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西部諸国シアター 完結
著者 著者:山本 弘,著者:グループSNE,イラスト:田口 順子
西部諸国は冒険の坩堝。いつもどこかで事件が起きていた…。「新しき街」ラバンの小都市に、巨大なドラゴン型の飛行物体が落下。この正体はいったい?(表題作「帰ってきたドラゴン」)。「終わりなき夏の街」ガルガライスで起きた、漁師行方不明事件。そして怪物に襲われた金髪の少女。彼女と事件の関係は?ガルガライスに海から危機が迫っていた!(「海魔の女王」)。西部諸国を舞台とする幾多の物語を、読者からのハガキをもとに、鬼才山本弘が綴る西部諸国シアター。上記2作品の他、書き下ろし作品「狂える館の復讐」を同時収録。また特別付録の「五分間シアター」では、未採用作品10本をまとめて一挙公開だ。
西部諸国シアター1 帰ってきたドラゴン
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2001/09/02 14:01
「魂の絆」は佳作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:賢者の石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西部諸国シアターはこの第三巻目で完結である。さて、今回もっとも印象深かったのは表題作「鏡の国の戦争」ではなく、ある盗賊と女魔術師の交流を描いた「魂の絆」だ。
実によかった。ストーリーはもとより、ふたりの意志が結ばれるアイデアも秀逸。最後まで予断を許さぬ展開で、ラストシーンでは読者へのカタルシスも忘れていない。ソードワールド短編としては、私にとって五本の指に入る佳作である。
あえてこの書評ではこの短編のくわしいあらすじやキャラクター構成など語らない。ぜひとも実際にこの本を手にとって、あなた自身の目でたしかめてほしいのだ。
2001/09/02 13:44
サーラとデル、数多くある未来のひとつは
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:賢者の石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の一押しは「時の果てまでこの歌を」。この作品は、サーラの冒険シリーズの外伝にあたり、ある男(何者かは読んでたしかめよう)の視点から、サーラやデルの将来をタイムトラベル形式で追っていく、というものである。
この作品で印象的だったのは、デルが暗黒神の使徒して邪悪になってしまった、というところである。
彼女は現在、暗黒神を信仰しながらも善良な人間として生活を営んでいる。しかしそれは、彼女の想いがサーラという真っ直ぐな少年に向いているからであって、ひとたび負の方面へ向いてしまうと…邪悪に堕してしまうのに、何の歯止めもない危険性をはらんでいる。
この外伝で語られるサーラとデルの物語は悲劇的で辛いものだが、それは現在から数多く分岐してゆく未来のひとつに過ぎない。どうか、本編のサーラ・シリーズではこれよりも幸福な結末にならんことを願う。
2001/09/02 13:24
「例外」だからこそ面白いのは分かるが…
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:賢者の石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西部諸国で起こる物語を、読者からのハガキをもとに山本弘が綴った短編集。表題作「帰ってきたドラゴン」で見られるように、執筆者である山本弘は既存の価値観を物語内で逆転するのが好きなようだ。この作品では人々のために尽くすダークエルフが登場するのだが、そういった例外がフォーセリアという幻想世界においてどれだけ希少なのか、読者は汲み取ってくれるかどうか心配だ。
あまり公式の作品でこのような「例外」を出すのはどうかと思う。たしかに「例外」だからこそ物語を面白くできるのだし、読者の固定観念に刺激を与えることができるのだが、度が過ぎるとそれが「当たり前」になってしまって、いずれそれが「価値観の逆転」ではなく、単なる常識に堕してしまうように思える。
やはり、確固とした価値基準は必要なのだ。その上で「こういう例外もいるが、それは世界観的にみても難しい」という形で提示していく姿勢こそが大切ではないか、と考える。