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3件
解錠師
著者 スティーヴ・ハミルトン , 越前敏弥
けっして動かないよう考え抜かれた金属の部品の数々。でも、力加減さえ間違えなければ、すべてが正しい位置に並んだ瞬間に、ドアは開く。そのとき、ついにその錠が開いたとき、どんな気分か想像できるかい? 8歳の時に言葉を失ったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠も開くことが出来る才能だ。やがて高校生となったマイクは、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり芸術的な腕前を持つ解錠師になるが……MWA、CWAの両賞の他、バリー賞最優秀長篇賞、全米図書館協会アレックス賞をも受賞した話題作。
解錠師
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解錠師
2012/01/24 09:04
天才カギ師の少年の明日は明るくあって欲しい
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:チヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
マイクルは17歳の夏に人生が変わった。
いや、正確には2回目の転機を迎えたというべきか。
1回目は8歳の時、ある事件に巻き込まれ、両親を亡くし伯父に引き取られた。
そしてその時から一言も声を出せなくなった。
そんなマイクルの楽しみは、いろんな錠を開けること。
17歳の夏、友人に連れて行かれた先で窃盗の仲間とされ、
その後は大きな流れにのみ込まれるように犯罪者の道を進む。
マイクルの不運は少年時代からずっと続いているようだ。
皆、彼の才能を知るとそれを利用するためにハイエナのように集まってくる。
逃げるべき時にちゃんと逃げることができないマイクルは、すべてを黙って受け入れる道を選ぶ。
そこに現われた「ゴースト」と名乗る男があらゆる技を彼に教える。
まるでオビワン・ケノビだ。
(残念ながらヨーダほど超越してはいない)
何度も訪れる善と悪に繋がる岐路、マイクル、ここでその場を去れ!・・と師匠ゴーストの警告と同じく、私もつぶやく。
しかし実際彼がどうやってそこから逃げることができるのか。
あとは受け入れるしかないのである。
マイクルが解錠師の道に踏みこむに至った物語と、
その転がり出した玉がぶつかり割れるまでの物語を、
10年後の彼自身が語る。
解錠の仕組みについてはとても深く掘り下げて書いてあり面白かった。
最後に、彼の伯父さんはどうなったのかなと、ふと気になったが。
解錠師
2012/01/31 16:51
ミステリーだと思って敬遠している人がいるとしたらもったいない
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は当たりだ。個人的には今年のベスト10入りは間違いないな。ベスト5と言ってもいいかもしれない。
見かけはミステリーだが、実際には少年の成長物語であり、恋愛物語でもある。
現在刑務所にいる主人公が過去を振り返る体裁を取っている。それ自体はありふれているが、2つの地点から過去を振り返っているのが珍しい。まずはAという近い過去の話から始めて、次にBというAから更に10年くらい前の過去の話がそれに続き、AとBが交互に語られ、段々お互いが近接してくるにしたがって話が盛り上がってくる。なかなか凝った構成だ。
主人公のマイクは8歳の時のある事件をきっかけに言葉を失った。その事件が何だったのかはなかなか明らかにされない。途中で薄々は分かってくるのだが、そのことが物語を牽引する1つの力になっている。そして、金庫破りのサスペンスと恋人アメリアとのやりとりが実に読ませる。絵を介してアメリアと心を通わせるところは詩的ですらある。ラストも素晴らしかったな。
同じポケミスの『二流小説家』が「このミス」で1位になったりして話題になったが、個人的には『解錠師』の方が断然面白いね。これは超オススメですよ。
解錠師
2015/03/26 16:36
LOCK ARTIST最高です
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
解錠師としての道を歩むことになった少年は、芸術的な技術を持ちながらも心と口には決して開けることができない重く難解な鍵が掛けられていた。そんなぼくの鍵は一人の少女をひとめ見た瞬間、一瞬にして溶かされたてしまった。翻訳ものにはあまり手を出さないのですが、少年の幼い頃の闇と鍵開けの腕をあげていくのマイクル、そしてアメリアとのささやかな恋愛はどれも心が揺れ動きました。LOCK ARTIST最高です。