返却はお早めに あやかし文庫へようこそ
呪いの解決法が書かれた本は延滞中!?
術師を生業としていた兄の命日に部屋へ黒い風が入り込んで以来、あやかしの姿が見えるようになってしまった有末かなで。ふわふわした喋る埃の塊のようなものに「呪い」だと言われ、対価(チョコレート)と引き換えに、「ひいらぎ文庫」に行けば呪いを解ける方法が書かれた本があるはずだと教えてもらう。
次の日の放課後、枯れ草だらけの原っぱと林を越えてなんとか「ひいらぎ文庫」にたどりついたかなでだったが、玄関前に寝ていた金色のキツネのしっぽをうっかり踏んづけてしまう。そのキツネに男の声で文句を言われ、喋るキツネなのか動物の言葉までわかるようになったのか混乱するかなで。そんなかなでを「ひいらぎ文庫」の中へ招き入れてくれたのは、「ひいらぎ文庫」の室長で浮世離れした美貌の長谷川柊だった。
ところが、かなでの目的の本は延滞中! 困るかなでを見かねた長谷川の厚意で、長谷川の式神だという喋るキツネの未明(みはる)を留守番役に、かなでは長谷川と一緒に延滞本を取り立てに行くことに。しかし、本の借主と一緒に本の行方がわからなくなっていて!?
あやかし×本がもたらす、心に響く思い出の物語。
返却はお早めに あやかし文庫へようこそ
06/27まで通常660円
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2020/03/17 22:29
心理描写が丁寧で、現実味がある。その分、胸に詰まるものがある。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:バターキャラメル - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族を立て続けに失った高校生の女の子が主人公。
その失ったものを想うときの主人公の心理描写が丁寧で、思わず胸に詰まり切なくなりました。母を失い、必死に通夜をこなしていた主人公の前に、生き別れた兄が現れ一緒に暮らすようになるが、不思議な力で生計を立てている兄もまたはやくに逝ってしまう。
一人暮らしがはじまり、一年が経つと主人公までも不思議な力に目覚めてしまい、それが呪いだと聞いたものだから、解決策を求めひいらぎ図書館に足を踏み入れる。
そこで出会った美丈夫の室長と、金狐のあやかしといったふたりとゆっくりと絆を育み、ひとりは寂しい、でもなれ合いではない大事なもので誰かと繋がる幸せや安心感、あるのが当たり前だとは思ってはいけない、失うことの苦しさまでも込み上げてくる。
お兄さんがひとりになってしまう妹を想って、こうなるように策略したのかなと延々と考えてしまった(笑)
ただひとこと、主人公がひとりじゃなくなって、良かった…。お金には困っていないという点があるけれど、自分を真摯に思ってくれる人はもういない、という一言がすべてだと思うからこそ、ぎこちなくても恐る恐るでも、自分を思ってくれる人がいるというだけで、心強いだろうから。
恋愛要素はないですが、ハートフルで綺麗な物語でした。