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4件
猫背の王子
著者 中山可穂 (著)
自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた――。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主催する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りがミチルからすべてを奪っていく。そして、最後の公演の幕が上がった……。スキャンダラスで切ない青春恋愛小説の傑作。俊英の幻のデビュー作!
猫背の王子
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猫背の王子
2004/09/16 10:26
もっと読まれるべき小説
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のデビュー作にして、解説で書かれている通り、恐るべき傑作です。
自分はこの痛々しい物語に一抹の感情移入もできなかったけれども、
こんなにもいとしい小説、主人公ミチルという人物は、他の小説では
存在しなかった。
読みやすいだけではなく、展開がめまぐるしく面白い。息をつかせぬ。
愛憎、裏切り、執着、野心、自分は演劇の世界にいてその業界を知って
いますが、ここまではないかもしれない。けれども、あるかもしれない。
今の演劇界が失った何かをも思い起させる。
演劇に興味のない方もご安心して読んでください。
必ず損はしません。
最後の三作目をじっと待ち望むことになると思います。
猫背の王子
2004/03/21 00:38
ミチルという人
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:karasu - この投稿者のレビュー一覧を見る
官能小説が始まりそうな冒頭。「自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた」これは、自分の周りから大切な人達が消えても、自分だけは自分自身を愛す、愛しているという祈りの表れだったのだろうか?
この夢から目覚めたのは、主人公のミチル。
彼女はレズビアンである。芝居が無くては生きていけないような演出家でもある。
自らも舞台に立つが、作中に出てくる女記者からは「芝居はヘタだけど、キスは上手」と評される。しかし、その存在感は絶大で、それ故、公演直前、主演女優に辞められる。
主演女優を連れ戻す為には、彼女の隠し子を盾に包丁持参で乗り込むような人である。この事からも分かる様に、ミチルは自分の我を通すタイプである。それは、周りもついて行けない程に。
才能が在るから、惹かれた人間が集まる。永遠の少年の様な容姿から、女の子達が熱を上げる。眠るベットに事欠かない。しかし、ミチルが切望している物ほど手には入って来ない。
余命僅かな病んだ老人を、子供の変わりに癒してやっても、ミチルは本当の母から愛される事は無いのだ。
知的淫乱の女たらしと言われ、事実、次々に女達を渡り歩いていても、本当に恋焦がれる由紀さんとは手も握れない。
劇団に無くてはならない存在のトオルは、ミチルから離れていこうとする。真っ直ぐ自分を貫くミチルの側に居ることは、親密度を増すほど、辛くなるのだろう。
思うままに生きている様に見えるミチルの、激しく、痛々しい様に引き込まれていく。
中性的だろうその姿は、如何ほどに美しく痛ましく、そして、印象的なものなのか。
切望するものを失ったが、「あともうすこしくらいなら、生きてゆけるかもしれないと思った」ミチルは、この先どう過ごしてゆくのだろう。

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