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東洋的な見方
著者 著者:鈴木 大拙
「来るべき『世界文化』なるものに対して、われら東洋民族の一員として、それは大いに貢献すべきものをもっておる」--。
アメリカ、イギリスの諸大学で教鞭を執り、直に西洋思想にふれた大拙だからこそ看破できた東洋思想の優れた特性。曰く「世界の至宝」が、二分性の上に成り立つ西洋思想の不備を補い、互いに補完し合うことで、真の世界思想を可能にする。
帰国後に執筆され、大拙自ら「近来自分が到着した思想を代表するもの」という論文十四編すべてを掲載。大拙の思想を最もよく表す最晩年のエッセイ集。
解説・中村元/安藤礼二
【もくじ】
序
東洋思想の不二性
東洋「哲学」について
現代世界と禅の精神
東洋学者の使命
自由・空・只今
このままということ
東洋雑感
「妙」について
人間本来の自由と創造性をのばそう
荘子の一節--機械化と創造性との対立への一つの示唆--
東洋的なるもの--幽玄な民族の心理--
東洋文化の根底にあるもの
近ごろの考え一項
日本人の心
アメリカにおける鈴木大拙博士
--『東洋的な見方』の解説にかえて 中村元
最後の大拙
--『東洋的な見方』文庫版解説 安藤礼二
東洋的な見方
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2020/08/10 10:36
西洋の文化伝統に欠けている考え方が東洋にある。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三分法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は鈴木大拙が、93歳ごろの1960年代前半に発表した小文を集めたもので、西洋の科学技術に支配されている世界にあって、東洋的考え方が必要なのではないかということを西洋的考え方(哲学)と比較しながら訴えている。
ここで、西洋的考え方とは、物が二つに分かれてからの世界を考える仕方である。それに対して東洋は、物のまだ二分していないところから考えはじめる(「東洋思想の不二性」)。そして、西洋の二分性文化には不備があるので、東洋的考え方や感じ方をもり立てることによって二分性文化の不備を補足していかなければならないと主張している。二分性的考え方からは、排他性や自我性という好ましくない性格が生じるが、東洋的考えは、二分性を超越してしかもそれを包含しているからであるという。
また、東洋的考え方の必要性について、次のようにも語られている。今度の東西哲学者間の間で、西洋が合理主義で、東洋は非合理主義だという話が出たが、いずれにしてもよいと、自分は思う。人間はどちらか一つでは生きていけないのだから……なんでも一つにきめてかかろうというのがよくないのだ(「東西雑感」)
本書には、東洋思想の根底に潜んでいるものに哲学的根拠を与える願いをもっていた西田幾多郎について何度か言及されているが、「西田くんのえらいところは、東洋型の上に立って、西洋型を自由に駆使したところにある。」(「近ごろの考え一項」と評価されている。