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チェンライ・エクスプレス
人造人間の少年は、事故で失った人間の心を取り戻したかった……。 出来損ないの魔女は、恋の魔法を覚えて少年の心を奪いたかった……。 これは、チェンライ王国に蠢く欠点だらけな人外による欲望物語。 死神はカマを奪いかえしたかった。狼男は金と宝石を手にしたかった。 人魚は黒歴史を隠し通したかった。吸血鬼はある女の血が欲しかった。 化け兎は愛する男を殺したかった。アンデッドはずっと死にたかった。 謎の男は皆の願いを叶えたかった。 ── 誰かの願いが叶う満月の夜、切ない感動のドミノが傾き始める。 人ならぬ者が織りなす新機軸の極東ファンタジー、必読!
チェンライ・エクスプレス
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2015/09/28 11:09
悪党に拾われた童女の運命は?
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェンライ王国ルアンピー・ジュニアハイに通うマナは、魔女狩り集団「ヤーコプ団」から助けてくれたトウアに恋をした。そのトウアは、三年前のチェンライ・エクスプレス脱線事故で、彼女と同様に親を失い、そして自分自身の心も失っていたのだ。そんなトウアに心を取り戻してもらうべく、マナはトウアを巨大テーマパーク「ハートランド」のデートに誘う。
三年前のチェンライ・エクスプレス脱線事故で親を失ったチャオ・カサンドラは、犯罪組織の片棒を担ぐ警察本部長レチギュア・グッドマンにより売り飛ばされる寸前に、ジェリコ・ギャロップの運転する車に飛び乗ることで窮地から脱する。彼女は予知能力者だった。
またしてもなにやら企むジンノ・リョウイチは、死神ケイやリ・リ・メイに仕事を依頼し、騒動を巻き起こしていく。そしてその中心となるハートランドには、恋人ロウを助けるために悪事に荷担するメデューサの能力を持つ女性マーガレット・アンリがいた。
ギャンブル好きの悪党のもとに転がり込むことになった、両親を亡くし他人から裏切られ、海外に売り飛ばされることにまでなった少女との交流を中心としつつ、ハートランドを舞台にして行われている巨大犯罪に翻弄された恋人たちの運命と、前巻でも登場した人物たちの関わりを描いている。
本作の登場人物の多くは、三年前の事故で肉親を失い、天涯孤独の身の上となっている。そんな彼ら彼女らが、新たなつながりを見いだし、生きる希望を取り戻していくというのが、通底するテーマなのだろう。
2015/09/17 11:03
チェンライ・エクスプレス
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェンライ王国の中心部は、様々な文化が入り混じる街だ。そしてそれは、住民たちにも言えること。この物語は、数多くの普通の人間たちに混じって生きる、極めて数少ない人外たちにスポットを当てた、まるで人外しか住んでいないかと思えるような群像劇となっている。
ルアンピー・ジュニアハイに通うトウアは、クラスメイト達からいじめられている。なぜなら彼の反応が普通とは違うからだ。しかしそれを本人は気にしていない。彼はそれを感じる心がないからだ。
そんなトウアに恋するマナは、魔女貴族のマジョリーナ家に奉公する、魔法が使えない魔女だ。令嬢のベアトリにいじめられながら使いに出され、魔女狩り集団「ヤーコプ団」に殺されそうになったところを、トウアと彼の知り合いのDJケイに助けられる。
そんなケイは、ジンノ・リョウイチから探し物のカマの在り処を聞き、そこに向かう。彼は死神なのにカマを失くしてしまったのだ。だがその回収は失敗し、再びジンノからジャックポットというカジノの場所を教えられる。
そのカジノでは、「チーム・カモーイ」の博打打ちジェリコ・ギャロップが、ディーラーのイアン・キッチナーと組んでひと儲けしようとしていた。だがそのカジノのオーナーのチェスタ・フィッツジェラルド・タマが、キャバクラ「マーメイド」のリ・リ・メイからその情報を教えられ、計画を阻止しようと動き出す。
一方、最近人気のモデルの未菲は、カメラマンのシウ・シャイロックにひとつのお願いをしていた。それは、ある人物を殺したいというものだった。
登場人物がたくさん出る群像劇なのは良いのだが、たくさん出し過ぎて明らかにそれぞれに物語を十分に処理し切れていないと思う。読み終わってみると、誰の物語も印象に残らなかったという気がしてしまう。本来は主役級であると思われるトウアも、ただの登場人物の一人程度にしか感じない。
そして何より、人外の存在である必要性を感じない。別に彼らを普通の人として物語を組み立てたとしても、同じ様な物を仕上げられただろう。人外である必要性、例えば、人との確執であるとか、人外でなければ成しえないこととか、人外を出すことによってより面白くなるところとか、何か理由があった方が良かったと思う。