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Zカー
それは、カルロス・ゴーンとZの父・片山豊(元アメリカ日産社長)の歴史的握手で始まった! 日産復活の切り札として登場した「ニューZ」、その誕生までの壮大なドラマ。
Zカー
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Zカー
2002/01/08 03:35
熱い思いは十分伝わったが…
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:我が名は虎之介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の著書は、初代Zカーの父であり本書の主人公とも言える片山氏と、彼のインタビューを行い、本書全体の構成も行なっている財部氏の二者である。片山氏はもちろんのこと、財部氏も一ジャーナリストとしてというより、Zカーに魅せられた者としてその筆を振るっているのだが、残念ながらそれが十分に読者にも共感できる形で著されているとは言いがたい。
後半で、最新のZカーのデザインに関する描写があるのだが、恐らく実物を見たことのない人には、何が何だかさっぱり分からないと思うが、本書全体が実はそのトーンなのだ。むしろ、年齢のせいもあるのかもしれないが、片山氏の語り口の方が冷静で、具体的な事実や客観的な評価でそれをバックアップするはずの財部氏の方が、全篇これ悲憤慷慨調になってしまっており、いささか食傷気味である。
日産自動車の再建はまことに時宜を得た話題であり、それをビジネス手法的な切り口ではなく、自動車製造会社の本質的な目的である「クルマ」そのものから迫った本書のポジションは非常にユニークなものと思うが、残念ながらそれを十分生かせていない。記述の内容にしても、重複のように見えてしまうところも多く、もともとそれほど多くない紙幅をさらに薄く感じさせてしまう点も気になる。もっと多くの取材や考察により、掘り下げられるべき題材ではなかったか。
本書の最後の方で、D.ハルバースタムの自動車会社を題材にしたノンフィクション「覇者の驕り」について触れられているが、これに比べるといかにも見劣りがしてしまう。また本書に限らず、日本人著者による自動会社に関するノンフィクションは、総じて共感の感情のみが前面に出てしまい、ジャーナリスティックな視点による掘り下げが浅い感じがする。本書の目的がそもそもそこまでのものではなかったにせよ、残念ながら期待はずれであったというのが正直なところだ。