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531件
きのう何食べた?
著者 よしながふみ(著)
鮭とごぼうの炊き込みごはん、いわしの梅煮、たけのことがんもとこんにゃくの煮物、栗ごはん、トマトとツナのぶっかけそうめん、鶏肉のオーブン焼き、ナスとトマトと豚肉のピリ辛中華風煮込み、いちごジャムetc.……
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きのう何食べた?(23)
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きのう何食べた? 1 (モーニングKC)
2008/05/18 14:33
美味い、上手い、ほんとに巧い
33人中、33人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鬼島 空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ボーイズラブ漫画出身の巧者よしながふみが青年誌に進出ということで一体何をするのかと思っていたら料理だった。これがレシピ本としてほんとに使えるのである。うちでは付箋を貼って台所に置いているほど、さすが『愛がなくても喰っていけます』で無類の食道楽ぶりを発揮しているよしながふみである。調味料の正確な分量は書いていないが、レシピを機械的に実行するのではなく自分の舌で判断せよという筆者の教育的配慮なのであろう。その配慮を有り難く受けとめて結構適当に作ってしまっているが、料理スキルの低い私であっても簡単に作れ、美味しく、間違いがない。
そしてストーリーのほうも本当に巧く、間違いがない。主人公は弁護士と美容師のゲイカップル。とはいえボーイズラブ作品の範疇ではないので、男性にもお薦めできる。同じ筆者の『大奥』のように劇的な物語が展開するわけではないが、繊細な日常の機微が描かれる。
さて、本書のカップルのうちの弁護士のほうのエピソードを読んでふと気づいたのは、よしながふみ漫画界の人物は、誰かから突然に、「あの時あなたはこう言ってくれた」ではなく、「あなたはこういうことを絶対に言わなかった」といって感謝されることがある、ということである。例えば、筆者のフランス革命前夜を舞台にした他作品では以下のようなシーンがある。いよいよ首の回らなくなった没落貴族が、長らく仕えた執事に、もう仕えなくていい、給金も支払えないからと告げる。それに対し、その黄色人種の血を引く執事は、「誰もが私を見るとシナ人かとまず言ったのに、あなたは私にそれを一度も聞かなかった」、だから辞めないと言うのだ。このようにして、長らくの彼の忠誠はただその一事、貴族本人も自覚的にしたわけではない行動(の不在)に依っていたことが判明するのである。
本書でも主人公の弁護士は、ある発言の不在ゆえに、依頼者から、本当に長い時間が経ってから突然に感謝される。「あなたは私が落ち込んでいたときにこう言ってくれた。その言葉に救われたのです」などという話ではないのだ。主人公が偶然にもあることを言わなかったのは、自分の主義主張ゆえに口を抑えたとかいうことではなくて、本当にたまたまのこと、しかしある背景があるゆえのたまたまである。依頼者の感謝を聞いて初めて、主人公自身が、当の依頼者自身も知らない自分の背景ゆえに、自分がそもそも「そのあることを言うはずもない人間だったから言わなかった」ことに気づかされる。その気づきには、かすかな痛みがある。
言ったことではなく、言わなかったことがその人物をより反映しており、無自覚なことのほうが「頑張って言ってみたこと」なんかよりもはるかに重要な他者の反応を規定することがあるのかもしれない。その洞察ゆえに、よしながふみは凡庸な作家から抜け出た高みに行くのだろう。
きのう何食べた? 2 (モーニングKC)
2008/12/04 21:12
食べることのポジティブさを伝える、最強の料理コミック
24人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
弁護士のシロさんと、美容師のケンジの、美味しい日常を描く2巻。
相変わらず、やたら美味そうです。しかも、ヘルシーメニュー。しかも、同時に数品作るので、レシピと同時に段取りも完璧。
ある意味、最強の料理本ww
にしても、ホント、食べることは大事で、ポジティブな行為なのだとしみじみ思う。
ゲイカップルという、ハードな(?)関係でありながら二人の空気は常に優しい。それは、シロさんがケンジに食べさせるためにせっせとやりくりしながら美味しいものをつくり、ケンジはそれをこの上もない幸せな顔で食べるからだ。
食べさせること、食べること、そんな本能の基本の快楽と安心感が、この中にはつまっている。
そして、ただ作って食べてるだけのように思わせておきながら、現実という小さな石を投じてくる、よしながふみ。
シロさんの父親が病気になった話など、ひょいと胸をついてくる。
思わず自分を省みて、考えてしまう。
現実は、いつでもハードなのだ。
それにしても、最初に作ったメニューの気合の入り方を理解して、それをアニバーサリーメニューにリクエストするケンジは、いいヤツである。
でもって、皆、パートナーにそういう気遣いしてやってくれよと、思うのである。
きのう何食べた? 1 (モーニングKC)
2010/11/29 11:59
ゲイカップルの関係と料理の絶妙なさじ加減。
20人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者はよしながふみ、「大奥」は言うまでもなく大傑作だが、10月に
第4巻が出たばかりのこの「きのう何食べた?」もまたまたおもしろい。
よしながふみからは当分の間、目が離せそうもない。
この話、まず設定がいい。主人公の筧史郎は「芸能人でもない43歳の
男であの若さとあの美貌ははっきり言って気持ちが悪い」といわれてい
る弁護士だ。彼はゲイで、矢吹賢二という美容師と一緒に暮らしている。
史郎という男は、仕事や人間関係でいろいろあっても頭の中でレシピを
練り、料理作りに専念すればいつの間にかリセットできちゃうというか
なりの料理好き。そんな彼の周りにはスーパーで食材を半分わけする主
婦の友だち佳代子さんがいたり、我が子がゲイとわかりヘンにそれを意
識しちゃって「カミングアウトしたんでしょうね!?」などと言い出す母
親がいる。彼女たちの造形もまたおもしろい。
そして何より楽しいのが史郎が作る料理の数々だ。料理の段取りが事
細かに描写されていてうれしいし、どれもやたらとおいしそう。料理好
きじゃなくても、ついつい作りたくなってしまうこと請け合いだ。ちな
みに、彼らの1カ月の食費は2万5千円とちょっぴりチープ。さて、こ
の話、これからどう展開するのか。ゲイカップルの関係とたまらなくう
まそうな料理、よしながふみの絶妙なさじ加減をじっくりと楽しみたい。
ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より