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三国志
漢帝国が滅びると,中国には戦乱がつづいた.魏・蜀・呉の3国対立時代をへて司馬炎が天下を統一するまでの100年,いくたの英雄豪傑がいりみだれ,力のかぎりをつくして戦う.
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三国志 新版 上
2007/07/05 00:27
これを読まずして死ぬは男子の一大不幸
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
三国志演義の翻訳版といったら本書もその適当な訳本のひとつである。なんといっても、分かりやすく書かれている。私はこれを十年ほど前の少年時代に読んだ。これ以降、ドラゴンボールとかそういった類が前ほどは面白くなくなって行った様な気がする。気付けば東西の歴史書を読み漁っていた。その出発点は三国志だった・・多分(アレクサンダーの伝記か実は迷っている)。
吉川栄治の三国志に勝るモノがおそらく古今東西に無いことはさほどの異論も無いであろう。現実に、彼の著作があまりにも群を抜いているので、司馬遼太郎も山岡壮八も遂に三国志を書かなかった。
しかし、彼の著作とてこの演技をもとにしている事はいうまでも無い。この演技では諸葛孔明が不世出の大軍師として描かれている。孫権や周ユの功績は悉く孔明に奪われている。何故ここまで孔明を大英雄として描いたのだろう。本書を読むに、もともと正史に注釈をつけた裴松之の影響が強いように思われる。正史の作者も蜀出身の人物であることから、筑摩書房の訳を見ると分かるが、簡略ではあるが、限界まで蜀に愛情を込めていることが分かる。
演技では関羽は神様として描かれ、趙雲はスーパーヒーローである。魏や呉にも人物はいただろうが、5虎大将軍に比べれば2段格落扱いである。
しかし、人々の心を打って止まないドラマが三国志にはやはりある。例えば、桃園の誓いは無かったとされる。しかし、だとしても、関羽の死に際して劉備が「血祭忠魂」の旗を掲げ、国力の全てをあげて呉に挑んだことは事実である。やはり、劉関張の3人には義兄弟に近い契りがあったのだろう。
そして、無念も晴らせず白帝城の草渦に消えた劉備の哀願を受けて執筆された諸葛亮の出師の表には感動する。「これを読んで泣かざるは男子に非ず」とまで古来我々の祖先も言っているそうだ。
しかし、この時代のローマと中国がインドあたりで衝突していたらどうなっていただろう。将のカリスマ性が強調される中国史の方が一見有利に見えるが、組織力でいうなら中国に勝ち目はあるまい。などと、今読み返すと昔と違う事ばかり考えて読んでいた。名作には飽きは無く、必ず新たな側面が見えてくる。つまり、三国志演技は名作中の名作というべきなんだろう。三国志を読まずして男子の一生を終えるのは、不幸としか言いようが無い。