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2004/01/28 03:16
五感のすべてを働かせて、いまの自分のすべてを、縛られない自由な心で表現してほしい。僕が最後に言いたいのはそれだけだ。「自分らしく」。いまのきみたちには、きっと、それができるから。
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投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕が小学生に国語を教えることの原点になった本である。そして、子どもたちとの関わりのなかで大きな刺激を受け、それを不完全ではありながらも、彼(女)達にフィードバックすることができるような存在になるべく、さりげなく、そっと僕の背中を押してくれた本である。
石原千秋さんの「秘伝 中学入試国語読解法」(これも一部の子どもたちにはとても評判がよい。少々高度ではあるけれど)、斎藤孝さんの「理想の国語教科書」(それにしても斎藤さんは最近、本を出しすぎなんじゃないか?)、日能研の「説明文&物語文ランキング」(「選曲」が素晴らしい)など、小学生向けの国語のテキストには、大人が読んでも大いに刺激を受ける本が少なくない。
そんななかで、僕のFavorite(たぶん僕の生徒たちにとってもそうだと思う)がこの本、「国語のできる子どもを育てる」である。で、引用をひとつ……
<文化とか常識とかことばを忘れてしまった時、私たちに残るものは、「いま、ここ」に存在している身体です。その身体の五感を働かせて周囲の環境に耳を澄ませてみましょう。すると、私たちはなお、溢れるばかりの豊かな情報に取り囲まれていることに気づくはずです。
なぜでしょうか。私たちの身体とそこに埋め込まれている五感こそが、情報の源だからであり、生きているかぎり感覚が震えているからです。そして環境の中で新しく生まれ変わったように、その身体の牢獄を脱出し、世界に橋をかけるようにして書いてみましょう。そこに新鮮な言葉とコミュニケーションと情報が生まれてくるのです。>
こんなお堅い感じ(それとも、熱すぎる感じ?)の一節でさえも、たとえば「智恵子抄」のなかの<あどけない話>と並べたりすると、なんだか、とっても響いている感じがするのである。
智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
(中略)
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
今年もまた二月一日がやってくる。僕の五人の生徒たちは、それぞれに、ひとつの「闘い」のようなものを体験する。不安げな顔や、少しばかり紅潮した顔、うつむき加減のカタい顔をして。
荒川洋治さんは言う。「この国が失っているものは、心である前に、まずは言葉なのだ」。でも、大丈夫。きみたちの心は、そして心を通らず現れる「慈愛」の笑顔は、きっと世界を、たとえほんの少しだけでも動かす可能性を秘めているから。
……どうにも「書評文」ではなくなってしまっている感じである。でも、僕という人間を動かし、そして僕との関わりを(たぶん)楽しんでくれている子どもたちを動かしてくれた本。そんなわけで、子どもとのコミュニケーションがうまくいかずに悩んでいたりする人には、とにかくオススメである。そんな悩める大人たちには、子どもたちのためにも是非読んでみてほしい。
「あのころ、二艘のけなげな船は、同じ港で同じ陽をあびて、肩を並べて静かに横たわっていた。まるでもう目的地についたかのように、目的地がひとつであったかのように見えた。しかし、やがて抗しがたい使命のよびかけにうながされて、わたしたちは再び異なる海へ……」(ニーチェ)
2016/05/14 10:39
子どもの国語力を高めるための実践本です!
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
子どもの読み書き能力を向上させたいとはどの親にも共通の悩みです。しかし、現代の子どもの国語力はどんどんと落ちてきているという統計的報告もあり、心配している保護者の方々は多いと思います。本書は、そうした方々のために、子どもの読み書き能力を高めるための工夫や本を好きになるこつなど、教育実践における数々の提案や示唆が盛り込まれています。小さなお子さんをおもちの保護者の方々、また教育関係者の方々にはぜひとも読んでいただきたい良書です。
2000/08/11 11:35
『国語のできる子供を育てる』ことができる大人を育てる本
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松山真之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■ <ワン・チョット>
「学校時代はすぐ終わり、テストに悩まされたり勉強しろと言われたりすることはなくなる。それからが、本当に言葉を使って生きる、テスト ではない実人生の本番が始まる。その時に使うことばの質が、その人の人生とその世界の質を決めていく。」
■ <引き続き>
私達にとって「書くこと」「読むこと」はいったいどんな意味を持つのか、子供が育っていく過程でその本質を外すことなく育んでいくにはどうすればいいのか・・・そんなテーマで書かれた本である。
我が子の教育を真剣に考えない親はいないはずなのに、なぜか本質を外してしまっているような・・・この時代に、読むこと書くことと生きることの係わりを鋭く考察した本だ。
「本を読まない、作文が書けないといった失語的状況」を憂慮しながら、一人の親として、また国語教育そのものに直接対峙する教育者として、読む力、書く力を伸ばす実践的な方法と考え方を展開する。そこには、考える人間、創造する人間を育むための深い洞察と信念が伺える。国語のテストでよい点をとるためのノウハウといった薄ッペラな内容ではない。言葉というツールを通じた、人生の哲学でもある。
本書には、作文上達法や読書の方法、おすすめの子供の本など実践的な内容もあるが、もっと深層の考察=読むこと、書くことが生きること考えることとどう係わるのか=というところに価値がある。
本書は、国語のできる子供を育てるための実践的ハウツウの本はなく、『国語のできる子供を育てる』ことができる大人を育てる本・・・なのだ。