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25件
陋巷に在り
著者 酒見賢一
聡明で強い呪術の能力を持ちながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。孔子の最愛の弟子である彼は師に迫る様々な魑魅魍魎や政敵と戦うサイコ・ソルジャーだった……息づまる呪術と呪術の暗闘、政敵陽虎との闘争、影で孔子を護る巫儒の一族。論語に語られた逸話や人物を操りつつ、大胆な発想で謎に包まれた孔子の生涯を描く壮大な歴史長編、第一部。
陋巷に在り13―魯の巻―(新潮文庫)
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陋巷に在り 1 儒の巻
2007/01/08 23:32
儒教は宗教
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
つかみはあまりうまいとは言えないが、50ページあたりから、俄然面白くなる。所々で著者は蘊蓄を語り始める。これが邪魔に感じられる時もある。はっとさせられる時もある。作品としては荒唐無稽な話なのだから、いらないと言えば、いらないのだが、著者としては知っていてやっている無茶だと、言い訳したいのだろう。気持ちはよ〜く分かる。目から鱗的な話もあるので最初は邪魔に感じたが、この巻を読み終わるころには気にならなくなった。(邪魔だと思えば読み飛ばせばいい。時に読まないほうが、話自体を楽しめる。)
さて、この巻を読むことで得られることは大きい。中学・高校時代に学ぶ論語から、儒教のイメージは分からない。たとえば、仏教、キリスト教とかイスラム教を宗教だと思わない人はいない。諸子百家で扱われる際、儒家=儒教は、墨家、法家、兵家と同じように思想家の扱いで、道家=道教よりも宗教的イメージは薄い。しかし、やはり「教」をつけて語られるのは、宗教だからである。現代の日本の仏教を揶揄して、葬式仏教と言うことがあるが、実は儒教式葬式であり、仏教式ではないなど、得られる知識大である。このあたりをもっと知りたくなった人は、『孔子伝』白川静を読むといい。
さて、先程述べたように、50ページあたりから話が面白くなる。中国はもちろん日本でもこのような世界が、千年以上のちまで続いたの。陰陽師安倍清明もこの系譜上にある。より楽しむためには世界史図説があるといいだろう。(本に地図をつけてくれるとよかったのだが、ついていない巻が多い。)図説の紀元前500年ごろの地図を見ながら読むと、時代背景・地理的背景が分かりやすい。
孔子集団の放浪と魯帰還を描く続編が待ち望まれる。
※同著者の『墨攻』が映画化されるようです。この本もまた、オススメです。
陋巷に在り 3 媚の巻
2008/12/14 13:08
魅力的な悪役、敵役が物語をなお一層ひきたてる
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どのような小説でも、SFやファンタジー、大衆小説や中間小説、というものでも、小説というからには、どこかで人間というものを描いているものでなければならないだろう。大衆小説、中間小説と純文学との区別などはいっこうに解らないが。この本は伝奇小説というような分類になるのであろうが、同様である。
強烈な悪役である美女の心理が面白い。なにか複雑微妙な人間心理の綾がある。物語の魅力は主人公だけで作り出せるものではない。魅力的な悪役、敵役が物語をなお一層ひきたてる。奇妙、摩訶不思議な中国古代の巫術、呪術の戦いもおもしろいが、登場人物がそれぞれ魅力的である。
陋巷に在り 2 呪の巻
2008/10/23 20:41
文庫本で十三巻ある。相当楽しめるであろう。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新しい強烈な悪役達が登場し、話が更に面白くなってきた。巫術の内容も、したがって巫術者間の闘争も、高度奇妙化してきている。中国古代の歴史書に断片的に記載されている事項をふまえて、たくましい想像力で創造する超能力あるいは心霊術の戦いと、各登場人物の性格が奇妙に魅力的である。今後どのような展開があるのか、期待に胸がおどる。文庫本で十三巻ある。相当楽しめるであろう。