- みんなの評価 3件
- 出版社: ハーパーコリンズ・ジャパン
電子書籍
悪の猿
見ざる、聞かざる、言わざる――四番目の猿は死をもたらす。
連続殺人鬼<四猿>が突然の自殺。遺されたのは謎の日記。
邪悪で素晴らしいものを生みだす、才能ある作家。――ジェフリー・ディーヴァー
ここ数年読んだ中でも最高の始まり。その期待を裏切らない。――ジェイムズ・パタースン
J.D.バーカーはその独創性で、信じがたい悪役と予想を裏切る展開を作った。――ジャック・ケッチャム
シカゴを震撼させる連続殺人犯“四猿”。「見ざる、聞かざる、言わざる」になぞらえ被害者の身体の部位を家族に送りつけてから殺す手口で、長年捜査を進める刑事ポーターも未だその尻尾を掴めずにいた。だが事態は急変する――四猿と思しき男が車に轢かれ死んだのだ。しかも防犯カメラにより、ただの事故ではなく自殺と判明。所持品には四猿の日記が。日記を読み始めたポーターは、新たな歪んだゲームに呑まれていく……。大御所作家がこぞって絶賛する、スリラー界の新星登場!
悪の猿
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紙の本悪の猿
2018/09/17 03:11
evilの正体に迫る力作
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯にはジェフリー・ディーヴァー、ジェイムズ・パターソン、ジャック・ケッチャムの褒め言葉が。あぁ、そっち系ですか、というのがわかりますが、もう2ページ目から不吉な感じ全開。主役であるらしいサム・ポーター刑事にまとわりつく不穏さは事件よりも嫌な予感を連れてきて、「あぁ、この作者は容赦がないらしい」と覚悟させられた。
そう思って読んだせいか、予想よりは読後感は悪くなかったような・・・いやいや、私の感覚が麻痺しているのかも。
4MK=四猿(しざる)なので、「悪事をしざる」としているのだろうけれど、「悪事をせざる」のほうが文法的にも正しく語感も慣れているので、「悪事をしざる」には最後まで違和感あり。また何回も出てきちゃうんでね。
そのあたりが翻訳の難しさなんでしょうけどね・・・。
地元マスコミが三猿について「日光東照宮に由来」と報道してますが、それ以外は特に日本ネタはなかった。訳者あとがきによれば「三猿の思想は東南アジアを中心に、インド、中東、アフリカなど多くの文化に存在」とあり、もともとの由来は古代エジプト、ということにびっくりしつつ納得。
ちなみに英語では、“hear no evil,see no evil,speak no evil”。
そういえば高校の英語でやったような気がする。日本語では「何を」の部分が省略されているけれども、英語ではそれは通じないからevilが必要なのだと。でも「見ざる聞かざる言わざる」の内容が「悪いこと」だという意識は自分の中では薄かったというか、もっと広範囲の意味だと思っていて、evilだと“邪悪”みたいに意味の強い言葉が連想されるのでたじろいだ、ような記憶が。
あぁ、日本語って曖昧だなぁ。
本書ではしっかりevilの意味で使われています。
ポーター視点で物語は主に語られ、合間に4MKの日記(ポーターがここまで読んだ、という感じで)と被害者の視点が。
600ページ近い長編でありながら章立ては短くて、構成はとてもテレビドラマ的。捜査途中に判明したことを列記するボードまで出てくるので、「まさにリンカーン・ライムものをお手本に書かれたのでは?」という感じで、そりゃ、自分のフォロアーだと思えばジェフリー・ディーヴァーは褒めるよね。途中でいろいろぶっこんでくるあたりもそれっぽいんだけど、そういうのを当たり前に読んでる身としてはツイストがだいたいわかってしまう哀しさ(これが麻痺の元かもしれない)。
しかしうっすら感じたことを「やっぱりそうか!」と示すにはいろいろな下準備が必要で、そこはちゃんとしているなぁ、と。厚さの割には、そして初めての作家なのに意外に早く読み終わった。
とはいえ仕掛けが大きくなればなるほど動機が薄くなりがちというか、いや、この事件に関してはしっかり描かれているんだけれども、じゃあこれまでの7件の事件はなんだったのだ?、という気がしないでもなく。シリアルキラーだから、というだけではちょっと・・・。
ポーターはじめシカゴ市警の方々はキャラ立ちしており、シリーズ化してもらってもよい勢いだが、このあとの話は難しいかな。
紙の本猿の罰
2020/10/26 05:05
後味の悪さはシリーズいちばん
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
<四猿殺人鬼(4MK)>三部作、完結編!
とはいえ一作目『悪の猿』のときにこの三部作構想はあったのか?
二作目『嗤う猿』と『猿の罰』が前後編のようなつくりなので、正確には二部作なのかも?
確かに『悪の猿』には解明されていない謎が残っていたはいたけど・・・次作でごろっと形を変えてしまった。
シカゴの街を震撼させ続けた連続殺人鬼“四猿(4MK)”と、彼を追う刑事サム・ポーター。
が、4MKとポーターは昔から知り合いだったとされる写真や記録が見つかり、市警・FBIは大混乱。
さらに各地で4MKらしき手口の死体が続出。サム・ポーターは事件の主犯なのか否か?!
もう、序盤からばんばん死体が現れる。
『嗤う猿』からの登場人物はそのまま引き継がれているので、前半、数日おいて別の本を読んでからこっちに戻ってくると、
「はっ、この死んだ人、誰?」となってしまい<登場人物一覧>を何度か見直した。 これはめんどくさい、とその後は一気に読むことにした。
登場人物が多いため、臨場感を出すために章立てが細かく、「そこで次の人に切り替わるか!」とイライラしかねないところだが・・・
ポーターの相棒ナッシュのイカした面が見れたり、実直すぎなFBI捜査官のポールの更なる実直さが見られたりと読者として
キャラへの愛着を感じてしまいました。
でも刑事さんたち、SARSウイルスに接触したかもしれないというのに、隔離を受け入れるどころか捜査に歩き回る。
具合が悪くなっているのに「風邪をこじらせただけだ(ウイルスには感染していない)」とマスクもつけない・・・睡眠不足で過重労働、
抵抗力が下がっているのに。まぁ日本も人のことを言えませんが、こういうメンタリティならCOVID-19も広がりますよね・・・と
納得してしまう(Beforeコロナの世界を、ついWithコロナ時代の価値観で見てしまう)。
しかし・・・スリラーとしての意外性を重視するあまり、先に描かれていた部分もひっくり返されそうな気配に、ちょっと訳がわからなくなる。
結局、4MKの両親はなんなんだ? あなたたちが息子を助けていればこんなことにはなってないよね? でも助けるって意識は
なかったよね、あなたたちはサイコパスで、シリアルキラーだから。
ラストのサムの選択は・・・気持ちはわかるけど、それはやっちゃいけなかったよ。 いや、やるなら全部やらなきゃダメだよ。
『悪の猿』は残酷でひどい話だが、奇妙な爽快感があった。
でも、続きの話にそれはない。 意外な結末もあるけれど、それ以上にやりきれないんですけど・・・。
紙の本嗤う猿
2020/08/22 02:37
三部作の二作目
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『悪の猿』から何年か経ちましたかね・・・四猿殺人鬼4MKと刑事サム・ポーターとの闘い、続章。
しかしこれは三部作だそうで・・・この本だけでは謎は解決されない可能性大・・・。
そんなとき、完結編が今年の10月に発売予定!、という情報が入ったので、「じゃあいま読んでおけば三作目にすぐ入れる!」ということで読み始めた。
そしたら700ページもの大作だというのに、がんがん読めてしまう。
しまった、あと二ヶ月待たねばならなくなったじゃないか。
『悪の猿』事件から4カ月――逃亡した4MKを追い続けるシカゴ市警のサム・ポーターだが、ポーター刑事に執着する4MKからの挑発やメッセージが過ぎて、FBIはポーターが4MKの共犯者か協力者なのではと疑っている。そんな中、ローティーンの少女が連続して行方不明になり、一人が不可解な状況で遺体となって発見される。少女は、もう一人の少女の服を着ていたのだ。この事件は関係あるのか、すわ4MKか、と騒ぎだすマスコミ。
捜査の過程で、ポーターはFBIからの圧力で捜査からはずされる。謹慎を命じられたが、黙っていられないポーターは一人で4MKの過去を追う。シカゴ市警のチームはポーター抜きで捜査を進め、ポーターを信頼しているFBI捜査官のプールはポーターと協力して事件を解決したいと考えている。今回の事件に4MKは関係しているのか? しているなら、その目的は?
しまった、『悪の猿』の細かいところを忘れている。
中で少し回想してくれるので思い出してくるが、全部ではないので・・・とはいえ全部思い出したいものでもないのだが。
こういう、残忍かつ用意周到な手口は実行するのにあまりに非現実的というか、そんなことまでやれてしまうの? 人間が?、と「悪魔的・デモーニッシュな」という言葉が頭をよぎる・・・ほんとにやれるのかな?、と疑問に思うほど作業量が多すぎるのだ。そういうところがちょっとリアリティないな、と思ってしまうのだが・・・そこは野暮なのだろう。
そしてサム・ポーターの過去、妻を強盗に殺されたという過去だけではなく、彼の記憶のない過去にカギが隠されている・・・そっちか、そっち系の話になるのか~。
自分すら信じられないところまで追い込まれたポーター、でも以下次巻!
だからこれは中継ぎの巻なのだ、これ一冊で評価できるか!