電子書籍
屋根屋
著者 村田喜代子 (著)
雨漏りのする屋根の修繕にやってきた工務店の男は永瀬といった。木訥な大男で、仕事ぶりは堅実。彼は妻の死から神経を病み、その治療として夢日記を付けている。永瀬屋根屋によれば、トレーニングによって、誰でも自在に夢を見ることができるという。「奥さんが上手に夢を見ることが出来るごとなったら、私がそのうち素晴らしか所に案内ばしましょう」。以来、二人は夢の中で、法隆寺やフランスの大聖堂へと出かけるのだった。
屋根屋
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本屋根屋
2015/08/24 20:39
一見荒唐無稽な設定がうまく生かされている
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとも不思議な話。屋根の修理に来た男の人と、施工主の奥さんが夢の中で逢瀬を繰り広げる。語り手である奥さんは屋根にも建築にも関わりがないのになぜか屋根の上にのぼりたいという強い希求を持った人で、その気持ちが夢への扉を開けたともいえる。もともと一心にその景色を思い描くことでその場所に行けるという設定自体非現実的だし、ましてやふたりが夢の中で落ち合うなんて荒唐無稽に近い話なのに、建築の細かい知識を間に差し挟まれつつ描かれるうちに、何だかそれがあり得ることのように思えてくる。そう思わせる書き方がうまい。夢の中で旅をするというふわふわした設定のわりに、語り手は妙にさばけた性格で、それがうまく調和しているのも特徴的。結末も納得のいくものであり、かつ余韻があった。