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龍神沼
著者 石ノ森章太郎(著)
龍神祭りを見物するために小さな山村を訪れた研一は、沼で不思議な少女に出会った。白い着物姿の少女に心を奪われるが、村人は誰もその少女を知らず……。その晩、村に不審火が放たれた! それは龍神の祟りなのか!? 映画的手法を取り入れて描かれ、後世の漫画家に大きな衝撃を与えた傑作!! 1957年発表の表題作の原作『龍神沼』、『きりとばらとほしと』『千の目をもっている』など、初期少女漫画の秀作が満載!
龍神沼
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2016/06/14 22:33
幻の名作「竜神沼」や、「ポーの一族」に繋がった「きりとばらとほしと」などが収録
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星月夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと読みたかった、「竜神沼」と「きりとばらとほしと」。
電子書籍で発見し、時間を感じないほど夢中になって、作品の世界に没頭しました。
一見、古い少女マンガの画風ですが、
森の静寂、沼の水音、祭りの囃子や…
田んぼの草いきれ、霧、波の音、を感じるほどの画力。
石ノ森画伯の絵は、詩的で、繊細で、美しい広がりを感じます。
マンガの画面の風景の中に佇んでいるような、
作品世界に入り込んだような気持ちになるのは、
画力の凄さ、繊細な感性、リリカルさが際立っているからでしょう。
画面から、音や風景を感じながら、詩を詠むように、物語を読んでしまいます。
竜神沼の神秘的な作風や、竜神が百合の花を持つ少女に化けているのは、
「辰子姫伝説」などの、東北に伝わる民話のようでもあり…。
竜神の少女と人間の少年が惹かれ合う様は、
宮崎駿監督のアニメ映画「千と千尋の神隠し」の、
千尋とハクの関係にも影響を与えているのかもしれません。
吸血鬼を題材にした「きりとばらとほしと」は、
きり、ばら、ほし、のそれぞれが時間軸の違う三部構成で、
モーさま(萩尾望都さま)の「ポーの一族」で、
エドガーとアランが色々な時代を旅する構成への影響を感じます。
ヘッセ、スウィンバーン、ダンテの詩を引用する様も、
石ノ森先生の文学への造詣の深さを垣間見ます。
リリカルで繊細な作風ながら、
過去、現代、未来を舞台にした吸血鬼のSF短編集として楽しめました。
収録されている作品は、
「竜神沼」
「夜は千の目をもっている」
「水色の星」
「きりとばらとほしと」
「貝殻の妖精」
「竜神沼の少女」
巻末にはイラストコレクションやエッセイなどもあり、充実した内容です。
どれも素晴らしい名作です。
石ノ森先生のリリカルな作品が読みたい方や、
探している作品があれば、強くオススメします!