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4件
O嬢の物語
著者 ポーリーヌ・レアージュ (著) , 渋沢竜彦 (訳)
パリの前衛的な出版社ポーヴェールから一九五四年に刊行された本書は、発表とともにセンセーションを巻き起こし、「ドゥー・マゴ」賞を受賞した。女主人公の魂の告白を通して、自己の肉体の遍歴を回想したこの書物は、人間性の奥底にひそむ非合理な衝動をえぐり出した、真に恐るべき恋愛小説の傑作と評され、多くの批評家によって賞賛された。
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O嬢の物語
2006/03/28 21:21
隷属させられるが故の自由、穢されるが故の美しさ、そして複雑な愛というもの
15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つな - この投稿者のレビュー一覧を見る
ごく普通の若い恋人同士であったOとルネ。ある日、Oはルネに連れ出され、ロワッシーの館へと送り込まれる。裸に剥かれたOは、体の各所に化粧を施され、首輪と腕輪により拘束される。館には妖しげな男たちと彼女と同じような女たちが住まい、女たちの体は昼夜を問わず開かれている。この館では女は物でしかなく、沈黙を強要され、縛られ、鞭打たれる。また、通常使われる部分だけではなく、肛門までをも、ルネだけではなく見知らぬ男性にまで犯される。
これらの事、全てはOにとって屈辱的なことなのか? 必ずしもそうではない。Oはそれほどまでにルネが自分を愛し、ルネが自分を完全に支配していることに、共に酔う。
ロワッシーでの時が終る。事情を知る者共通の奴隷であるという印の指輪を携え、街に戻ってきたOは、既に以前の彼女ではない。一部をのぞいて、普通の生活に戻った彼女に、ルネは兄とも慕うステファン卿を紹介する。しかし、これはただの紹介ではない。敬愛するステファン卿と、Oを共有したいというのだ。灰色の髪をしたイギリス人、ステファン卿は、こうしてOの主人となる。ステファン卿は、ルネのようにOを鞭打つ事も出来ない軟弱な主人ではない。Oはルネではなく、ステファン卿を愛するようになる。
ステファン卿もまたOを愛す。愛するが故に、ステファン卿はアンヌ・マリーの協力を得て、Oに彼個人の奴隷であることを示す刻印を施す。それは下腹部から絶えず重たくぶら下がる鉄環と、尻に施された二度と消す事の出来ない刻印。裸にふくろうの仮面をつけ、エジプトの彫像のような姿となったOは、鉄環に付けられた鎖でもって、パーティーへと引かれていく。ここにOの奴隷としての姿は完成を見る。
ちょっと意外だったのが、Oがとても進歩的な女性だったこと。彼女はモードの世界でカメラを操り、学生時代から男性だけでなく、女性とも奔放な関係を持っていた女性であった。そんな彼女だからこそ、この一連の殆ど屈辱的とも思える出来事も、彼女にとっては単なる屈辱ではなく、かえって、ルネやステファン卿と共に、客観的に「O」という一つの芸術品、美術品を作っているようでもある。であるからして、人によっては恐怖や軽蔑の念しか引き出せない彼女の姿も、彼女にとっては非常に誇らしく、晴れがましいものである。異様な場所に付けられた鉄環も、焼印を押された尻も、蚯蚓腫れが走る腹も、彼女にとってはこの上なく美しいもの。
痛い話、こういった話を汚らわしいと思う人にオススメはしないけれど、これもまた一つの愛の形なのかもしれない。見知らぬ世界に酔う一冊。
O嬢の物語
2001/07/01 09:45
レジへ持っていくのに勇気がいる一冊
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:川原 いづみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説を初めて読んだのは、10歳の時でした。内容はほとんど理解できなかったものの、これは大人の小説だという事ははっきりとわかりました。が、ゆえに親の本棚から引き出してこっそりと読んでいたのですけれども。
やはりこれを読むにはちょっと勇気がいるかな、と。淡々と抑えた表現にはなってますが、内容はやっぱり過激です。ある女性が、恋人に連れていかれた館で公共物として性の奴隷になる…というお話。こんな状況になれば普通は激しく抵抗するのでしょうが、O嬢はそれをあっさりと受け入れてしまいます。自分がない人間なのかな、と思いながら読みすすめるとさにあらず。あらら?という感じ。そのギャップがどうしても理解できないんですが…。無理やり人間でなく、社会に置き換えてみればなんとなくわかるような。それにしても…ちょっと怖いです。簡単にSM小説だとは言えないような気がします。<初読:99/04/27>
O嬢の物語
2001/09/02 18:47
O嬢の物語
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
訳者のファンで、一時期毎日のように本を買って読んでいた頃に、この本に出会いました。
なかなか難しい内容です。恋人だと思っていた人に奴隷にされて、いろいろな男につかえさせられる。1対1なら、まだ信頼関係に基づいた上での行為と納得できる糸口があるけれど、これが複数で、しかも全然顔も知らないような男に奴隷扱いされるのはどうなんだろう…??