電子書籍
極夜行
著者 角幡唯介
ノンフィクション界のトップランナーによる最高傑作。
ヤフーニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞、W受賞!
探検家にとっていまや、世界中どこを探しても“未知の空間”を見つけることは難しい。様々な未知の空間を追い求めて旅をしてきた角幡唯介は、この数年冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇に閉ざされた未知の空間があるからだ。極夜――「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」(本文より)。彼は、そこに行って、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった。その行為はまだ誰も成し遂げていない”未知“の探検といってよかった。
シオラパルクという世界最北の小さな村に暮らす人々と交流し、力を貸してもらい、氷が張るとひとりで数十キロの橇を引いて探検に出た。相棒となる犬を一匹連れて。この文明の時代に、GPSを持たないと決めた探検家は、六分儀という天測により自分の位置を計る道具を用いたため、その実験や犬と自分の食料をあらかじめ数カ所に運んでおくデポ作業など、一年ずつ準備を積み上げていく必要があった。暗闇の中、ブリザードと戦い、食料が不足し、迷子になり……、アクシデントは続いた。果たして4カ月後、極夜が明けた時、彼はひとり太陽を目にして何を感じたのか。足かけ4年にわたるプロジェクトはどういう結末を迎えたのか。
※この電子書籍は2018年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
極夜行
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電子書籍極夜行
2022/09/19 19:19
太陽の無い極夜
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
実は、読むまで、自分は極夜というのは知らなかったのです……。(スミマセン)その極夜の様子や、過ごし方などなど……。コレ、体験しようとしたら、死を覚悟しないとできないんでは……と、はっきり言って、怖くなりました。
紙の本極夜行
2023/12/06 17:41
光のない夜を読書を通じて体験できる、究極の”疑似体験”
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際に経験できない事を疑似体験できるのが読書の醍醐味とするならば、本書はその中で極めて濃厚な疑似体験を得ることができる1冊です。著者は様々な探検を実行し、その体験を著書として発表し続けている第一人者です。その著者が「自分が選んだ生き方としての最高到達点を模索した作品」と位置付ける本書は、北極域の冬季、全く太陽が地平線から登ることのない中を1匹の犬とともに過ごした約80日間の記録です。
日本での日常でさえ、冬になって日が短くなると何となく気が滅入りますし、何日も曇りや雨が続いて日差しが無いと気分がふさぎ込みますよね。それほど太陽というのが人間の精神に与える影響は大きいと言えるのですが、極域の冬はその太陽が全く上らず、さらに月齢によっては月も全く上らないという漆黒の闇となります。その状況では最早、周囲の景色や地形は全く視認できず、自分の体と周囲の空間との境界線までもが分からなくなるほどの闇となります。
「現代システムからの脱却」が探検であると位置づける著者は、現在地の確認にGPSを用いず、昔から使われてきた天測を基に現在地を同定する方法を用いていますが、地形が視認できない中で、天測のみに頼る航法は、相当難易度の高い技術と言えます。
探検後半にはその航法への疑念が生じたり、食料が尽きかけ同伴した犬を食べることまで視野に入れざるを得ない状況にまで追い込まれます。そして数十日ぶりに地平線から登る太陽を目にした時の著者の心理描写は、本書のそれまでの息が詰まるような、厳寒地体験をこれでもかというほど疑似体験してきた読者の心に、命の恵みや人間の無力さとか、”光”のある日常の有難さとか、様々な思いを想起させます。
探検家や登山家は数多くいらっしゃいますが、探検家でかつ作家という稀有な存在の著者だからこそ生み出せる作品だと思います。