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39件
一九八四年[新訳版]
著者 ジョージ・オーウェル , 高橋和久
〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する超全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは、真理省記録局で歴史の改竄に従事していた。彼は奔放な美女ジュリアとの出会いを契機に、伝説的な裏切り者による反政府地下活動に惹かれるようになる。
一九八四年[新訳版]
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一九八四年 新訳版
2009/07/21 21:42
古典文学の新訳と言えば光文社だが。
39人中、31人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
オーウェルの著作権が切れるのが戦勝国加算があるので、今年だからか、早川書房が新しく翻訳を出したのだろう。
「星の王子さま」の時みたいに、色々な版元が出すかどうか、は分からないが。
旧訳と違って、訳語を造語しないでカタカナ書きにしているのが目立つが(まあ、確かに旧訳の「偉大な兄弟」よりビック・ブラザーの方が通りがいいが)、訳語でも表現を変えているのも目につく。「思想警察」→「思考警察」(最初は馴染めなかったが、党幹部から一般人民までの思考を監視しているから、この方がいいかもしれない。頭脳警察みたいだが。)はいいが、旧訳の"duck speak"をそのままカタカナ書きした「ダックスピーク」を新訳は中途半端な「アヒルスピーク」というのはいただけない。
訳文の文体は甲乙付けがたい、といったところか。
原著の解説がそのまま訳されていたが、付録の説明にはなるほど、と思った。旧訳と違い横組みにした解説「ニュースピークの諸原理」は、過去形で書かれていて、付録が書かれた2050年か、それ以降の時点では(極端に言えば)「革命前」の世界が復活している、と読める、といった記述(507頁)は、それが作者がそれとなく作中に描いた恐怖政治の消滅を暗示したかったのだろうか。この作品が書かれた頃はソ連に占領された東欧圏が-英米の黙認で(代わりにギリシャは同志スターリンとソ連に見捨てられたが)-共産主義国家に変わり、中国で三大戦役が戦われた頃であり、朝鮮が大韓民国と以北に事実上の分裂国家になった時期だが。それには気がつかなかった。
一九八四年 新訳版
2010/03/21 16:22
『1984年』は未来なり、と思ってみる
19人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユートピアにはユートピアなりの高揚感があるのはわかるけれど、
チャキチャキの未来がすでにセピア色になって久しい現代で、
人々に未来に向けた行動を何か起こすには、ディストピアの方が断然、
強烈だ。本書は、実現しなかった過去の顔をしながら、これからまだまだ
起こりうる現在進行形の書として、いまだ強烈な世界観を持ちえている。
わたしたちはもう、1949年にオーウェルが見通した1984年の風景を
逆の時間軸で吟味できる立場にいる。本書では世界は3つの帝国によって
支配され、そのひとつであるオセアニアのスローガンは、
“戦争は平和なり”
“自由は隷従なり”
“無知は力なり”
本書で二重思考と呼ばれる相矛盾する言葉の共存は、言葉の絶対量の
削減を促し、言葉のループの中で言葉自体への信頼感を薄れさせ、
言葉によって生まれる感情を単純化を通して混沌のなかへと追いやり、
やがて人間を壊し、社会は壊れ、その道筋を作った帝国だけが残る。
それにしてもこのスローガンはある意味魅力に溢れている。
現に石油をめぐる戦争の傍らに平和は実現し、隷従を強いられているかに
見えた地域がかつてない繁栄を謳歌し、知性に溢れているとは言いがたい
テレビによって、なんだかんだ言いつつ政治は動いてしまったりしている。
そこに言葉への信頼を問うのは何だか偽善じみていて恥ずかしい。
恐怖による危機感が人々を行動へと駆り立てるとしたら、本書ほどの
力を持ちうる書物は有史以来そんなにないと言ってしまっていいと思う。
だがその衝撃的結末以上に、付録まで読み通してみると、今こうして
新訳の日本語で『1984年』が読めることは、かなり偶然的幸福の連続の
果てにあり、そういうことを示唆してくれることこそ、本書の根源的な
価値なのだ。だからわたしも稚拙ながら本書に書評として参加し、
この世界がいまこうしてあるのはなんとなしにあるのではなく、
何もせずに維持されるものでもないと、自覚してしまいたい。
本書は実践を伴う読みこそ似合う。オーウェルの叫びは、願いとなって
これからもダークサイドから世界を批評し、人間を鍛え続けていくのだ。
一九八四年 新訳版
2017/01/09 22:03
やっぱり今読むべき
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アジア坊 - この投稿者のレビュー一覧を見る
近未来の管理社会を描いたディストピア物の、言わずと知れた古典的名作ですが、「ビッグブラザー」や「ニュースピーク」などに象徴される管理社会、独裁政権社会の怖さよりも、モノのインターネット(IoT)のような情報化社会の行き着く先の世界の怖さを知るために、今こそ読むべきだと思います。