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アンダークラス ──新たな下層階級の出現
著者 橋本健二
非正規労働者のうち、パート主婦、専門・管理職以外の人々は、日本には約930万人いる。その平均年収はわずか186万円で、その貧困率は高く、女性ではそれが5割に達している。いじめや不登校といった暗い子ども時代を送った人が多く、健康状態がよくないと自覚する人は四人に一人の割合である。これら「アンダークラス」に属する人びとを、若者・中年、女性、高齢者と、それぞれのケースにわけ、調査データをもとにその実態を明らかにする。今後の日本を見据えるうえで、避けては通れない現実がそこにある。
アンダークラス ──新たな下層階級の出現
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アンダークラス 新たな下層階級の出現
2021/06/23 14:28
拝金主義が行き着いた先
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
拝金主義が行き着いた先は、資本主義の負の側面の強化であり、陰湿な搾取構造の深化だった。搾取する側は、今や一握りの資本家ではない。一般労働者も搾取する側に回っているという事実を本著では様々なデータを紐解いて解説している。正規と非正規の溝は広がり続け、アンダークラスという社会階層を生み出した。利権にまみれ、アンダークラスに手を差し伸べようとしない政治の責任はもちろんだが、私たち一人ひとりの心の中に寒々とした風景が広がっているのではないか。先の見えない不安から今の自分の立場を死守したいという願望が、この社会にアンダークラス層を生み出したのではないか。
「アンダークラス層がこのまま放置されるなら、日本社会は間違いなく危機的な状況を迎えるだろう」
「失業者・無業者をくわえれば就業可能人口の二割近くにも達する人々が、不安と苦痛に満ちた人生を送るような社会は明らかに病んだ社会であり、それ自体で社会は危機的な状態にあると言わねばならない。」
「アンダークラスの問題は、他人事ではない。なぜなら「新しい階級社会」の構造が今のままである以上、誰かがアンダークラスにならなければならないのであり、誰がアンダークラスに転落しても不思議ではないからである。いま私たちがそうなっていないのは、ただの偶然にすぎない。」
アンダークラスの問題は、どこか遠くの話ではなく、くらしと地続きの問題なのである。