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英文法解説(改訂三版)
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英文法解説 改訂3版
2012/03/29 10:09
ユーモアあふれる英文の数々
36人中、35人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
職業がら、英文法の参考書はいろいろと見てきたが、この江川泰一郎著『英文法解説』ほど詳細で専門的な、かつウィットに富んだ文法解説書はほかに知らない。受験参考書としてはやや難解ではあるが、一定レベルに達し、学習意欲旺盛な者の知的欲求を満たすには十分に手ごたえのある本格的な文法書といえるだろう。私も、英語教師として問題にぶつかったときにはいつもこの本を参照している。
本書におけるとりわけ大きな魅力は、ユーモアあふれる英文の数々である。一例をあげると。
”Call me a taxi,” said the fat man.
“Okay,” said the doorman. “You are a taxi, but you look more like a truck to me.”
(訳)「タクシーを呼んでくれ。」太った男が言った。
「かしこまりました。」ボーイは言った。「あなたはタクシーですね。でも、私にはトラックに似ているように見えますが。」
いわゆる5文型を学ばせる箇所に出てくる文章だが、callという動詞には、call O O(OにOを呼ぶ)という第4文型としての用法とcall O C(OをCと呼ぶ)という第5文型としての用法があることを学び、英文読解における「文型」の重要性に気づかせてくれる、なんと教育的な小話だろう。
また、前置詞+関係代名詞を解説した箇所では、名文家としても知られるイギリスの元首相チャーチルが、ある人の英語について語った警句、“This is the sort of English up with which I will not put.”(これは、私の我慢できない類いの英語である。) を紹介して、次のように述べている。
「これは当然the sort of English I will not put up withとすべきであるが、批評の対象になった英語がup with which I will not put式の不体裁な英語であったのであろう。
18‐19世紀の模範文法の時代には、前置詞を文の終わりに置いてはいけないという鉄則があったらしく、昔の文法家がまじめな顔で”You must not use a preposition to end a sentence with.”と言ったという伝説がある。」
最後の文は、「前置詞を文の終わりに置いてはいけない」という文そのものが、前置詞で終わっている皮肉を表している。プッと噴出してしまいそうな逸話や例文をつかった、なんとも愉快な解説文である。
極めつけは、「完了形」の練習問題に出てくるブラックユーモア。
“No one has ever complained of a parachute not opening.”(いまだかつてパラシュートが開かなかったと文句を言った人はいない。)
初版1953年という超ロングセラーの本書。このように、一般の学習参考書にはない、英語独特のユーモアとウィットがふんだんに盛り込まれていることも、その人気の一因かもしれない。
英文法解説 改訂3版
2009/10/14 17:34
例文の対訳がすばらしい
26人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
この書物、特に例文とその和訳のすばらしさを知ったのは、安西徹夫『英文翻訳術』(ちくま文庫)によってであった。これは、本書の例文を引きながら、翻訳(英文和訳)のテクニックを解説したものであるが、英語と日本語の違いに注意がはらわれた対訳が優れていることに感心した。
私は、大学卒業以来20年近くまったく英語学習からは遠ざかり、40歳近くになって急に英語学習を始めた者であるが、自分の実地経験からも、大学受験英語が実用的に無用だとはまったく思わない。40歳のころ、短期間ながら英国で語学学校に通ったことがあるが、彼の地の英語教育は文法中心であった。また、欧州ではケンブリッジ英検がもっとも勢力をもっており、日本の英検は明らかにこれに倣ったものであろう。
評者は、英語力とは、つまるところ文法力と語彙力だと考えているが、英国の英語教材を見て、その感を強めた。現在の日本では、文法力が不可欠な英検が退潮気味で、TOEIC、TOEFLが盛んなようであるが、あまり好ましい現象だとは思わない。
帰国子女ではない一般の日本人にとっては、スピーキングにおける文法の重要性は論ずるまでもないと思うが、読解においてもやはり基礎となるのは文法力であろう。助動詞がきっちりと訳せていない翻訳などを見ると、翻訳者の基礎学力の不足を感じる。
読解については、たしかに辞書をひかずに“直読直解”できれば結構なことではあるが、外国語を自己学習、自己満足、自己消費の対象ですますならともかくとして、何らかの意味で他者(日本人)とのコミュニケーションの道具として利用しようとするならば、翻訳(英文和訳)の必要性から逃げることはできないのではないか。
最近、「新々英文解釈研究」が復刻されたり、高校の日本史、世界史教科書を教養書として出版するという動きもあるようであるが、学力というか教養の土台はやはり高校レベルの学力であると思う。英文法も受験を離れて読むとけっこう楽しいものである。好きな興味にある部分だけを拾い読みすればよいのだから、気楽で圧迫感もない。
そうした「学習」にとって、本書はすばらしい素材となると思う。学習参考書のよいのは安価である点で、同種の書物を何冊か購入してもたいした金額にはならない。
英文法解説 改訂3版
2009/10/13 05:02
受験というしばりをぬきにして評価すべき本格的文法書
18人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白みそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
受験生にとって、高校時代という限られた時間のなかで文法書を通読するのがいいのかどうかは悩ましい問題である。とくに本書のような本格的な文法書を通読することはあまりお勧めできない。通読するにしても、せいぜい「総合英語Forest」レベルの文法書にしておくのが無難であろう。英文法以外にも勉強すべきことはたくさんあるのだ。
となると、受験生が使用するとすれば、リファレンスとして辞書的に使用することになるが、それならば「ロイヤル英文法」の方が検索性に優れているように思う。内容的にも、初歩的な文法知識を有することを前提とした本書より、「ロイヤル英文法」の方が受験生向きと言える。
だが、受験生向きでないということだけでこの本を評価するべきではないだろう。ブッキッシュで多少古くはあるが良質の例文と、ため息がでるほど見事な和訳。東大名誉教授で翻訳家でもある行方昭夫が「英文快読術」の中で推薦しているだけのことはある。
英語を理解する能力と英文和訳の能力はそれぞれ別の能力である。英語を理解するために本書を読む必要性はそれほど高くはないが、英文和訳という面からは、本書のように質の高い英文と和訳が集められている本は、なかなか見当たらない。1953年の初版発行以来、読者に愛され続けた理由もその点にあると思う。