赤い風
江戸前期、武士と農民が身分をこえて空前の大開拓に挑む!
川越藩主・柳沢吉保とその懐刀・荻生徂徠。
徳川綱吉の治世下、川越藩の領内では、牛馬のための飼料や堆肥のための草を採取する秣場(まぐさば)での、農民同士の諍いが何十年も絶えなかった。
集団で襲われ、百姓が命を落とす悲劇までおきていた。
そんな中、新たに藩主についた柳沢保明(のちの吉保)は、諍いの場となっている荒涼たる原野を二年で畑地にせよ、という前代未聞の命を下した。
曾根権太夫ら側近の家老らを現地に派遣し農民を指揮させたが、やがて武士と農民の間には軋轢が生じ、二年での完成が危ぶまれていく。
そんな中、保明は懐刀の荻生徂徠を現場に送り込み、事態の打開を試みるが……。
著者畢生の傑作時代長篇!
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紙の本赤い風
2018/10/09 09:43
傑作でした
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
名作とはこの小説のことを言うのではと思ったほどの傑作。
生産する側と消費する側の本音の言い分と対立がこれ程リアルに生で描かれた小説は、これまで読んだ事がなかった気がする。
人物設定がいい。史上有名な柳沢吉保や荻生徂徠などから無名の啓太郎、正蔵たちまでよく描かれているし、登場の出具合が素晴らしい間合いだと思う。
新田開発を百姓と武士が行う。それはよくあることながら、目線と姿勢を互いに同じレベルに合わせながらの事業であるところが素晴らしい。
赤穂事件に端を発した人は何を目的として生きるのかという問いかけも新鮮だ。