- みんなの評価
23件
NO.6
著者 あさのあつこ
2013年の未来都市《NO.6》。人類の理想を実現した街で、2歳の時から最高ランクのエリートとして育てられた紫苑は、12歳の誕生日の夜、「ネズミ」と名乗る少年に出会ってから運命が急転回。どうしてあの夜、ぼくは窓を開けてしまったんだろう? 飢えることも、嘆くことも、戦いも知らずに済んだのに……。「わたしはNO.6という物語の中で、生きる希望とやらを掴んでいけるのだろうか」――あさのあつこ
NO.6 beyond〔ナンバーシックス・ビヨンド〕
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
NO.6 #1
2007/08/19 09:22
未来都市<NO.6>を舞台に語られる、世界の絶望と希望
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
2013年。何もかもが完璧に管理された清潔で平和で穏やかな未来都市<NO.6>でエリートになるべき人間として養育されていた少年・紫苑は、ある日逃亡犯として追われる少年・ネズミを助ける。
そのことでエリートコースから脱落して一般市民としての生活になじんだのも束の間、数年後、変死体を発見したことから今度は犯罪者として追われることに。ネズミに助けられて<NO.6>を脱出した紫苑が目にした世界の姿は――
2巻まで読み終えました。
理想郷として整然と管理された未来都市の欺瞞と、それを知る少年たちの成長と友情の物語になりそうな予感。もとは子ども向けのお話だけあって、文章も平易で読みやすいです。『バッテリー』の方が大人向けな文章に思えました。
こういう、未来の管理社会に対して反旗を翻すお話というのは、いまとなってはありふれていますし、珍しくもないですね。でもこの『NO.6』がおもしろいと思えるのは、設定はありきたりでも、そこで描かれる紫苑とネズミのやり取りや姿が魅力的だから。純粋で好奇心旺盛で、吸収力もあるから成長も速いクセに変なところで抜けている。でもどこまでもまっすぐで、迷わず人の懐に飛び込んでいくような紫苑。反対に警戒心が強く、<NO.6>に対して強い憎悪を燃やし、生きるためには全てを捨てろと言い放ちながらも、過去に見返りなく自分を救ってくれた紫苑を捨てられないネズミ。
この二人の吸引力と、ありきたりとはいえ好きな設定に引きずられて、ぐいぐい読み進めることができました。3巻もこれから読む予定。
願わくば、今後あさのさんがリアルな世界に肉薄してくれますように(この著者なのであまり心配はしていませんが)。
蛇足ながら、文庫版にする際、単行本の2冊分をまとめて1冊の文庫にしてもよかったんじゃなかろうか? 文庫としてはかなり薄い。2冊まとめて丁度いいくらいに思えるのですが。
NO.6 #1
2011/07/17 10:43
あさのあつこの別の顔ー「神話」を予感させる近未来ディストピア小説
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あさのあつこ、といえばまず『パッテリー』だろう。
もともと児童文学として書かれたもので、野間児童文芸賞を受賞しているが、野球少年たちの野球をする姿だけでなく、その人生、その人間を掘り下げて見せて、大人にも訴え大ヒットした。映画化された際には、作家本人もさりげなくチョイ役で出演もしている。これで名を売ったというより、事実上これがデビューといえる。
その後創作の幅を広げて、違ったジャンルの小説も書き出しているのは知っていた。たとえば幻想、ホラーの要素もつ『ぬばたま』(2008)。だが、旺盛な創作意欲を持つこの作者の場合は、スポーツものからほかに転じたというよりも、もともといろんなジャンルを書ける、かつ書きたい作家とみなすのが正しいのだろう。調べてみれば時代小説なども書いている。
そのあさのあつこにこんな近未来SFがあったのだった。私が気が付いたのはごく最近だが、なんと第1巻は2003年に既に発行されているではないか。そして書き継がれてきた長編の最終巻が、ごく最近、6月に刊行されたばかりらしい。
これは面白い。『バッテリー』がそうであったように、一応子供(ヤングアダルト)向けのジャンルとして書かれていても、大人も何の違和感もなく読めて楽しめる小説である。それでいて若者の感覚をしっかり捉えて、みずみずしい感受性でもって訴えかけてくるのが心にくい。
内容的には、あさのあつこ版『1984』というところか。つまり近未来に設定したディストピア小説。「No.6」というのは一見理想的に管理された未来都市の名前だが、実はそれが…というような展開らしい。ありがちといえばありがちな設定で、この第1巻の段階ではその点でまだとくにユニークなものは感じられないし、あるとしてもかすかなものだ。それでも、持ち前の筆力で読ませる。これだけの思い切った設定で面白く読ませるというのはやはり才能だろう。
終わりごろになると、テーマ的なものもかなりはっきりしてくる。それもありきたりといえばありきたりなものだが、そこにある倫理的な一途さは『バッテリー』にも当然あったし、この作家のベースを成す部分であるのは間違いない。
主人公である二人の少年の出会いはまず冒頭にあって、そして終わり近くでも回想として再現される。最初はそれほど特別なものとも意識されなかったこの場面は、ストーリーの展開を経たうえであらためて蘇ると、鮮やかな詩的イメージとして浮かび上がる。そこには何か神話的とすら呼びたいようなある種の象徴性が感じられるのである。やはりこの作家、ただものではない。次巻へのつなぎ方も巧みで、この先が大いに愉しみだ。
2016/01/10 21:01
予想はしていたけれど…
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さきん - この投稿者のレビュー一覧を見る
No.6短編集。本編でも、あちらこちらにちりばめられていた不穏な気配が更に濃厚になった。
それぞれのお話のラスト、空に背をむけた紫苑と空を仰ぐネズミ。これからの二人を暗示しているのかもしれないなぁ。
本当の意味で大人になっていくであろう二人が、どんな世界を作り生きていくのか…読みたいような読みたくないような…。