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色弱が世界を変える
著者 伊賀公一 (著)
国内320万人、男性20人に1人が色弱者ーー街の色が変わり始めた! カラーユニバーサルデザイン最前線。近年、交通信号機や電光掲示板などの公共物、鉄道や地下鉄路線図、地図、教科書や教材などの刊行物、駅や病院、各種施設などの案内表示、そして電子機器から家電の操作画面に至るまで、何かが変わったことに気づいている方もいることでしょう。それは今、確実に世の中に浸透し、大きく育まれようとしています。
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2011/06/12 17:01
自分の世界を広げる重要なヒント
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:muneyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
「マトリックス」という映画がありますが、
ちょっとSFやホラー、ミステリー、
もしくは哲学や心理学に少しでも興味がある人は
「自分の見えている世界、認識している世界は本当に真実の世界なのか?」
という妄想に囚われた事があるんじゃないでしょうか。
確かに其処に存在しているモノが在るとしても、
それを受け取る受容者の経験、知識、感情、そして身体の差異によって、
其処に在るモノの姿・形は一通りでは無くなるのです。
僕は「色盲」「色覚異常」という語感に惑わされて、
ソレ等は後天的な、手術や調薬で治る病気の様な、
落ちた視力をレーシックで取り戻す様な「治せる」ものと考えていました。
まずそうした事実誤認を矯正するのに役立つのが本書。
色盲、色覚異常、つまり「色弱」とは
ある色に対応する錐体細胞が、機能しない・もしくは存在しない「特徴」だという事。
この認識が無い人は結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。
で、著者である伊賀さんが自身の人生を踏まえて
「色弱とはなんたるか」、
そして現在色弱の人達を取り巻く社会状況、「カラーユニバーサルデザインについて」
を解説してくれています。
別段、かしこまった解説書でも無ければ、自分の認識と違う世間に対する説教の書でもありません。
"「これはカッコいいデザインで売るんだ。カッコよさを売るんだから色弱のことなんか考えない、ほっときましょう」。こういう製品があってもいいと私は思います。
でもほとんどの商品群はたくさん売れたほうがいいから、全国に300万人いる色弱の人にも買ってほしい。そのためにはCUD(カラーユニバーサルデザイン)化も考える。"
決して「弱者に目を向けろ」という、ベチャベチャした少数者の怨恨の感は全くありません。
例えば「これからカラーコーディネーターの勉強をしよう!」と考えている人にとって、モチベーションを上げる為の本にもなるでしょう。
しかし、其れ以上に、
「企業の社会的責任を考えている会社人」、
「多様な生徒たちの状況に教育的責任を持っている教師」、
「様々な価値観が有る事を勉強するべき学生」
こうした人達が読む事で、自分の無知を知る事、
そして自分の後に続く者達への道を示す事。
「大人になる」という事に、手を貸してくれる本なのではないでしょうか。