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システムの科学 第3版
著者 ハーバート・A・サイモン (著) , 稲葉元吉 (訳)
本書『システムの科学 第3版』はハーバート・A・サイモン(Herbert Alexander Simon)著“The Sciences of the Artificial, Third Edition”(MIT Press 1996)の日本語版であり、日本語版には付録として、サイモン教授のノーベル経済学賞受賞記念講演「企業組織における合理的意思決定(Rational Decision Making in Business Organizations 1978)」を収録しています。
本書は、人工物の科学、人工システムの科学について述べたものですが、この「人工物」とは建物などの有体物のみならず組織や社会システムなど人間がつくりだしたものすべてを含む広義の概念です。ここでは、経済学、認知心理学、計画学、工学的デザイン論、複雑性、階層的システムなどの分野からさまざまなテーマによる人工物をとりあげています。またこの第3版は、2版発行以降にみられた重要な進歩に考慮を加えた大幅改訂が行われ、「複雑性」に関する新章を書き下ろして増補しています。本書には、サイモン教授が個々の領域であげられた数々の研究成果がふんだんに盛り込まれており、今なお多くの支持を得ている名著です。
システムの科学 第3版
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システムの科学 第3版
2007/11/03 12:56
二つの環境の「接面」としての「人工物」
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この手の本を読み慣れていないので最初はちょっと素朴すぎる議論のような気がしていまいちな印象だったのだが、中盤くらいからぐんぐん面白くなった。思ったよりも複雑なことが語られ、検討されている本である。「人工物」つまり人間が作った物や組織、システムなど(この場合「作った」というのは意識的であるかどうかは問題ではない)を、その「人工物」それ自体の内部環境とその「人工物」が属する環境である外部環境との「接面」として捉え、たとえば鳥と飛行機では内部環境は異なるが、同じように「空を飛ぶ」というふうに考えることで、人工物についての分析を進めることができる、とする。そのような考え方に沿って、経済学、心理学、コンピュータ・サイエンスなどに論を発展して行く手際は、とても啓蒙的で面白い。「目的合理性」や、記憶と学習、デザイン論、複雑性における階層の問題など、地味ではあるけれどもじっくり物を考える基盤となる論考が多くてとても勉強になった。