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3件
日記をつける
著者 荒川洋治 (著)
日記を開く。日付と曜日、天気を書く。そこからは自分だけの自由の世界。続けられなくなったら、仕事のこと、近所の様子など、身のまわりに目を向けよう。ちょっとした記録の積み重ねから、あなたの人生がみえてくる。内田百けんの食事風景、樋口一葉の夜ふかし、徳冨蘆花の赤裸々な生活も、日記からのぞいてしまおう。
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日記をつける
2009/04/13 12:59
人の日記を覗くと、自分でもつけたくなる
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テレキャットスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
日記のつけ方やテクニックを解説している本、ではない。ただ、日記の面白さ、自由度の高さを教えてくれる一冊だ。
サンプルとして、さまざまな日記が登場する。これが面白い。その多くが著名人によるものだが、内容もスタイルもいろいろ。
例えば、内田百間の日記には天気と就寝時刻しか書かれていない。それと、食事のメモ。「鳴門のわかめ」のことを「泣キタクナル程ウマイ」などと評価していて、ちょっとかわいい。
山田美妙は、性行為の回数を「宝」という記号で日記に残している。「宝一但不(昼宅にて自宝)」といった具合。死後、衆目にさらされるとは思わなかっただろう。
他にも、武田百合子、李舜臣、徳富蘆花、チェ・ゲバラ、岸田劉生などの日記を覗くことができる。なかなか貴重な体験だ。
人の日記を覗くと、自分でもつけたくなる。著者の朴訥とした文体も、自由で気楽な日記ライフを勧めているように感じた。
日記をつける
2003/09/05 10:18
のぞき見趣味
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のなかに、山田美妙の日記が紹介されている。
山田美妙、東京・神田の生まれ、本名・武太郎。あはははは… 本人、この名前気に入ってなかったんじゃないのかな。だって、弁慶みたいな名前だもん。たけたろうだなんて。それで、女みたいなペンネームにしたんじゃねーの。それはともかく、硯友社を興し言文一致を提唱した明治の小説家・詩人・評論家として夙(つと)に有名だ。
高校日本史の教科書なんかに黒い太い文字、いわゆる黒太(くろふと)文字で登場する。なんたって、言文一致の、すなわち、日常用いられる話し言葉によって文章を書くべしという運動のリーダー的存在だったのだから。
ところが、そんなことを提唱しているにもかかわらず、山田美妙の日記には、ちょっと読んだのではわからない微妙な漢字が出てくる。
短い日記の最後に、「宝一」とか「宝二」とかの暗号じみたものが現れる。「宝」とは何か。たからとはなにか。しかも、一、二、とは何を示しているのか?
そういう方面の研究があるのか、はたまた荒川さんの読みなのかは定かならねど、「宝一」「宝二」とは、セックスとその回数を示すものらしい。そうなると、ほかの記号もなにやら妖しく思われ、目玉ひんむいて解読したくなるではないか。
「宝一」「宝二」のほかにも、「宝一、二を試みて不」「宝一但不(昼宅にて自宝)」などあり。後者について荒川さんは、セックスをしようと思ってできなかったが、それは昼自宅で一人済ませたせいであろうと解説している。ほかにも「宝一大美」「宝一大妙」「宝一至妙」など、満足度を示すものもあるという。
相当満足したであろう「宝一大美」「宝一大妙」の表現の最後の一字を取ってつなげると、美妙。な〜んだ、そうだったのか。山田美妙の「美妙」にはそんな暗号、裏の意味も含まれていたのか。納得!
こんなのもあるそうだ。「夜錦子と上野車七銭、すり鉢山にて宝」。野外でか? やらなかった日は「無宝」だって。あはははは… 「宝二、一は逆」二回やったうちの一回はバックってか。「熟睡無宝」もある。あはははは… ただのエロオヤジじゃん。人間だってことだーな。
東京の出版社に電車通勤していた頃、隣の席にいた中年男性が手帳を広げてセックスの記録をためつすがめつしていたのを思い出す。時代は違っても、ポコチンロケットの男にとってセックスはなんと言っても「宝」なのだろう。こればっかりは無法地帯における男女の営みということだ。
いまなら「男男宝」「女女宝」も珍しくない。「男女男宝」は言うに及ばず。
日記をつける
2002/03/07 19:59
この本の詳しい解説
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
●著者の荒川洋治(あらかわ ようじ)さんはこんな人です
現代詩作家。1949年福井生まれ。著書に『荒川洋治全詩集』、評論集『世間入門』『夜のある町で』など多数。TBSラジオ「日本全国8時です」における森本毅郎氏との文学をめぐる語らいは、老若男女幅広い層のファンを獲得しています(毎週火曜日朝8時より生放送)。
荒川氏は、小中学生のころは通常の日記のほかに、読書ノートや国際情勢日記などもつけており、それらの記録にとても忙しい少年時代を過ごしたそうです。今は、日記に就寝時刻と起床時刻を記すことにより、睡眠時間を計算して健康管理をしています。ちなみに荒川氏が日記をつける時刻は、就寝直前、朝の4時ごろとのことです。この『日記をつける』が初の書き下ろしとなりました!
●こんな本です
◆あなたの人生をサポートする日記
小学生の絵日記、グループ日記、交換日記、大きくなってからの読書の記録、育児日記、旅日記などなど、誰もが必ず一度は日記をつけたことがあるはずです。読み返して見ると、当時の自分と周囲の風景がまざまざとよみがえってくる。でも昔のことって案外忘れてしまうものだなあ。。。自分のことはよく憶えていると思っていても、記憶はうすれてしまうもの、頼りになりません。そこで日記の出番です。
◆三日坊主にならないコツ
入学、就職、お正月、結婚、定年、誕生日...そのつど日記をつけようと決意しながら、何度挫折したことか。この続けられなかった後ろめたさは、みんなが心のどこかに持っているもの。日記を書こう、書かなくちゃと思うから続かないのです。続けるコツは、ずばり、書こうと思わないこと。あくまでも日記は今日の自分の記録をちょこっとつけるもの。この発想の切り替えが肝心です。リラックスしてつけましょう。
◆あなたを知るバロメーター
悪口、想像、思い込み、お休み、書きため、何でもあり。ルールのない、誰からも批判されない、自分だけの日記です。そこからあなたの今が見えてきます。あのときのあなたが分かります。
◆詩へ、小説へ、エッセイへの第一歩
「今日は特になし」なんてつけるのはやめましょう。幸田文のエッセイも、日頃の情景に心を留めることから生まれてきました。ビッグイベントのない日には、日常風景を記録しましょう。あたりまえのことほど忘れやすいもの。それに、そこからあなたの「作品」が生まれてくるかもしれません。
●ここがウリ!
この本では、日記をつけるコツのほか、40近い文学作品からいろいろな日記を紹介します。日記は自分だけのもの。だからこそ、ほかの人の日記のことは実は知らない。20歳の乙女の夜、80歳の作家の食卓、文豪の大胆な性愛記録など、あの人がこんなことを日記につけていたなんて!
(岩波書店ホームページより転載)

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