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57件
風が強く吹いている(新潮文庫)
著者 三浦しをん
箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。(解説・最相葉月)
風が強く吹いている(新潮文庫)
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風が強く吹いている
2010/12/22 18:09
『速さ』ではない『強さ』とは?
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品の前評判として、大学陸上の花形競技である『箱根駅伝』に陸上未経験者も込みで、
たった10人で挑戦すると言う、大まかな粗筋を聞いて、『果してどのようなメンバーが集まるのが?』
非常に興味深く思った。こんな、突拍子もない計画を立てたリーダーは四年の清瀬灰二(ハイジ)。
運命はハイジが偶然、万引き犯として走って来た走(かける)の天才的走力を目撃した事から始まる。
ハイジは自転車で走と並走し、自らの住むアパート、竹青荘(通称アオタケ)へと連れていく。
ハイジと走を含めアオタケの部屋数は九室、住人は全部で十名。駅伝を走るのに必要なギリギリのメンバーだ。
まずは城太郎と、城次郎の双子。縮めてジョータとジョージ。彼らがルームシェアをしてくれたお陰で、
駅伝に必要な頭数が揃ったことになる。火事と間違えられる程のニコチン中毒者が、ニコチャン先輩。
四年のハイジよりも上級生だったはずが、いつの間にか、下の学年になってしまったらしい。
その向かいの部屋に住んでいるのが三年の時点で既に司法試験に合格済みのユキ。
そして、自己鍛練を理由に風呂場の電気を消し入浴するのが、黒人留学生ムサ。
それから、クイズ番組を偏愛する様を揶揄して命名されたキング。キングと行動を共にするのが、
郷里の山奥で『神童』と呼ばれていたらしい神童。変わり者が揃ったアオタケの中でも、
極めつけに変人なのが、自室にうず高く積み上げた漫画の本と共に寝起きし、
走が越してきてから二週間たっても走の存在に気付かないで居た、通称『王子』。
ハイジは、住人全ての前で高らかに、『この十名で箱根駅伝に出場してみせる!』と宣言する。
驚愕するメンバーたちをよそ目に、あの手この手を使い分け、結局メンバー全員から
出場に向けての約束手形を取りつけてみせるのだから凄い!何より、この強烈な魅力を有した十名の存在感が、
圧倒的にリアルであるからこそ、気付けば読み手は、この破天荒とも言える筋書を、
手に汗握って応援する事が出来るのではないかと思う。そう、何よりメンバーの個人差
(走ることがいやでいやでたまらないらしい王子。)等のディテールが念入りに描かれているので、
自然と一人ずつ、メンバーへの愛着が沸くのだ。とは言え、箱根駅伝までの道程は長くて険しい。
何せ、ハイジと走以外は素人達の集まりなのだから。走は最初の記録会で高校時代のチームメイトから
『せいぜい仲良くかけっこしてろよ』と罵声を浴びせられたり、箱根駅伝三連覇中の大学のエース
(ハイジの過去を知っていそう)の走りに、王者の貫禄を見せ付けられたりで、自分の走りを見失ってしまう。
結果として、走の中にある鬱屈した速さのみを求める思いは苛立ちとなって、
アオタケの面々との喧嘩騒ぎを巻き起こす有り様だ。騒ぎの後、走はハイジから、
俺たちは、『強い』と称されることを誉れにして、毎日走るんだ。
と走者としてのターニング・ポイントとなる考え方を教えられる。
そしてチーム・アオタケは結束力を増し、夏を越えて駆けて行く。
このチームの伸び方は見ていて実に清々しい。箱根に向け、駅伝に向けて、
一致団結していく情熱に一点の濁りもないからだ。そして、遂に箱根駅伝本番の日を迎える。
十人で作りあげる巨大なレース、走たち十人のランナーは、どのようなレースを見せてくれるだろうか?
駅伝を走るランナーそれぞれの、息づかいや、各人の思惑等、
レースさながらの臨場感をタップリと味わって下さいませ!
正月の箱根駅伝に興味が出ることうけあいです!!
風が強く吹いている
2009/07/20 21:16
走る姿の美しさ
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:仙人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は、映画よりも、テレビよりも、本を読むほうが、より臨場感を感じます。自然に入っていくものよりも、自分の意思で読まなければ、伝わってこないもの。そちらのほうに、より臨場感を感じます。
この小説は、走ることがテーマです。
走る姿の美しさ。自分で映像を見るよりも、三浦さんの書かれた美しさを、自分の脳の中で、映像化しても、映像化できない美しさ、そこに、わたしはため息をつかされます。
一度、読み始めたら、読むことをやめることができません。
才能に恵まれた天才と普通の人。
どちらも、素晴らしい、そのことを教えてくれます。
こんな素晴らしい小説に出会えた幸福に感謝します。
風が強く吹いている
2016/05/03 10:29
読後にシューズを買ってしまった
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんみつこむすめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白すぎて、一日で一気読みしました。
ここまで早く読めた小説はないと思います。
そして、自分でも走りたくなって、
実際にシューズまで買って、走ってきました。
それくらい影響があります…
あと、この本を読んでから、毎年箱根駅伝を見るようになりました。