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10件
箱の中
著者 木原音瀬
堂野崇文は痴漢と間違われて逮捕されるが、冤罪を訴え最高裁まで争ったため、実刑判決を受けてしまう。入れられた雑居房は、喜多川圭や芝、柿崎、三橋といった殺人や詐欺を犯した癖のある男たちと一緒で、堂野にはとうてい馴染めなかった。そんな中、「自分も冤罪だ」という三橋に堂野は心を開くようになるが…。
箱の中 【講談社版】
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2016/05/08 23:57
文庫版のメリット
28人中、27人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なす - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品はBLにおけるお約束の展開、萌え、非日常などエンタメ要素のみを求めておられる方には受け付けないかと思います。こうして一般書としても刊行されたことが示している通り、BLというジャンルで括るにはあまりに人間臭く、文学的で、お決まりのロマンティックさはありません。
私も当初、BLにはエンタメ性だけを求めていたため、予備知識なく初木原さん作品「熱砂と月のマジュヌーン」を読んで、ひたすら甘さが無く辛く重い展開ばかりだった為、ある意味トラウマとなり「苦手な作家さん」というイメージを持ってしまっていました。
しかし、この「箱の中」を読んでからは自分の認識の甘さに気付きました。木原さんはそんな定石の枠に留まらない作家さんなのだと。
本作品はBLという括りではなく、人間の心理、本質を描く中に同性愛があるというか、それを裏付けするために同性愛が必要という風に思いました。
文章力がなく形容できないのですが、読後は心の中を嵐が過ぎ去ったような感じで、しばらく呆然としました。
これほど心を持っていかれる作品は初めてで、本物の名作だと思いました。
さて、本作品はBLノベルス版とこの一般向けの講談社文庫版の2パターンで刊行されています。
私が感じたこの講談社文庫版を購入するメリット・デメリットについてまとめました。
メリット:
・ノベルス版「箱の中」「檻の外」の大部分が一冊にまとまっている
・三浦しをんさんの素晴らしい解説が読める
・挿絵がないのでイメージが邪魔されない、小説としてより硬く重い感じで読める
・文庫として外でも読みやすい
デメリット:
・ノベルス版収録話(後日話)が無い!!
・草間さかえさんの素敵な絵が無い
私はノベルス版の存在しかしらず、ネットで誤ってこちらの講談社文庫版を購入し、後から色々と違いを知りました。読了後はもちろん、「ノベルス版に後日談があるなんて…!!」と、今からノベルス版も購入しなければ、という状況になっております。ですので最後までしっかり見届けたい方は、三冊揃えないのでしたら是非ノベルス版を選択される方が良いと思います。ただ、こちらの文庫版もより小説らしく、重く凄みがあり、私は好きです。
この名作に出会えて良かったです。
今まで敬遠していた木原さん作品ですが、少し覚悟をもって、読んでいきたいと思います。
箱の中
2012/09/16 09:45
疲れた…
15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロンパ3世 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に本を読んで疲れたなと思った。
他人の人生を覗いて、追体験をしたかのようだ。
やる瀬ない。セツナイ。 でも、幸せなような気もする。
BLというジャンルに飽きて、その手の本を手に取ることはなくなったが、
木原さんのこの本の続きは講談社文庫が発行したら読むだろうと思う。
いや、是非読んでみたいと心の底から思った。
箱の中
2017/05/30 14:26
整合性
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:スグル - この投稿者のレビュー一覧を見る
痛い。胸がどうしようもなく痛い。
こんなにはっきりと人間の赤黒くてべったりとした感情を表現したBLなんて読んだことない。
これはBLなんだろうか。もとがBLレーベルとはいえこんなに現代の文学として素晴らしい書物はないんじゃないか。
伏線が多すぎてどこを説明してもネタバレになってしまいそうで、興奮してるということを伝えることしかできない。
でも、人間は愛とか恋とか、そんな整合性の取れた感情だけで生きていられるのか?ただ言葉という枠に関係や自分をはめ込んで生きてるのではないか?と認識を改めさせられる本だということは言える。
何だこの本。何だこの高揚感。とにかく読んでくれ。