- みんなの評価
25件
不思議な少年
著者 山下和美(著)
あらゆる時代とあらゆる場所を「彼」は訪れる。――終戦直後の日本に生きる家族を縛る「血」と「土地」。19世紀末のロンドンを懸命に生きる身寄りのない少女。生きる目的を知らぬまま戦国乱世を駆け抜けた1人の青年。それはいつの時代も変わらない人間らしい生き方。そこに1人の少年がいた。永遠の生を持って「人間」を見つめる不思議な少年が。『天才柳沢教授の生活』の山下和美が人間の光と闇をきらびやかに描く新シリーズ、堂々のスタート!
不思議な少年(9)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
不思議な少年 6 (モーニングKC)
2008/02/28 12:33
金髪碧眼の火の鳥
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:AQUIZ - この投稿者のレビュー一覧を見る
キャラクタは当然のことながら、個々のエピソードも直接的な関連は無いのに、この短編群からは手塚治虫の「火の鳥」の血脈を感じます。
「不思議〜」は、世界の傍観者である謎の少年が、様々な土地・時代に現れて人々の人生を眺めます。友人のように話しかけたり、超常的な力をもって対象となった人物に影響を与えることもありますが、スタンスは傍観者に過ぎません。
少年は、人々の一点に興味を持っていることが多く、単純に善悪を見極めて罰するということはしませんし、絶対的な力で彼らの選択肢を絞ったりもしません。
金髪碧眼の、美しい白人少年の姿で現れ、時によっては不審がられたり、異様な状況下にありながら受け入れられたりもします。
古代、現代、未来を垣根無く認識し、見渡せる傍観者は、人々にとって神でしかないはずですが、この神は救いをもたらすものではありません。
手を差し伸べない傍観者であるからこそ、どこにでも存在できるのかも知れません。
少年は、人々の崇拝物にこそなってはいませんが、あの火の鳥のように人々を眺め続けていくのでしょう。
不思議な少年 3 (モーニングKC)
2004/12/19 20:08
2004年の漫画作品最大の収穫の1つ。壮大なテーマを繊細に描く
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:関 智子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま、ここに繰り広げられている平凡な日常が、人類の歴史の中に存在する多くのできごとの集積によって実現している「必然」だという事実を実験的な表現で描いた第1話、南極で遭難した2人の男の少年だった時からの因縁と愛憎を描いた第3話、中世から続く貴族エッシャー家の創建時と没落時に生きた2人の女性を通じて歴史の無常、人の強さを浮き彫りにする第3話−−。いずれも壮大なテーマを短編で展開してみせた作品だが、密度の濃い、構成のしっかりした話に仕上がっている。
特に第1話の実験的表現・テーマは圧巻で、手塚の「火の鳥」をも彷彿とさせる。時空を超えて存在する「不思議な少年」という設定を最大に活かした話。テーマは壮大だが決して看板倒れにならず細部の演出も絶妙。2話の橋のむこうのあこがれの女性の存在、エッシャーー家の最後の女当主につきまとう元おぼっちゃまなどの細かい設定も話に奥行きを与えている。
丁寧な筆致は、描かれた出来事を1つ1つ繊細にタピストリーの中に織り揚げた手仕事を思わせる。
2004年は「PLUTO」「日露戦争物語」など、大きなテーマを扱った作品に収穫が多かった。この話もまちがいなく2004年の最大の収穫の1つ。
2021/04/30 14:41
風琴のような
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:デ*ナダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
山下和美さん、10年ぶりくらいに読みました。
柳沢教授以来ですね。
一話完結オムニバス形式で、作者の夢、疑問、悲しみ、様々な想いが伝わってきます。
微かな風にも歌い出す風琴のような感性の人と想像します。