- みんなの評価
1件
この世をば
著者 永井路子
直木賞作家・永井路子氏の作品が遂に電子化!
時の権力者、関白・藤原兼家の三男坊の藤原道長は、機転が利きカリスマ的な存在感を放つ長兄の道隆や野心家である次兄の道兼に比し、平凡でおっとり、出世も遅々としていたが、姉である詮子の助力を得ながらも、左大臣の娘・倫子と結婚する。以来、徐々にではあるものの、道長にも運が向いてきて、姉・詮子、妻・倫子などの支援を受けながら出世街道を上りつめていく……。表面的な華やかさに誤解されがちな人間・藤原道長の素顔を見事に浮かび上がらせた名作。
目 次
男 と は
首 よ り も
今 宵 来 る 人
深 泥 が 淵
風 の 精
影 絵
あ し の う ら
離 洛 帖
花と地獄の季節
後 宮 明 暗
腥 風 の 荒 野
「一声ノ山鳥」
この世をば(上)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
2017/08/27 18:25
『御堂関白』藤原道長の時代
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かもちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
九条流の藤原氏の隆盛からその最盛期である藤原道長の死までの時代を、道長を軸に当時の事件や貴族たちの生活・風習などを織り交ぜながら描いた作品。藤原道長の時代と言うと、高校の授業などでは摂関政治の頂点、華やかな貴族文化、等々ポジティブな面がが強調されていたように思うが、実際には政治も経済も治安もボロボロ。疫病は頻繁に発生するわ、地方官は私腹を肥やしまくるわ、その上外国からの侵攻まであり、庶民にとってはまさに世も末の時代。貴族たちは平安京の中で権力争いに明け暮れるだけで政治への関心は何処へやら。道長にしても政治家として特段優れていたわけではなく、ほとんど運で頂点に登っただけの「平凡児」で、統治能力はその他大勢の貴族より多少マシという程度。この時代に生まれなくて本当に良かったなあと、教科書的なステレオタイプの歴史観がひっくり返り、真の歴史が見えてくる名作です。