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2件
うつろ舟
著者 渋沢竜彦 (著)
常陸の国はらどまりの浜に流れついたガラス張りの〈うつろ舟〉。そのなかには、金髪碧眼の若い女人が、一個の筥とともに閉じ込められていた。そして繰りひろげられる少年との夢幻的な交歓―古典に題材をとりながらもそれを自由自在に組み換え、さらに美しくも妖しい一つの〈球体幻想〉として結晶させた表題作のほか、珠玉の八編。澁澤龍彦、晩年の代表作。
うつろ舟
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うつろ舟
2004/05/27 02:26
しぶさわ丸夢の彼方へ
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『高丘親王航海記』の夢幻譚に陶然とさせられてからしばらく、そのうちにきっと読もうと思っていた澁澤龍彦さんの『うつろ舟』。本棚のガラス越しに、「そろそろね、読んでみて」と、本に呼ばれた気がした。誘われるままに手にとって、読み始めた。
日本の古(いにしえ)の話や、中国の怪異譚『聊斎志異』に題材をとり、自由にイメージをふくらませた話が全部で八つ。順に、「護法」「魚鱗記」「花妖記」「髑髏盃」「菊燈台」「髪切り」「うつろ舟」「ダイダロス」の短編が収められている。
人魚や魚、蟹と舟など、水にまつわる話がいくつか収められていたからだろう。この作品集に、水の魔法が強く働いているのを感じた。「魚鱗記」「菊燈台」「うつろ舟」「ダイダロス」の各作品。とりわけ心惹かれたのが、「うつろ舟」と「ダイダロス」の二篇。
諸行無常
是正滅法
生滅滅已
寂滅為楽
時空を超えて、この四行の言葉がさすらい、鳴り響いている「うつろ舟」の物語。
自分たちの首をお手玉のようにして投げ合う男と女。その一場面を読んで、あたかも奇術師の手品を目の当たりにしている心持ちになった。『聊斎志異』の中の「偸桃」の話に、「うひゃっ! なんかいいね、この掌編は」と感じた、その時の感触に通じるワンシーン。思わず見とれてしまった。
海辺の砂上で朽ち果てていく船を舞台にした、作品集の掉尾を飾る「ダイダロス」の物語も素晴らしい。
鎮座した大船が、作者の空想の翼に乗って、何処とも知れず滑って行くかのよう。鸚鵡(おうむ)と絵の中の美女が喧嘩する場面からラストまで、一場の夢の如き話に魅了された。
夢幻の境に心を遊ばせ、自由に話を織り上げていく
マエストロ Tatsuhiko Shibusawa。
きらめく銀のタクトを一閃、物語ははじまる……
2018/08/30 19:32
この作家さんの
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TORA - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作家さんの本ははじめて読みました
小説家のかたにこんなこと言うのも
陳腐ですが、想像力が凄いですね。