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侵略戦争 ――歴史事実と歴史認識
著者 著:纐纈厚
日清戦争から十五年戦争にいたるまで、日本を貫いてきた侵略思想とは何だったのか。明治期、西欧に対抗するべく強大国家=覇権国家を建設する過程で形成された帝国主義は、なぜ南京大虐殺や慰安所設置に代表される暴虐を生み出したのか。歴史事実の実証を通じて、自己本位の侵略思想が再生産される構造と体質を明らかにするとともに、歴史認識の共有による「平和的共存関係」への道を探る。
侵略戦争 ――歴史事実と歴史認識
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侵略戦争 歴史事実と歴史認識
2005/11/28 04:14
過ちを繰り返さぬために
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本が起こした,アジア諸国に対する戦争を,「自衛のための戦争」「やむをえない戦争」とし,戦争自体を正当化する主張が,あいもかわらず,見られる。太平洋戦争の中でも,日本が欧米連合国と争った部分の戦争については別な見方も認めるが,対アジア諸国に対し行った部分の戦争に限ればどうみても「侵略戦争」であろう。
戦争の記録については,戦争当事者が発したものも含めて多くの記録が残されている。戦争の過程で日本の軍隊がアジア他国の領土上で,アジア他国の一般国民相手に働いた国際的・人道的な法も慣習も無視した蛮行は,すでに隠しようがない。また,事実として否定しようがない。
それでもなお,かつての日本帝国主義を守護しようとする論調が,一般の人のみならず知識人と呼ばれる人や政治家などからも,後を絶たず出てくるのはなぜであろう。
従来の一般的な見方であった,「侵略戦争=間違った戦争」「自衛戦争=やむをえない戦争」という概念整理から,少し進めて考えてみるべきではないか。
命題Ⅰ.日本がアジア諸国相手に戦争中行った行為は,侵略行為であったか否か。
命題Ⅱ.日本がアジア諸国相手に戦争に至った過程は,やむを得ない止めようの無いものであったか,はては,日本さえその気なら防ぐことが可能なものであったか。
命題Ⅱのところで,欧米やロシアの脅威について議論の余地を残したとしても,命題Ⅰの答えとして,あの戦争行為自体は明らかに侵略行為であり,誤った戦争であったことを最低限認める必要があるのではないか。その国民的合意が無ければ,日本はいつまでたってもアジア諸国と有効な関係は築かれないであろう。
本書は,タイトルがそのまま示すとおり,旧日本帝国のおこした「侵略戦争」を解析する書である。日清・日露から敗戦に至るほぼ50年間にわたる対外的侵略思想,その出現・伸張について,丹念な資料追求により,客観的な解析がなされている。
あの戦争はアジア諸国に対する侵略行為であったことをまず認めるためにも,このような歴史を掘り起こす書は有効である。