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17件
死亡フラグが立ちました
著者 七尾与史
『このミス』編集部が驚愕した話題作です!“死神”と呼ばれる暗殺者のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される――。特ダネを狙うライター・陣内は、ある組長の死が、実は“死神”によるものだと聞く。事故として処理された組長の死を調べるうちに、他殺の可能性に気づく陣内。凶器はなんと……バナナの皮!?【死亡フラグ】とは、漫画などで登場人物の死を予感させる伏線のこと。キャラクターがそれらの言動をとることを「死亡フラグが立つ」という。
死亡フラグが立ちました! 超絶リアルゲーム実況殺人事件
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死亡フラグが立ちました! 1 凶器は…バナナの皮!?殺人事件
2011/03/21 16:14
エンターテイメント性に富んだ珠玉の『B級』ミステリー
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第8回『このミステリーがすごい!』大賞最終選考作品。
同大賞選考過程において、その分量の多さをして「無駄に長い」等、審査員から酷評された部分を大幅修正し、再構築したのが本作である。
ジャンルはミステリー小説。
主人公は4流雑誌で特ダネを追うフリーライター・陣内という男性。
一見すると事故死としか思えない事件の裏に、『死神』と呼ばれる殺し屋の存在があるという「都市伝説」の真偽を明らかにするため、主人公が取材を始めるところから物語は始まる。
作中では、複数の主要人物が登場しており、彼らの視点を順次入れ替えながら、それぞれを軸に全く焦点の異なる物語が進んでいく。
別々の物語として始まった話が終盤に収束し、『死神』の存在有無や噂の正体に迫るという筋書きとなっている。
タイトルにもある『死亡フラグ』とは、元々コンピューター用語のフラグという言葉を語源にしたもので、今日的には『物語における登場人物の死亡する前兆や伏線』のことを指している。
小説作品において、登場人物が『俺はこの戦いが終わったらあいつと結婚するんだ』『もし、俺が生きていれば、その時にはお前に伝えたいことがあるんだ』などと発した後に、その言葉を果たせずに死亡する展開等は、正しく死亡フラグの典型である。
本作は、死亡フラグに限らず、ミステリーにありがちなフラグやネタを積極的に取り入れ、ある意味、ベタベタのB級ミステリーを構築している。
例えば、主人公の上司である女編集長は、普段は化粧気のない女だが実は美人であるとか、主要登場人物の一人である老刑事はどこをどう見ても「太陽にほえろ」のオマージュであるとか、かつての恋人が涙の再会を遂げた直後に非業の死を遂げるであるとか、物語の全てに対して突っ込みどころ満載だ。
それでいて、上記の内容が作品の魅力を貶めるものでは決してない。
最初から最後までミステリー界のB級テイストをふんだんに盛り込んでいる点に、返ってある種の安心感があり、また、その『B級的お約束』を守りながら、どう話を収束させるのかに対して、徐々に期待が高まるのだから面白い。
本作の特長としては、最終的にフラグを全て回収し、綺麗に物語に終止符を打っていることが挙げられる。
落ちまでB級ネタなのは、もはや見事と言うほかない。
私は普段、それほど多くはミステリー小説を嗜まないが、それだけにミステリー初心者にとっても物語の展開は分かりやすく、かつ、「なるほど、このように話が繋がるのか」という納得感さえ得られた。
端的に表現すれば、読み終えて満足した。とても面白かった。
物語の筋書きを詳述すれば、もう少し上手くこの作品の面白さを伝えられるのだが、いかんせんジャンルがミステリーということで、書けば書くだけネタバレになってしまうため、この場では割愛。
敢えて例示すると、10数年前に流行ったチュンソフトのサウンドノベル『弟切草』や『かまいたちの夜』などの作風を好む人にとっては、本作はかなりの確率でのめり込める内容となっている。
シリアスなミステリー作品とは必ずしも言えないが、エンターテイメントとしての魅力は十分で、時間を忘れて読むふけることが可能。
特に複雑な構成をとっている作品でもないため、気軽に手に取り楽しむことの出来る作品に仕上がっている。
なお、作品の難点としては、作品が『B級』を全面に出していることから、ベタな展開、B級設定を好まない人にはお奨めすることが困難、という点を挙げられる。
理由は前述の通りで、作品の売り自体が『B級』テイストのため、その部分に対してアレルギーを持つ人に対しては、作品の面白さを訴求できる点が存在しない。
本格ミステリーを楽しみたい、ベタな展開は嫌い、ということであれば、本作を手に取ることは避けたほうが無難だろう。
評するに、本作は紛れもなくB級ミステリーである。
ただし、ただのB級ではなく、エンターテイメント性に富んだ珠玉のB級ミステリーである。
ミステリーではなく、あくまで『B級ミステリー』であることを知って手にするのであれば、ほぼ間違いなく楽しんで読める作品の一つだ。
未読者には、是非一度読んでみて欲しい。
死亡フラグが立ちました! 1 凶器は…バナナの皮!?殺人事件
2012/05/19 21:55
バナナの皮がキーポイント!?
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Mi-Mi - この投稿者のレビュー一覧を見る
皆さんに読んで欲しいからこそ深く内容は書きません。
この死亡フラグが立ちました!は、今まで読んだことのない小説でした。トリックが斬新で、1ページ読み進める度に、七尾先生の世界観に引きこまれていきました。
簡単なトリックのはずなのに、その簡単なトリックを積み重ねることで、こんなにも難解なトリックになってしますのかと本当に一つ一つのちょっとした出来事がこんなにも大きな意味を持っていたのかと感心させられます。
ミステリー読んだことがない人でもこの本なら楽しく読めると思います。本好きな人にこそ読んで欲しい作品です。
死亡フラグが立ちました! 2 カレーde人類滅亡!?殺人事件
2013/02/25 21:21
続・珠玉の『B級ミステリー』
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作『死亡フラグが立ちました!』の続編。
概要としては、四流雑誌で連載を持つフリーライター陣内が、
巷で囁かれる都市伝説を取材する中、
小さいようで大きな事件に巻き込まれるというもの。
前作においては、
主要人物が複数名存在しており、
作品中の視点が、
それらの登場人物に次々移りながら、
物語が進んでいくという展開だった。
今回も基本的には、
その構成は変わらず、
時間の経過と共に、
場面を次々展開しながら人物の視点が入れ替わる。
立場の異なる人物たちが徐々に同じ舞台へと集まり、
最後カタルシスを迎えるという点も同一だ。
ストーリーもさることながら、
作中で繰り広げられる登場人物同士のやり取りや、
所々に光るB級ネタの数々が、
読者の笑いを誘う内容となっている。
作品としては、
良くも悪くも全般的に読みやすい。
ミステリーを標榜しながらも、
今回はどちらかというとオカルトチックな側面が色濃いため、
何も考えずに読めるのは楽だ。
謎解き要素はほぼ皆無で、
前作以上にエンターテイメント性重視の作品に仕上がっている。
物語の舞台が、
関東の小さな商店街から始まり、
それが徐々に日本全体に波及するという、
荒唐無稽な筋立てはただただ面白い。
途中、カレーを美味しく食べるために、
命懸けで福神漬けを買いに行くシーンなどは思わず噴出した。
タイトルになっているにもかかわらず、
全く物語の本筋に関係ないあたりも笑える。
分かりやすく人が死んだりするあたり、
内容としては決して軽い物ではないはずなのに、
それをそうと感じさせないあたりが著者の上手さか。
難点としては、
『お約束を追及する』という作風ゆえに、
話の展開を予測しやすく、
伏線を追う楽しみが味わえないほどに、
『分かり易すぎる』点が挙げられる。
これは作品の長所と表裏一体ではあるが、
伏線を楽しむミステリー好きにはお奨めできない作品となるだろう。
個人的には、
同著者の作品はどれも読んでいて面白いと感じるので、
今回もタイトルを見かけただけで『即買い』だった。
読了し、
期待通りの満足感を得られている。
まだ著者の作品に触れたことのない人については、
この作品よりも先に前作を手に取ることを勧めたい。
前作に抵抗を感じないのであれば、
間違いなく『買い』だ。