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復讐執行人
著者 著者:大石圭
香月健太は33歳。3つ下の妻と5歳と6歳の娘たちと4人で横浜市郊外の住宅地に暮らし、大手家電メーカーの横浜営業所にサービスエンジニアとして勤務している。平凡でありきたりの毎日だったが、香月健太は心の底から幸せだった。あの男が現れるまでは……。明日から家族旅行へ行くという夜、事件は起きた──。
復讐執行人
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紙の本復讐執行人
2005/07/22 22:33
切なすぎる復讐の動機
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カルバドス - この投稿者のレビュー一覧を見る
復讐は復讐の連鎖を生み、生産性の無い行為である事は、多くの歴史が証明している。かつての日本にあった“仇討ち”の許可も、個人的恨みによるものというよりは、家柄や藩のメンツによるところが大きかった。敵を求めて旅立ったはいいが、その多くは無念のうちに死んでいったと聞く。果たせない思いを抱えたまま死んでいく。これ以上の無念は無いだろう。
本書の文中にも、復讐という行為は無意味である、といった意味の表現が出てくる。しかし、主人公は、復讐の手を止めようとはしない。失敗する恐怖を感じながらも、復讐という名の犯罪に手を染めてしまう。その動機を知った時、読者は「まさか!?」と驚くと同時に、「いや、あり得る事かも」と切なさを感じることだろう。
映画が先にある『呪怨』シリーズは別だが、大石圭の作品に登場する殺人鬼は、その動機が切ない者が多い。人間らしいといえば人間らしく、あまりにも不完全で不安定。ごく普通の人々とは一線を画しているものの、理性のたがが外れ欲望に素直に動いてしまう姿は、まさしく“人間”そのものである。本書の主人公も例外ではない。
「思い出して欲しい!」と心の中で叫び続ける主人公が、切なく悲しい。