電子書籍
海将
著者 白石一郎 (著)
堺の薬問屋・小西隆佐は、まだ信長の家臣の1人にすぎない羽柴秀吉に己と一族の将来を賭ける。時は天正、西国の毛利家に対抗するための要となる備前・宇喜多家へ、隆佐は手塩にかけて育て跡継ぎと考えていた18歳の弥九郎を送り込む。わずか10数年後に24万石大名となる小西行長の若かりし日を描いた傑作長編(講談社文庫)。
海将(上)
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電子書籍海将(上)
2023/08/09 07:40
宇喜多直家の存在感
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
小西行長といえば、関ヶ原の戦いで破れ斬首された との印象しかないがなるほどこのような生い立ちだったんだ。記録が殆ど残っていないため、作者が自由に人物を創造できる。そのため やや理想的すぎる姿になってしまってかえってつまらない。対象的に謀将として有名な宇喜多直家の存在感は実にしっかりと出ている。同じ宇喜多直家を描いた、「宇喜多の捨て嫁」木下昌輝との対比も面白い。すぐに難破する欠陥品とも言える和船の詳細もまた面白い。
紙の本海将 下
2002/07/07 22:36
人生の選択
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばんばん - この投稿者のレビュー一覧を見る
羽柴秀吉、後の豊臣秀吉に早くから人生をかけた小西行長、その父隆佐のコンビは、秀吉の神がかり的な出世につられ、ぐんぐんと力を発揮していく。優れた主君の下で、力を認められ、思う存分力を発揮できるというのがいかに気持ちのいいことか。なにも、想像してみなくても、自分の仕事を振り返ってみても容易なことであろう。ただし、その大きな成功が現実なものになるにつれ、暗い影がさしはじめる。理想的主君だった秀吉の変化、戦争を終わらせるはずだった国内戦争の終結が外国にまでくりだそうとする果てしない戦争へ、キリシタンへの弾圧、次々とおそいかかる難題は少しずつ見え始め、その中で栄華の頂点である24万石の大大名への昇進を受ける。彼はその絶頂期に多くの難題を抱えるのだ。そしてこの本は、その選択をなさずに終わる。
歴史を振り返る我々は、この小説がそこで終わっても、その続きを史実ということで知ることが出来る。そのとき、上巻での宇喜多直家の言葉を、ゆっくりとかみしめる必要がありそうだ。
紙の本海将 上
2002/07/07 22:35
小西行長という男の登場
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投稿者:ばんばん - この投稿者のレビュー一覧を見る
関ヶ原の合戦で、西軍は負けた。そのため、東軍に属した大名たちに比べ、西軍に属した武将のことは、あまり伝わっていない。その中でも、石田三成はじめ文知派中心の西軍の中で、猛将として知られ、領国肥後でも見事な治世を見せた小西行長のことは、なかなか耳に入ってこない。商人の子であり、宇喜多家とかほどの関わりを持った人物とは全然知らなかった。
上巻では、商人だった主人公が、武士として認められ、生きていく様が描かれているが、中でも印象的なのは宇喜多直家との出会いだ。暗殺やだまし討ちでとかく評判の悪い直家だが、その考え方である、合戦などなにも立派なことではない。人が死なずに解決するならば、それにこしたことはないという一貫した考え方は、日本人の美学的なものにはそぐわないかもしれないが、ある種の真実だ。それを主人公がどう受け止めるのか。それは後半生に見事にかかってくる宿題なのだ。