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時代短篇選集
時代を超えた衝撃の名作短編を収録。
幕末から明治を舞台に描いた山田風太郎の名短編を、文芸評論家・日下三蔵氏の編により収録した短編集。大きく変わっていく激動期に、あるものは自らの意志を貫き、あるものは時代に翻弄される人生を送った。
無念流の免許皆伝の腕をもち、佐久間象山の下では、勝麟太郎とならぶ俊才と目されていた、立花久米蔵。蘭方の医者でもあり、妻は外国人の血を受け継いでいた。そんな彼が、黒船渡来で攘夷を唱える声に、異論を述べたことから悲劇が始まる、「ヤマトフの逃亡」。
火事のため、伝馬町の牢屋敷から囚人の切り放しがあり逃げてきた、高野長英の最後までを描く、「伝馬町から今晩は」。
ほか全七編。
幕末妖人伝 時代短篇選集1
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紙の本明治かげろう俥
2020/11/19 09:38
数奇な運命のシンフォニーを奏でつつ悲劇の終幕に突き進む物語
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投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作「明治かげろう俥」では、日本を震撼させた大津事件に遭遇し犯人津田三蔵を身を挺して取り押さえ、国賓の更なる危難を防いだ功績で受勲と終身年金下賜の恩賞に与った人力車夫の二人(向畑治三郎、北賀市太郎)が、降って湧いたようなこの幸運により俄か仕立ての英雄として人生を狂わされる様子が描かれる。
日清戦争から日露戦争に向かう明治中期の日本の国情や世界情勢の推移と相俟って、実在実名の人物が多数登場するこの中篇物語は、数奇な運命というシンフォニー(交響曲)を奏でながら、悲劇の終幕へと突き進む。
一組の男女に希望を託す旅立ちのシーンと、別の一組の男女がバラバラに不幸の深淵に堕ちてゆく悲痛なシーンとが、終幕にて交錯するのだ。
運命が人生をかげろう色に染めたのか、人間がかげろうのように生きたため人生航路が運命的に引き裂かれたのか、どっちだと言わんばかりに…。
本書には五つの短篇が併録されている。
桜田門外の変で討ち取られた大老井伊直弼の紛失首の行方を巡る人間模様と不祥事を糊塗する幕府や彦根藩の悲喜劇を描く「首」。
華族相馬子爵家の御家騒動(精神障害者の不当監禁)を題材に、正気と狂気の裏腹な関係、人間の偏執性、正義感、先入観の怖さ、女性の想念や情念の恐ろしさを描いた「明治忠臣蔵」。
参議広沢真臣暗殺事件の刺客(犯人)捜査での鍵を握る唯一の目撃者たる側妾かねの拷問による告白(アバンギャルドな証言)により、却って振り廻される官憲の様が描かれる「天衣無縫」。
政府転覆を謀る謀叛人として捕縛された元上野彰義隊士、旧旗本藤波伊織により女中奉公の妹お雪が汚され、恋仲のお紋も手籠めにされたと思い込んだ大工の兄秀五郎が、刑部省請負仕事の首吊り柱で憎い伊織を屠ろうと復讐心に燃えるが、伊織を慕って“時間差心中”の挙に出た妹お雪が哀れでならない「絞首刑第一番」。
被害者の愛妾おえんが縁となり、幕末維新を騒がせた天誅人斬り事件に関与した田中新兵衛(薩摩)、岡田以蔵(土佐)、高田源吾改め河上彦斎(肥後)という三人の剣鬼が勢揃いする「三剣鬼」。
なお、巻末[付録]の山田風太郎 時代小説 <人物事典>がお得で、役に立つ。
紙の本幕末妖人伝
2015/01/30 16:52
伝奇短編集
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投稿者:夢の巣 - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末維新期を舞台とした短編小説集。
それぞれの作品の主人公は、下記のとおり実在の人物たちです。
「からすがね検校」 米山検校(勝海舟の曾祖父)と柳生又右衛門
「ヤマトフの逃亡」 橘耕斎(別名ウラジミール・ヤマトフ、増田甲斎)
「おれは不知火」 佐久間恪二郎(佐久間象山の息子)と河上彦斎
「首の座」 沢宣嘉と江藤新平
「東京南町奉行」 鳥居耀蔵
「新選組の道化師」 芹沢鴨
「伝馬町から今晩は」 高野長英
このほかにも、多くの実在人物が登場。
実際にあった出来事を題材にしていても、ストーリーは虚実が入り交じっています。
波瀾万丈の展開とミステリアスな雰囲気が、とても楽しめました。
巻末の解説も有用な情報と思います。