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狼と香辛料
行商人のロレンスは、馬車の荷台で麦の束に埋もれて眠る少女を見つける。 少女は狼の耳と尾を持つ美しい娘で、自らを豊作を司る神・ホロと名乗った。 「わっちは神と呼ばれたがよ。わっちゃあ、ホロ以外の何者でもない」 まるで経験を積んだ大人のような話し方で、ロレンスを巧みに翻弄する少女。 「お前は、本当に神なのか?」 最初は半信半疑だったロレンスも、やがてホロが旅に同行することを承諾する。 そんなふたりの旅に、思いがけない儲け話が舞い込んでくる。 近い将来、ある銀貨が値上がりするという噂。 疑いながらも、ロレンスはその儲け話に乗るのだが……。
狼と香辛料XXIV Spring LogVII
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狼と香辛料 17 Epilogue
2011/10/04 21:15
幸福な物語の幸福な終わり
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
狼と香辛料の、最後の短編集。
いやあ幸せな物語だった。
内容ももちろんなんだけど、なんというか、この物語を取り巻く全てが幸せだったといえるんじゃないかな。
でもってその幸せのおすそ分けをいただけるというか、浸ることができた物語。
幸福というものは、個々によって違うものだ。
ロレンスの求める幸せと、ホロの求める幸せも、つきつめれば別のものなのだろう。が、互いがそこに接点を見出し、それをはぐくむと決めた。
二人で生きるということは、多分そういうことなのだ。
そして、物語を彩った人物たちのそれぞれの幸せ。
誰もが、自立していて、自分の足でしっかり立ってるっていうのがいいなと思うのである。
にしても、砦を守っていた老騎士の物語が素敵です。
格好いい大人が描けるのって、最高にいいなと思うのです。
狼と香辛料 9 対立の町 下
2008/09/23 20:21
ファンタジーを超えたリアル
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「狼の骨」の伝説を追ってきた町では、イッカクが水揚げされる。それは、長年土地を巡ってあらそってきた町を根底からひっくりかえすきっかけになりえるものだった。
行商人ロレンスと賢狼ホロの旅「対立の町」の完結編。
このシリーズ、元々「魔法も剣もないファンタジー」といわれている。そして、ファンタジーたらしめているのが若い娘の姿だけど実は狼だというホロの存在。しかしながら、作者はその存在に依存することなく、この経済ファンタジーを成立させている。
もう天晴れとしか言いようがない。
女性行商人エーブと、商業組合のかけひきにいやおうなしに引き込まれるけれど、実際には何の力もないロレンス。その力がないこと、存在の小ささを、真っ向から描いている潔さ。
主人公の小ささを、これほど前向きに描いた小説があっただろうか。
自分の器を知ることは、前に進むこと、そしてそれをどう踏み出すかということにとても必要なことだと思う。
ロレンスは、それをホロや、出会う様々な人から学んでいる。
ホロの活躍が少ないので、ケレン味が足りない感じもしないわけでもないが、ここはやはりきっと一回り大きくなったロレンスの成長を堪能したい。
狼と香辛料 16 太陽の金貨 下
2011/02/16 21:18
感動の最終巻 ホント感動しましたm(__)m
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済ファンタジー「狼と香辛料」シリーズの最終巻。
新しい自由な町、レスコで自分の店を持つことを決めたロレンス。
けれど、彼は町を支配するデパウ商会の内紛に巻き込まれてしまう。
デパウ商会の帳簿を預かっているというヒルデが、想像を超えて格好よいです。
そして、偉大な商人の機知や、修羅場を乗り越えてきた傭兵たちの強さに、感嘆するロレンスの素直さが心憎い。
離ればなれになっていたロレンスとホロの再会は、ほほえましい。というか、胸が熱くなる。
「一人であることをやめる」ことの意味の深さというか、大切さがしみてくる。
ホロがヒルデに届けたものの意味が、本作のタイトルの意味に、泣けてくる。
人は、希望なしには、光なしには生きていけないのだ。
たとえ、金のことしか考えない商人でも、それなしでは、儲けることが意味をなさないのだろう。
そして、それはきっと「愛」に似ている。
孤独に麦畑にいたホロが、一人で馬車で行商していたロレンスが、「愛」を見出す話であったとまとめてしまえば陳腐なのかもしれないが、世の中にこれ以上尊いものがあるだろうか。