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20件
猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」
著者 猪瀬直樹
日本の官僚システムに大きく切り込んだ記念碑的作品。道路公団改革の原点。
収録作の「構造改革とはなにか」は、日本の官僚システムに大きく切り込んだ記念碑的作品。著者は、日本政治の構造欠陥を見抜き、本書がきっかけとなって道路公団改革に深く関わっていく。
本書前半は書籍『日本国の研究』(1997年3月文藝春秋刊行)。後半には後に執筆された「増補 公益法人の研究」を収録した。附録に、著者による「日本道路公団分割民営化案」。
巻末の「解題」には、「小泉純一郎との対話」(『文藝春秋』1997年2月号初出)を収録。対談時、第二次橋本内閣の厚生大臣であった小泉氏と、官僚機構の問題点と行革について論じている。ほかに、小泉内閣で経済財政・金融担当大臣を務めた竹中平蔵氏が『日本国の研究』文庫版(文春文庫1993年刊)に寄稿した解説文。猪瀬自身がのちに発表した関連記事「小泉『新』首相に期待すること」(『週刊文春』2001年6月21日号初出)、「官僚『複合腐敗』は五十年周期で来る」(『文藝春秋』2000年5月号初出)。さらに、著作集編集委員の一人である鹿島茂氏との対談「知の“十種競技”選手として」など、多くの関連原稿や、雑誌・新聞に掲載された書評などを多数収録。
合本版 猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」全16巻
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日本の近代猪瀬直樹著作集 5 ミカドの肖像
2002/11/11 15:34
圧倒的な迫力とダイナミズム!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マネキネコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品が発表されたのは、昭和天皇崩御の3年前(1986年)のことだった。それまでの「天皇制」に対するアプローチとはまったく異なる手法、構成のダイナミズムに驚かされたのを思い出す。あれから16年。「日本の近代 猪瀬直樹著作集」として再刊され読み直し、あらためてこの作品の迫力に圧倒された。
『ミカドの肖像』は三部構成となっている。第一部は、西武王国を築き上げた堤康次郎がもと皇族の土地を次々と手に入れてプリンスホテル群を建てていくプロセスとそれがもたらした大衆化現象を、第二部は、オペレッタ「ミカド」が捲き起こした世界的な波紋、第三部は明治天皇の「ご真影」が実は写真ではなくて描かれた肖像であったことの謎をそれぞれ中心の主題として、ストーリーは多岐に展開していく。この三つの主題は、一見なんの関連もなさそうで、しかし奥深いところで共通のモチーフによって結ばれていることが読み進むうちにわかってくる。
「近代天皇制」とは、単なるイデオロギーでもなければ、政治体制や社会制度でもない。われわれ日本人のこころの中に行き続け、無意識のうちに価値基準となりうるなにものかであることを、恐るべき調査力と行動力によって明らかにした傑作といっていい。
日本の近代猪瀬直樹著作集 8 日本人はなぜ戦争をしたか
2004/04/17 19:50
大東亜戦争の周辺
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤタガラス - この投稿者のレビュー一覧を見る
大東亜戦争の前に模擬内閣が戦争必敗の予測を行っていたという歴史的事実をがあったことを知り興味深い。ただ、このような客観的な分析があったとしても、帝国主義の時代にあって、当時の日本をめぐる情勢からすれば、どの内閣であっても戦争は避けることができなかったのではなかろうか。
著者も指摘するとおり、ルーズベルトは日本が先に攻撃を仕掛けるようにハルノートを提示するなど挑発し、経済封鎖も行ったのである。マッカサーも後に語ったように「日本は自衛のために戦争に踏み切らざるを得なかった」のであり、当時の日本の情勢はあまりにも過酷であり、その当時のことを現代の基準でばっさり切り捨てることは不公平であり、とても歴史に学ぶことではない。私は、体を張って日本を守ろうとした靖国の英霊に深々と感謝するし、当時の人々を誇りに思うのである。中西輝政氏は、国民の文明史において、大東亜戦争で日本が強い抵抗と軍事的能力を示したために周辺国に戦後も長く大きな印象を残し、日本に有利な情勢があったことを指摘しておられ、玉砕も春秋の筆法をもってすれば決して無意味ではなかったと記述しておられるが、今日の日本はそういう体を張った人々を忘れてはいけないし、戦争で負けたという結果論からだけ評価をすべきではない。この本にはそういう意味があると感じられた。
日本の近代猪瀬直樹著作集 4 ピカレスク
2002/11/18 06:50
もしこの本が50年前に出ていたら……。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Y.S - この投稿者のレビュー一覧を見る
じつは先に映画を観ていて原作を後で読む形になったのだが、原作が遥かに面白かったのでお奨めしたい。
例の「井伏さんは悪人です」の遺書がアップになっていた映画の冒頭のシーンはゾクッとする迫力を感じたが、原作でもその最初の謎かけの鮮烈さは同じで、その後はもう謎解きにぐいぐい引きずられるままにあっという間に読み込んでしまった。ミステリー小説として絶品である。
太宰は好きなほうなので、これまで評伝もいくつか読んでいたので太宰にまつわるエピソードはたいてい知っていたつもりだが、太宰の死の謎というど真ん中のテーマについて、こんな大胆な仮説は聞いたことがなかった。佐藤春夫のいうように「井伏さんは悪人です」は太宰一流の逆説的表現だとばかり思っていたから、それが実は太宰の本音でありそして当の井伏はそのことを十分認識していた、というのは衝撃的だった。この本が太宰の死後すぐに出ていたら、おそらくとんでもないスキャンダルとなっただろう。
世の太宰好きにはぜひ読んで感想を聞かせてほしい、と思う挑戦的な本である。