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38件
【期間限定 試し読み増量版】ヘルタースケルター
著者 岡崎京子
ミステリアスな魅力でトップスターに上りつめた“りりこ”。だが、りりこには知られてはならない秘密があった。まばゆい世界の陰で、恐るべき事件と人々の思惑が絡みあい始める――。豪華キャストとスタッフで実写映画化。第7回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門優秀賞&第8回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。鬼才・岡崎京子の、世紀を越えた傑作!
ヘルタースケルター
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ヘルタースケルター
2010/05/28 07:25
マッドエイジファイター
12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:四十空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
スタイリッシュで皮肉、極めて美しくいい加減。獲物を玩ぶ残酷な猫、いい女度満載の漫画である。嘘と偽善、保身と嫉妬で作られた現代の日本を余すところ無く描く。これは作者岡崎氏の本能の嗅覚の鋭さゆえと思われる。普通のクリエイターなどが太刀打ち出来ない、生まれ持つ斬新で心優しい哀しさとユーモアと、自らも放逐する潔さに溢れた感覚である。
すばらしい骨格をもつが、周りの肉と部品に問題のある「りりこ」が、肉を溶かして作りなおした整形美女として生まれ変る。爽快である。小憎らしくて、生意気で、魅力的で、りりこは全身を整形しながらも生きている。メンテナンスも地獄の沙汰で、そこらへんの守るだけで生きながら死んでいる人間たちとは違う。開き直りか、覚悟か、戦士じみている。
世の中は彼女にとって演技する場所に過ぎない。本音は無用のクズ。それゆえに芸能人として大成功する。献身的でうぶなマネージャーをゴミのように扱う。残酷ではあるが、下品で物欲しげな現在日本にのさばる実にケチな卑屈ゆえのいじめとは違う。堂々とした悪い女であり、その悪さを整形というツールでしか持ち得なかったという哀れさがまた、現在なのである。
作者岡崎京子氏はひどい交通事故に会われたという。残酷なことだ。才能のある、粋な人物の不幸な休息を私も多く見ているが、岡崎氏のそれも、実にもったいないことである。いつか復活していただきたいと思う。
それから、この作品から見える作者の美貌は衰えることなく、人間としての温かさは失せることがないだろう。作品に感謝したい。
ヘルタースケルター
2012/01/12 11:11
「へルタースケルタ—」、岡崎京子は「変わらないもの」をずっと描き続けた、
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
96年5月の交通事故以来、新刊の発表がなかった岡崎京子だったが、
2003年には彼女の作品が次々と単行本化されファンは大いに喜んだ。
事故直前に描かれた長編「ヘルタースケルター」、ボリス・ヴィアンの
原作を漫画化した長編「うたかたの日々」、そして単行本未収録の中短
編24本を集めた「恋とはどういうものかしら?」。どれも事故前の作品
なのだが、岡崎京子のマンガは時が過ぎてもまったく錆びつくことなど
なかった。特に「ヘルタースケルター」は驚き以外の何者でもない作品、
本当にぶっとんだ。94年の大傑作「リバーズ・エッジ」、そしてこれが
96年、彼女はまさに絶頂期に事故にあってしまったのだ…う~む。
「ヘルタースケルター」は、完璧ともいえるスタイルと美しさを誇る
スーパーモデルりりこが主人公。しかし、彼女の身体は骨と目ん玉と髪
以外はぜんぶ作り物。アイドルとして一世を風靡するりりこだが、その
夢を打ち砕くように、破滅の時が訪れて…。岡崎京子という人は「空気」
と「気分」を描き出す力が抜群である。芸能界の空気、女の子が生きて
いる場所の空気、その気分、そして時代の空気。96年の作品だが発売時
はもちろん、今読んでも全く色あせていない。「空気」を描きながらも
彼女は「変わらないもの」をずっとずっと描いてきているのかもしれな
い。普遍性こそ、人の心を打つ。タイトルはもちろんビートルズの曲か
ら採ったもの。ラストに歌詩が流れるはずだったが、マイケル・ジャク
ソン所有の著作権がクリアされずに断念したと聞いた。第8回手塚治虫
文化賞マンガ大賞受賞作。沢尻エリカ主演、蜷川実花監督で12年7月に
映画公開が決まった。
ヘルタースケルター
2008/05/16 19:11
怖いマンガ
10人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nanako17girls - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐ろしい。それが第一印象。りりこは美を手に入れるために違法な美容整形を行う。「人間は外見ではない」という人もいるだろう。僕も同意見だ。いくらファッションやメイクをしても、それだけでしかない。しかし、本書を読んで、どうしてこんなに恐ろしく感じるのだろう?いや、考えるのはやめよう。やはり、美しいもの対する憧れが僕の中にも確実に存在する。「美と醜悪」その表裏一体を見事に描いている。
りりこの妹は悲しい存在。ブスであるが、やはり彼女も姉のようになりたいと純粋に思っている。そして、周りからはバカにされる。世間の冷たさ、それは醜悪になるりりこにも向けられる。そしてそれは単に消費され、すぐに忘れられる。所詮そんなもの、とわかっていてもこの胸の痛みは・・・・・
作られた美はやはりそれだけでしかない。印象的な言葉「タイガー・リリィ」「ヘンだよ世にもまれなる奇妙な顔さ」
イメージのモンタージュはやはりどこかしら歪む。人々の欲望に懸命に応えているように僕には映る、りりこが。