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CIAスパイ養成官―キヨ・ヤマダの対日工作―
著者 山田敏弘
米国・アーリントン国立墓地で、静かに眠る日本人女性――その名前はキヨ・ヤマダ。彼女はCIAで工作員に日本語を教え、多くのスパイを祖国へ送り込んだインストラクターだった。教え子たちは数々の対日工作に関わり、キヨ自らも秘匿任務に従事していた……歴史に埋もれた彼女の数奇な人生と、知られざる日米諜報秘史。
CIAスパイ養成官―キヨ・ヤマダの対日工作―
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CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作
2019/09/03 17:45
キヨ・ヤマダにとってガラスの天井を突き破った瞬間とは?
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Ben - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は山田敏弘氏の「ハリウッド検視ファイル: トーマス野口の遺言」からのファンで,本書を手に取りました。
戦後という時代を背景に,アメリカに渡った美しく有能な日本人女性キヨヤマダのさまざまな苦悩と成功が描かれていますが,そこに,CIAという特殊な機関の職員であること,戦勝国のアメリカ人と結婚したこと,不遇な幼少期,生徒たちの憧れだった教員時代などの様子などから,一人の女性の姿がありありとイメージできるように書かれています。
そして,この物語を通して山田氏が読者に問いかけているのは,「キャリアとは何か?」「女性のキャリアとは?」など,女性の生き方に関することではないかと思いました。女性(や米国における日本人)の上に覆いかぶさる「ガラスの天井」を見事に破ったキヨヤマダですが,「奇妙な「偲ぶ会」」に投影されている,周りの人(職場CIAの人は別),一般社会に賞賛されないキャリアというのが人生においてどういう意味を持つものかとも考えさせられました。特にキヨヤマダにとってアメリカは外国ですし,最終的には,やった仕事についての自分の中での納得,達成感や満足感などがあればよいということでしょうか。かなり深いことだと思います。
ただ,このキヨ・ヤマダの日本語教育者としてのキャリアについては,あるネット記事にも書かれているように表舞台でも高名な人であったとすると,なおさら,聡明かつ向上心のあるキヨヤマダにとっては,おそらく「表」の成功を超える満足感を得られる活躍の場がCIAであったのではないかとも想像されます。
一点,表紙に「キヨヤマダの対日工作」とありゾクッとしましたが,彼女が本当にどれほどCIAの「対日工作」に関わっていたのかはあまり書かれていませんし謎ですね(というか,詳細が明らかになることはないのだろうとも思いますが)。日本語/日本文化の教師として,その教え子たちに日本での身のこなし方などについて多少の助言をしていた程度ではないかと,美しいキヨ・ヤマダの写真を見ながら,そうあって欲しいなどとも勝手に考えたりもしました。
ノンフィクションの書籍としては,山田氏はこれまでもさまざまなメディアを通しても発信されていますが,氏の豊富な諜報関係の人脈から得られた豊富な知識を一般読者にもわかるように程よく織り込まれており,「CIA」や「スパイ」に反応して手に取られた人にも楽しめるのではないかと思いました。
山田敏弘氏の次の作品にも期待しています。