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6件
ヒミズ
著者 古谷実(著)
人生って、とんでもねえぇぇぇ――!! 超極端な不幸に巻き込まれずに生きる、ズーズーしき「普通の人間」たち。そんな彼らに憧(あこが)れつつも、激しい憎しみを抑えきれない中3男子・住田。彼の悩みは、「自分にしか見えないバケモノ」にとりつかれていることだった……。メガヒットGAG大作『行け!稲中卓球部』から一貫して、「人生とは何か?」というテーマを問うてきた漫画家・古谷実。その魂をつぎ込んで描き出される、圧倒的な「絶望の世界」!!
ヒミズ(4)
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ヒミズ 4 (ヤンマガKC)
2002/07/15 13:56
思想という呪縛
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:千 - この投稿者のレビュー一覧を見る
殺人を犯す少年をテーマにした作品はここ数年で死ぬほど書かれてきた。
その中の何冊かに私は目を通したが、
そこから現実を見据えられたものは一つもなかったと思う。
彼らと自分を結ぶものが見つからない。
まるで夢の中を生きているように思える。
あまりにもわからなくて、もっと自分と切り離そうとしてしまう。
ドストエフスキーは「罪と罰」で
信念の為に殺人を犯した青年を描いた。
そのラストに見えたものを、私は「普通じゃん」とはねのけた。
殺人を犯せば良心の呵責に苦しめられ、罪をつぐなう道しかないのか。
それから4年。ヒミズを読んだ。
設定はどことなく似ているがスタートは全く正反対である。
ヒミズの主人公住田は、罪と罰の主人公の思想の対極に自分を置いている。
自分が特別などとは思っていない、特別などと思っている人間が許せない。
住田は普通に生きようとする。それこそがすばらしいことなのだと信じて。
しかし自分の父親を殺してしまい、彼は自分の思想を壊し再建築しようとする。
彼は、おまけ人生を人の役にたって終えたいと願っている。
人の役にたつ。それはいらない人間を殺すことだ。
2人の殺人者に共通しているのは、
自分が裁きの神であること、
自分の観念にとらわれて身動きがとれなくなってしまっているところ、である。
前者に関しては、殺人者にはそういう素質がある、ということだろうが
後者は完全に若者特有の病気である。
彼らは自分の思想を社会に適合させる時に必ず味わう痛みを体験している。
彼らは疲れ果て、普通の夢を見る。
最後に住田が布団で寝ているシーンを読んだ時、
ドストエフスキーが「罪と罰」で描きたかったのは
罪をつぐない、罰を受けることなどではなくて
思想に忠実に生きる人間が迎える、思想の墓場。
そこに見出せるのは、誰にでも共通した幸せを求める心だ。
私は自分で突き放したが、そこには愚かで愛すべき人間の姿があった。
それに比べて住田は、最後まで呪縛から解放されない。
最後の最後まで。
私はこのラストに関しては、なんとも言い難いが
このラストを書いてしまった古谷実の心意気は称えたいと思う。
気味の悪いキャラクターがより一層、
住田の怒りを駆り立てる。
清く正しく生きることの先に、住田が見つけたものはなんだったのか。
その正体は、読者それぞれまったく違うものだろうと思う。
久々に何度も何度も読み返して、自分できちんと消化したいと思える作品にであった。
ヒミズ 3 (ヤンマガKC)
2002/07/13 23:57
正義のために
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポーリィーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
「悪い奴を殺す」と決め街を徘徊する住田だったが、なかなか思うように悪い奴は現れなかった・・・。だんだんと精神が崩壊して行ってしまう主人公が、身近にいる極悪人にはまったく気づかないところが悲しくて皮肉な第3巻。
ヒミズ 1 (ヤンマガKC)
2001/11/27 22:09
普通に生きる。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ハレ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつもの古谷実のマンガだと思って買ったので、一瞬戸惑ったが、すぐにそんなことは忘れてしまった。何だろう、この主人公は。まず、中学生なのに若さがない。「普通に生きたい」のに、母は出て行くは、変なバケモノは見えるは、はっきり言って全然普通じゃない。
主人公だけでなく、登場人物がみんな、「どこかズレて」いる気がする。それゆえ、不気味な空気のようなものを感じる。