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皇室の茶坊主
宮内省に二十五年間勤めた仕人(つこうど)が好奇心たっぷりに覗き見た皇室とは? 明治天皇の素顔、大正天皇との追いかけっこ、 意地悪をする女官、「べらんめえ」口調の役人、犬の葬儀に坊さん五人…etc. 歴史学者・河西秀哉による新たな脚注と解説を付して、伝説の絶版本『宮廷』が待望の復刊。
皇室の茶坊主
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皇室の茶坊主 下級役人がみた明治・大正の「宮廷」
2023/10/20 18:38
2度目の怪しげな本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
親本の「宮廷」は持っているが、ほとんど読んでいなかった。たまたま店頭で手に取った時に皇太子嘉仁親王(大正天皇)と伏見宮禎子女王の婚約解消についてのページが目に入ったが、「闘う皇族」では「宮廷」から引用している浅見雅男の「大正天皇婚約解消事件」(旧題「皇太子婚約解消事件」)で書かれている内容と全然違う事が書かれてあった。禎子女王が「石女」だと軍医総監が言上したとか山内豊景には上杉伯爵家出身の婚約者がいたとか。おそらく浅見雅男は「明治天皇紀」をはじめとして「闘う皇族」を書いた時点では知らなかったという佐佐木高行の「かざしの桜」、禎子女王の父宮の貞愛親王の伝記、オットマール・フォン・モールの「ドイツ貴族の明治宮廷記」を使って「皇太子婚約解消事件」を書いていて「宮廷」は使っていないのはデタラメを書き飛ばしているのに気が付いたのだろう。
「宮廷」が刊行された昭和26年なら現存の当事者は何人もいるのに裏など取っていないし、むしろソ連や中国、北朝鮮などの「真相」を書く事はしない「真相」あたりの飛ばしみたいなものではないのか。となると「闘う皇族」に「宮廷」から引用している北白川宮成久王からの敬礼に対して「ジロリと鋭い一瞥を与えただけで、そのまま通り過ぎて行った」山縣有朋についても飛ばしの可能性がある。
創元社が前に出した「椿の局の記」改め「大正女官、宮中語り」には宮内次官を経て貴族院議員や中央協和会理事長、枢密顧問官を歴任した関屋貞三郎の経歴を知っていれば見抜けるはずの「関屋事件」なるものが書かれているが、その時点で経歴が終わってしまう事すら分からないような創元社お抱えの「象徴天皇制の研究者」がまた監修している。この本も「もちろん、小川の文章も後の回想であるゆえに記憶の混同など、間違いは存在する」と断り書きは書くが華頂宮家を相続したのが「久邇宮家から相続して」はさすがに注釈で指摘している程度だ。
おそらく創元社が送る「宮中秘録」の三番手は筆名・草間笙子の「大内山」あたりだろう。高橋紘は遺著「人間 昭和天皇」で「宮廷」や「大内山」のような戦後刊行された暴露本を大事にしている旨を書いているが、書かれている内容が正しいのか、矛盾がないのかを見抜けないと意味がない。現に高橋紘は「人間 昭和天皇」で「卜部日記」を誤読している。