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集合と位相(増補新装版)
著者 内田伏一
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1986年の初版刊行以来、多くの読者から高い評価を得てきた『数学シリーズ 集合と位相』が、信頼の内容はそのままに、装いを新たに登場。
集合と位相は、概念そのものが現代数学のあらゆる分野に深く浸透し活用されている。本書は、数理系の学生を対象に、集合と位相の基礎的な内容をまとめた入門書である。はじめの3章で集合を、残りの6章で位相を扱う。
「集合」では、最初に集合と写像の概念およびその演算について述べ、続いてカントールの対角線論法やベルンシュタインの定理などを考察し、また選択公理と整列可能定理が互いに同等であることを証明する。「位相」では、ユークリッド空間への位相の導入、距離空間への位相の導入へと次第に抽象化して、一般の位相空間へと導いている。
このたびの増補新装版では、旧版には一部しか掲載されていなかった「解答とヒント」を大幅に増補・充実させて、すべての問題に対する解答を収めた。
集合と位相(増補新装版)
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集合と位相 増補新装版
2020/04/18 06:41
集合位相の初学者向け入門書
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:類太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
増補新装版と旧版の内容の違いは解答の解説の量しかなく, 旧版についても載っていない解答はホームページに掲載されていますが, 解答の確認がしやすくなった, 本文の組版が新しくなりきれいになったという意味で読みやすくなりました. 値段は旧版と変わらないです.
(以下, 旧版のレビュー)
順序対の定義では組の定義がなくて感覚的に済ませています. 通常, 集合論では (a, b)={ {a}, {a, b} } と定義されています. そうすると, 組を論理で定義できて, 順序対の相等の定義は定理になります. すると写像を論理で定義できます.
写像の初等的な定義は, 普通の数学をやる上では問題ないのですが, 数学において精確性を追求するなら(「集合・位相入門」でも同じことが言えますが)「対応」「規則」を明確にしなければなりません. 写像は先にその定義域と値域を定めてから定義するのに, 導入とすぐ下の例では, 高校数学流に対応を先に定義し定義域と値域を未知の集合として求めています. しかも定義域は高校数学の範囲内で意味を持つものとしています.
集合Aから集合Bへの写像 f とはAとBの直積 A×B={ (a, b) | a∈A, b∈B} の部分集合 f⊂A×B で任意の (x, y), (x, η)∈A×B に対して (x, y), (x, η)∈ f ⇒ y=η となるものです. これは関数 f にはそのグラフ{ (x, y)∈A×B | ∃x∈A, y=f(x)} が存在することを逆に利用して定義すると考えると理解できると思います.
(二項)関係も「部分集合R⊂A×Aであり, (a, b)∈RのときaRbと書く」(aRa, aRb⇒bRa, aRbかつbRc⇒aRc, を満たすRが同値関係)が精確な定義です.
しかしこれらのことは専門的な数学に慣れていない初学者への配慮とも考えられます.
空集合は任意の集合の部分集合であることを定義とせず, なぜそうなのか説明していこと, 確率論などで現れる, 集合列の上極限と下極限および極限が説明されていること, は良いと感じました.
集合の初歩的な事項よりも位相空間論を充実させていて, 位相を多用する方々には, 最良の和書だと思います.
特に関数解析と実解析において, 関数空間が或る他の関数空間で稠密であること及び埋め込み写像 (A⊆Bへの連続な包含写像 i:A∋i(a)→a∈B), 距離空間の完備化は, 多くの関数空間に適用されます. 完備化の存在証明は, 現代的に書かれた本の中では最も記号が少なく, 多くの結論を出す証明とは違って無駄がありません. 有向集合と有向点列による点列の収束の証明つきの話は非常に参考になりました. 線型位相空間の理論と合わせると, 超関数の連続性の定義につながります. (「新訂版 数理解析学概論」)
これらの理論の土台として誕生した実数論について, 有理数からの実数の構成と連続性が付録で簡潔にまとめられているのは, 他書にはない特色です.
本書によると昔の高校の教科書では関数の連続性は点列連続性で定義したそうです.
写像空間の章にある「一様収束⇒連続」の「逆」である「ディ二の定理」はおもしろいです. 写像空間は関数解析と多変数複素解析にもつながります.
誤植が少なくて分量も多くはないので, 初学者にも最適だと考えています. 位相空間の前に距離空間を置いているのも, 他の本とは理解の仕方が変わってくると思います. 独特な論法で, 位相論の内容は薄くとも充実していて, 有名な「多様体の基礎」「代数概論」と, 初歩の実解析の復習から始まる高度な実解析による関数空間論の和書第1号「ベゾフ空間論」の3冊の参考文献にも挙げられています.