町から消えた友人のヨハネを探し仲間と三人、東京へ向かう。教室で占いをする八重垣の予言に怯えながら》
なぜ夏なんだろうなあ、と思ってしまう。怪談だから夏? そんな安直な発想じゃあないはずだ。でも夏とタイトルに謳った以上は、責任とってもらおうじゃないの。セキニンを。
舞台はN県の県庁所在地に近い町、名前はない。町の財政は、自ら主催した伝統工芸博覧会が失敗し、危機に瀕している。主人公 藤山真介の友人で家族と失踪した桃山ヨハネも、父親が博覧会に絡んで負債を抱えていたと言われている。何も言わずに姿を消したヨハネのことが気になる真介は、中学二年生生になったことを契機に、車椅子生活を送る友人の徳田と一緒に、失踪したヨハネが住むらしい東京に行こうとするけれど。
真介と幼馴染の河合みゆらが、体の不自由な徳田芳照たちとともに送る模範的な学園生活。地元のテレビ局NBNは毎年のように、彼らの姿を取材に訪れる。今年から新しく取材の担当となった江上理沙子は、撮影をし始めて早々、教室で占いをする八重垣潤の存在に気付く。クラスの嫌われ者でいながら、いつも話題の中心にいる潤。伝統工芸博で手に入れたという本を片手に行われる植物占いで、潤が見た真介の空白の未来が意味するものは何か。
生徒たちの行動に苛立つ担任の梅本。理沙子が見た少年たちの真の姿。ヨハネは本当に失踪したのか。真介の前に姿を見せる謎の男、等々力貴政とは。財政の破綻にもかかわらず、町を覆う不思議な明るさの背後にあるものは。これらの謎が微妙に絡み合い、話は思わぬ展開を見せる。特にラストは、独創性こそないけれど面白い。
第八回日本ホラー小説長編賞受賞作。作者は1961年生まれ、文章に癖がないので安心して読むことができる。でも、なぜ夏? 季節を限定するようなタイトルや装丁に、最後まで納得できなかった。もっと言わせてもらえば、内容にふさわしい文体を持てば、もっとよくなったのにと思う。意味を伝えるだけの文章では、やっぱりホラーの感じが出ない。