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われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略
著者 ウィリアム・フォン・ヒッペル , 濱野大道
炎上、フェイクニュース、格差社会…ヒトの残念な習性は太古から備わる生存戦略が理由だった!?
数百万年前から続く人類の「心の進化」をひもとき、現代人の幸せのヒントを提示する話題の書!
人類は、絶望に突き動かされ発展した。
われわれの進化した心理は、幸せとそれを追い求めることと密接に絡み合っている。つまり豊かな暮らしを送るということは主として、進化の命令にしたがうということなのだ。
――本文より
気鋭の心理学者が明かす人間の「進化と幸せ」の知られざる関係――
進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略
○ホモ・サピエンスの生き方に現代で一番近いのは、マフィアや麻薬カルテルである。
○心の機能が生まれてからほどなく、人類がはじめて嘘をついた日が訪れた。
○暴力レベルの高い文化では、礼儀正しさのレベルも高いことが多い。
○われわれが遠くの人より近しい人の成功を妬む理由とは?
○IQの高さは必ずしも仕事の成功につながらない。
○多く人が自分のルックスを「実際より20%増し」で考えている。
○自信過剰は対人関係に大きな利益をもたらす。
○情報収集が偏っていればいるほど、人は説得力を増す。
○偉大なイノベーションを起こす人ほど“非リア充“である。
○ヒトは未来に目を向けて現在を無視する傾向がある。
○なぜわれわれは「いつも」幸せでないのか?
○高齢になってからの孤独は喫煙よりもはるかに危険である。
○「モノよりコト」が理にかなっている理由とは?
○過度の幸せは経済的な危機につながることがある。
○男子はなぜリスクを冒すのか?
○危険な男は女子にもてる?
○出会い系サイトで出会ったほうが離婚しない?
進化心理学とは、進化がどのように人間の遺伝子を作り上げ、それが我々の心をどう形作ってきたのかについての物語である。
◆目次より
はじめに
遠い祖先の考えや行動について知る方法/氏(ルビ:うじ)か育ちか?
[第1部 われわれはどのようにヒトになったのか]
第1章 エデンからの追放
ディクディク・ヒヒ戦略/ライオンに石を投げつける/集団行動の心理学/集団行動がもたらした認知革命/
わたしたちをヒトにした社会的跳躍(ルビ:ソーシャル・リープ)
第2章 出アフリカ
直立歩行/ホモ・エレクトスからホモ・サピエンスへ/
複雑な社会的関係のために必要な大きな脳/心の理論/教育と学習のための心の理論/
心の理論と社会的操作
第3章 作物、都市、王様――農業シフトがうながした心の進化
農民の心理/私有財産/私有財産と男女不平等/
政府だけでなく、階級、搾取、奴隷を生み出した農業/村から都市へ/インターネットによる回帰
第4章 性淘汰と社会的比較
性淘汰/セクシーであることの意味とは?/(社会の)相対性理論
[第2部 過去に隠された進化の手がかり]
第5章 ホモ・ソシアリス――社会的なヒト
社会的知性/自制心の進化/自制心を超えて――大きな脳の社会的利益/自信過剰の社会的利益/
自己欺瞞は自信過剰のためだけにあらず/自己欺瞞の効果
第6章 ホモ・イノバティオ――革新するヒト
社会革新(ルビ:ソーシャルイノベーション)とは何か?/社会革新仮説
第7章 ゾウとヒヒ――道徳的・非道徳的なリーダーシップの進化
ゾウとヒヒ/ゾウ型・ヒヒ型のリーダーシップ/事例研究――ハッザ族とヤノマミ族/
ヒヒ型リーダーの出現と不平等/小規模な社会から大規模な企業へ/
道徳的リーダーシップを生みだす方法
第8章 部族と試練――進化心理学と世界の平和
集団間ではなく集団内で協力するように進化したヒト/集団同士の関係をぶち壊す相対性/
自己欺瞞的な偽善者に進化した人間
[第3部 過去から未来への跳躍(ルビ:リープ)]
第9章 進化はなぜ人間に幸せをもたらしたのか
なぜ人間はいつも幸せではないのか?/幸せと健康
第10章 進化の命令のなかに幸せを見つける
幸せへの進化的ガイド/幸せと生き残り/協力と競争/幸せと学び/幸福、性格、成長/
現代世界の落とし穴/楽しい人生にたどり着くための「10の簡単なステップ」
おわりに
謝辞
原注・参考文献
われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略
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われわれはなぜ噓つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略
2023/02/23 22:13
進化心理学の入門書として最適
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投稿者:Toshi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「他人と比べる必要なんかない!ありのままに!」、「一人でも大丈夫、自分らしく!」みたいな何の助けにもならない綺麗事にウンザリしている人はぜひ読んでほしい。
それに進化心理学の入門書としても最適。
ヒトが生態系の頂点になれたのは、ひとえに「社会性」こそが一番のキーワードである事が様々な心理学や脳科学、人類学の研究から明らかにされていく。
複雑な課題を解決する上で必要な計算能力や計画性、自制心もまた、元々はグループ内の他者からの評判や協力を得られる為に進化した社会的知性の副産物であるという、常識とは違った知見も得られた。
また配偶者競争によって、ヒトは他者と比べて自分がどの立ち位置にいるかを確認し、一喜一憂する心理が進化したそうだ。
そうして極端に社会的に進化したのが人類なので、高い技術的スキルを持つ人間も基本的には社会的なイノベーションの開発に偏るが、社会的スキルに欠け、一方で技術的スキルを持つ人間は技術的イノベーションを生み出す事が多いみたいだ。
そうした個体は男性に多く見られ、社会的スキルを持つ女性でも十分な働き口がある男女平等な国ほど、生物学的な選好の差が先進国での理系分野での性差を生むという知見は示唆に富む。
何かと性差を社会や男性のせいにする社会学者やジェンダー研究者は、もう少し生物学の勉強をするべきだろう。
最後に、現代社会への警鐘が述べられている。
本来なら家族や友人、共同体との関わりを求める欲求は進化的に最も満足度をもたらしてくれる訳だが、現代ではそうした欲求をごまかす下位互換としてのエンタメや次々と移り変わる人付き合いがあふれており、それらが現代人の不幸に繋がっているとのことだ。